見出し画像

2025年市場見通し:成長期待もボラティリティに警戒。市場を牽引するセクターの変遷(モルガン・スタンレー)


 11月26日に収録され、28日に公開されたモルガン・スタンレーのポッドキャスト・コンテンツを紹介します。このコンテンツでは、モルガン・スタンレーのストラテジストであるマイク・ウィルソン氏とアンドリュー・パウカー氏が2025年末のS&P500目標値を6,500と予測する同社の米国株式市場の展望をテーマとして、以下のサブテーマについての議論内容が紹介されています。
 
[主なサブテーマとトピックス]

2025年の見通し
 
S&P500の2025年末の目標値6,500。リスクは、マクロ経済の不確実性、金利の変動やインフレ再燃のリスク、政策の変動による市場の反応。

政策動向の影響とボラティリティ、市場期待
 
規制緩和によって市場に好影響。リスクは、政策試行期間中のボラティリティ、政策の順序と市場への影響。

セクター戦略の変更
 
市場牽引セクターの変化。景気循環銘柄へのシフト。ディフェンシブ維持。小型株に慎重。

MSの見通しに対する投資家の反応とギャップ 
 投資家に株価の割高感があり。消費関連セクターの回復可能性について。






1. インタビュー


[アンドリュー・パウカー](US株式戦略チーム)
 
マイク、我々は2025年末のS&P500の目標値を6,500と予測しています。現在の水準から約9%の上昇を見込んでいます。この目標値について、収益とバリュエーションの観点から、その根拠を詳しく教えてください。
 

[マイク・ウィルソン](CIO兼US株式ストラテジスト)
 これは、今年の夏に行った予測を引き継いだものです。つまり、経済学者たちが予測している「ソフトランディング」の見通しや、10年物国債利回りに関する金利ストラテジストの見解を織り込んだものです。この利回りはバリュエーションに影響しますが、収益予測自体は一切変更していません。ここではかなり精度を保てていると思います。一方で、予測が当たらなかったのはマルチプルです。そして、多くのクライアントや投資家も、このマルチプルの見積もりをやや保守的に考えすぎていたのではないかと思います。
 過去のデータを振り返ると、収益成長率が平均を上回る、つまり約8%以上になる局面と、さらにFRBが実際に利下げをしている時期が重なる場合に、マルチプルが下がるのは非常に考えにくいことが分かります。実際には、マルチプルの仮定を年ごとに約5%ずつ減少させていますが、それでも歴史的な水準と比べて非常に高い状態が続いています。経済や金利のシナリオがベースケース通りに推移する場合、収益率が下がる可能性は低いと考えています。そのため、10~12%の収益成長予測を基に、マルチプルのわずかな割引を加味しても、最終的に9%の上昇が期待できるのです。
 ただし、リスナーの皆さんに理解していただきたいのは、マクロ経済の結果は依然として非常に不確実であるということです。今年と同様、結果が明確になるにつれ、1年を通じて見通しが変動する可能性があります。たとえば、成長が予想より良くなる場合もあれば悪くなる場合もありますし、金利が想定以上に高止まりする可能性もあります。FRBが利下げしないかもしれませんし、インフレが再燃した場合には再び利上げする必要があるかもしれません。どんな状況でも直線的な動きにはならないでしょう。そのため、我々はスタイルやセクター選定を通じて、この不確実性に対応していきます。
 2025年に向けて、市場に大きな影響を与える可能性がある選挙後の新しい政策動向についても考慮する必要があります。
  

[アンドリュー・パウカー]
 来年の株式市場に最も大きな影響を与える可能性がある政策の変化について、どうお考えですか?
 

[マイク・ウィルソン]
 そうですね、多くのことがこの秋の市場で織り込まれ始めたと思います。選挙予測では、6月ごろから共和党が勝利する可能性が高いと見られ、9月から10月にかけてその見方が一段と強まりました。株式市場が最も期待しているのは、規制緩和の動きだと思います。これは、次期大統領のトランプ氏が公約として掲げているもので、共和党もこれに賛成しているようです。いわゆるビジネスに優しい政策で、彼の第一期となる任期中の方針を繰り返すようなものといえます。
 一方で、市場が懸念しているのは関税です。ただ、この点については依然として多くの不確実性があります。昨日も、トランプ次期大統領から新たなツイートがあり、これまで提案していた関税にさらに10%上乗せする可能性について言及がありました。このニュースを受けて、一部の銘柄は売られましたが、同時に、スコット・ベッセント氏が財務長官に指名されたニュースを受けて多くの銘柄が買われました。彼は関税に対してそこまで強硬ではないとの見方がされているからです。
 今後2か月間は、いわば、試行期間として捉えるべきだと思います。この期間中に多くの政策案が浮上し、次期大統領が指名する閣僚の顔ぶれや市場の反応を確認しながら調整が進むでしょう。そのため、政策案が試験的に発表されるたびに市場のボラティリティが高まることを予想しています。
 さらに、移民政策の執行も大きな課題です。これが成長、労働供給、そして人件費に与える影響は、来年前半にはマイナスになる可能性があります。重要なのは政策の順序です。関税政策と移民政策の実施が、来年前半の最も大きなリスクとして挙げられるでしょう。
 

[アンドリュー・パウカー]
 我々のOutlookには、「変化する市場のリーダーシップに柔軟に対応しよう」というタイトルをつけようと考えています。このタイトルは、市場の表面下でリーダーシップが変化する中で、その変化を捉え続けることに注力する我々の考え方を反映しています。今年の夏にはディフェンシブな姿勢を取っていましたが、秋にはより景気敏感的なスタンスにシフトしました。ここで、スタイルやテーマ、セクターごとの最新のポジショニングについてお話しいただけますか?
 

[マイク・ウィルソン]
 そうですね、その転換は選挙そのものというよりも、経済がハードランディングのリスクからソフトランディングへの移行を再び示したことが主な理由です。今年の夏、多くの人がハードランディングを懸念していましたが、経済が安定を取り戻す兆候が出てきたことがその大きな要因です。そしてもちろん、労働市場がまだ堅調である中で、FRBが50ベーシスポイントの利下げを予想外に開始したことも転換の理由です。これらのことがサイクル転換を促した主な要因です。その後、選挙の結果がその動きをさらに加速させた形となり、現在もこの方針を継続している状況にあります。
 具体的には、「質の高い景気循環銘柄への転換」を進めています。これは、金融セクターを最優先とし、次いで産業セクターを重視しているということです。この「質」という要素が非常に重要です。なぜなら、金利は依然として高水準にあり、多くの企業のバランスシートは依然としてやや厳しい状況にあり、株価水準も依然として高いからです。そのため、質の低いビジネスやその銘柄は、現時点では我々が取れるリスクよりも高いリスクを伴う可能性があります。
 年末から2025年に向けては、これまで推奨してきた方針を継続します。ただし、ディフェンシブなポジションをすべて放棄したわけではありません。それは、先行きがどうなるか完全には分からないためです。たとえば、公益事業セクターはオーバーウェイトを維持しています。このセクターにはディフェンシブな特性だけでなく、電力不足へのレバレッジというオフェンシブな側面もあるためです。規制緩和が進むことで、天然ガスの利用拡大といった新しい展開が進む可能性があり、これによってパイプラインやLNG施設、さらには新たな発電方法が推進される可能性があります。
 
 ではアンドリュー、金融セクターに関する我々の見解について、もう少し詳しく話してください。 これは単に選挙やセクターのローテーションの話だけではなく、実際にファンダメンタルズに基づく要因があるからです。
 

[アンドリュー・パウカー]
 金融セクターは、10月初めに格上げして以来、引き続き我々のトップ・ピックとなっています。この見解を支える主な要因は、資本市場の回復基調、堅調な収益予想の上方修正、そして来年にかけて自社株買いが加速する可能性です。選挙後の規制緩和への期待も、こうしたファンダメンタルズに基づく要因に加えて、セクターのパフォーマンスを押し上げる材料と考えられます。
 さらに、この1か月半ほどで金融セクターが相対的に好調な動きを見せているにもかかわらず、バリュエーションは依然として割高感がありません。歴史的水準の中央値である50パーセンタイル付近に位置しているため、魅力的な水準にあると考えています。
 
 マイク、最後に我々の見通しに対する投資家の反応について少し触れてみたいと思います。投資家からは、どの部分について最も多く質問を受けていますか?また、投資家が同意している点と意見が分かれている点はどこでしょうか?
 

[マイク・ウィルソン]
 我々が景気循環をベースとしてより建設的な方向転換をおこなったことから、議論は継続しています。投資家からの主な反論点は当時も現在も同じで、それは「株価が割高である」という点です。率直に言って、我々が景気循環的なセクターに軸足を移した理由は、それほど割高ではないためですが、それでも株式全体としては株価が割高であるという事実には変わりがありません。投資家は、なぜマルチプルが高止まりする可能性があるか、次今回行った我々の分析について理解を高めたがっています。もちろん、状況は変化する可能性があるという点も認識しているようです。
 また、小型株に関しても議論があります。我々は現在、小型株をニュートラルに位置づけています。数年間アンダーウェイトだった後の格上げですが、この点が注目されています。過去数年、小型株への投資がことごとく失敗してきたため、慎重な見方が続いていますが、今回はこれまでより支持が増えているように感じます。そのため、我々もニュートラルに格上げしました。頻繁に聞かれる質問は、なぜ今オーバーウェイトにしないのか?というものです。我々が慎重である理由は、金利がもう少し下がるのを待っているからです。新たな経済成長の加速が始まる兆候が見えた時点でポジションを強化するのが理にかないますが、市場はまだ後期サイクルの環境にあり、現時点では経済学者の予測もそこまでは達していません。
 もう一つ注目される議論は、政府の効率性に関するものです。個人的にはこの点が最も期待を抱いている部分です。なぜなら、この要因はほとんど市場に織り込まれていないと感じているからです。政府の規模を縮小することへの成功可能性に対しては、非常に懐疑的な見方が多いです。ただ、我々が期待しているのは、政府支出の凍結です。これが財政の持続可能性に関わる本質的な課題です。支出が凍結されれば、金利を一定水準に抑えられる可能性があります。
 さらに言えば、ここ数年、政府が民間経済を実質的に圧迫しているという見方をしてきました。これにより、中小企業や多くの消費者が苦しめられてきました。政府の規模を縮小、あるいは少なくとも現状維持に抑え、そのエネルギーを民間経済に再配分することで、生産性が大きく向上し、株価上昇が広がる可能性があります。現在の株式市場が非常に狭い範囲に集中している理由の一つは、この圧迫された環境下では事業の規模が非常に重要になるためです。この状況が変われば、個別株や市場全体での広がりが生まれ、より健全なブルマーケットになる可能性が出てくるでしょう。

 アンドリュー、投資家たちからはどのような声を聞いていますか?

[アンドリュー・パウカー]
 そうですね、投資家との議論では、今挙げてもらった要因に加え、消費関連セクターに関するものが中心となっています。特に、消費者裁量セクターにはすでに多くの悲観的な見方が織り込まれています。その背景には、支出のシェアが商品からサービスへ移行していること、高価格水準、粘り強い金利、そして関税リスクなどがあります。
 我々の今週のレポートでは、このセクターに対してポジティブとなる可能性についてのいくつかの要因について説明しました。その一つが、支出シェアが商品に戻る動きです。これは、価格水準の低下や金利の低下が進めば起こり得ると考えています。金利ストラテジストの予測によれば、10年債の利回りは2025年末までに3.55%に低下する見通しです。これが、住宅のような金利に敏感な消費者裁量セクターの一部に良い環境を作り出す可能性があります。こうした要因を注視しながら、このセクターに対してより建設的な見方ができるタイミングを見極めていきます。
 

[マイク・ウィルソン]
 アンドリュー、本日はありがとうございました。
 

[アンドリュー・パウカー]
 ありがとうございます。またいつでもお声がけください。




2. オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Morgan Stanleyより
(Original Published date : 2024/11/28 EST)

[出演]
  モルガン・スタンレー
    マイク・ウィルソン(Mike Willson)
    CIO兼米国株式ストラテジスト

    アンドリュー・パウカー(Andrew Pauker)
    米国株式戦略チーム


関連コンテンツ



<御礼>

 最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
役に立ちましたら、スキ、フォロー頂けると大変喜び、モチベーションにもつながりますので、是非よろしくお願いいたします。 


だうじょん


<免責事項>


 本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集