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サンタラリーは期待できるが、クリスマスの楽しみを台無しに可能性に注意(ゴールドマンサックス)


 2024年11月15日公開のゴールドマン・サックスのポッドキャストの内容を紹介します。 テーマは、年末にかけて「サンタラリー」が実現する可能性についてです。

 ゴールドマン・サックスのジョン・フラッド氏(営業部門長か?)は、Q3の企業業績が予想を超えて推移したこと、また企業の自社株買いによる市場の下支え、そして小口投資家の強い買いが追い風となって、サンタラリーの実現可能性は高いと予想しています。クリスマスの楽しみをぶち壊しにする大きなリスクは見られないとしながらも、年末にかけての急速な金利上昇や12月6日の非農業部門雇用者数には警戒を示しています。

以下は、インタビューのサブテーマです。
・年末に向けての米国株式市場の動向と見通し
・投資家の現在注目しているセクターとトレンド
・注意すべき市場リスク
・注目すべき経済指標:非農業部門雇用者数

 


1. インタビュー


[クリス・ハッシー](ゴールドマン・サックス・リサーチ)
 米国株式市場は過去最高値圏を推移しています。この相場は年末に向けてさらに加速するのでしょうか。今回はゴールドマン・サックスのグローバル・バンキング&マーケッツ部門で米国エクイティ・セールス・トレーディング部門の責任者を務めるジョン・フラッドさんをお迎えしています。
ジョンさん、本日はありがとうございます。
 

[ジョン・フラッド](ゴールドマン・サックス・グローバル・バンキング&マーケッツ)
 クリスさん、こちらこそお招きいただきありがとうございます。
 

[クリス・ハッシー]
 では早速、今何が起きているのかを見てみましょう。11月のS&P500の上昇要因は何でしょうか?単なる選挙後の楽観ムードなのでしょうか、それとも他に理由があるのでしょうか?
 

[ジョン・フラッド]
 現在のところ、主な理由は選挙後の楽観ムードだと言えます。規制緩和、M&A、IPO、そして経済のリオープニングといったテーマが選挙結果でレッド・スウィープ(トリプル・レッド)が起きて以来、顧客との会話の中に必ず出てきます。しかし、このラリーが持続可能だと考えられる理由はそれだけではありません。
 最も重要なのは企業の業績です。S&P500企業のQ3の1株当たり利益(EPS)を見ると、前年比で8%の成長を記録しており、予想されていた3%を大きく上回りました。こうした低めに設定されたハードルは引き続きクリアされていくと考えており、業績面では非常にポジティブな状況です。
 また、企業の自社株買いについては以前からよく議論されていますが、現在はまさにその真っ只中にあります。我々の計算では、米国株式市場では毎日約60億ドル相当の株式が買い戻されており、今年の買戻し総額は1兆ドルを超えるペースにあります。これは市場史上で1位または2位の規模となる見込みです。季節性の観点からも、この自社株買いの勢いは年末に向けてさらに加速するでしょう。
 そして何よりも重要なのは、小口投資家が市場に完全に戻ってきたことです。今年は多くの次期で小口投資家は様子見をしているように感じられましたが、選挙結果を受けてからは「買いモード」に入っています。これは、100株未満の取引が増えていることからも分かります。こうした小口取引の増加は小口投資家の存在感を示す指標の一つです。小口投資家に人気の銘柄が軒並み上昇していることも見られます。そして、小口投資家が市場に参入すると、通常それは1週間や2週間、あるいは3週間だけの短期的なものではなく、数カ月にわたって続く傾向があります。つまり、現在の市場には多くの追い風が吹いている状況です。
 

[クリス・ハッシー]
 リテールというのはもちろん個人投資家を指しますが、企業も自社株買いの形で市場に参入しているという点も興味深いですね。つまり、サンタラリーが期待できそうですが、このラリーは年末まで続くのでしょうか?それとも、途中でグリンチ(※1)が登場する可能性はあるのでしょうか?
 

(※1)グリンチ
米国の有名なクリスマスストーリー『How the Grinch Stole Christmas!』(グリンチ)に登場するクリスマスを嫌って人々の楽しみを台無しにするキャラクター。


[ジョン・フラッド]
 我々は、この年末ラリー、いわゆるサンタラリーが実現すると考えています。S&P500の年末目標として、6,300ポイントは現実的な水準だと思います。特に重要なのは、市場全体の幅広い上昇が見られるようになることです。マグニフィセント7と呼ばれる主要銘柄については、若干の調整があったものの、依然として市場の主役であることに変わりはありません。
 また今回の選挙結果を受けて、世界の主要な機関投資家が、これまであまり注目されていなかった市場のセクターにも長期的に関与していく状況が見られるでしょう。その結果として、例えばRussell 2000がSPY(S&P500 ETF)をアウトパフォームする取引やSPYがNASDAQをアウトパフォームする取引、また時価総額加重型のS&P500ではなく、均等加重型S&P500(RSP)のパフォーマンスが上回るといった動きが出てくると考えています。
 市場の広がりが増し、市場全体の基盤が強化されてより健全なものになると見ています。
 

[クリス・ハッシー]
 SPYは、このポスト選挙ラリーに入る時点で、すでに約22倍のPERで取引されていましたが、バリュエーションが懸念されるのはいつ頃になりますか?この年末のサンタラリーが、2025年に向けて厳しい状況を作り出してしまう可能性はありますか?
 

[ジョン・フラッド]
 今年を通じ、懸念材料として挙げられてきたのがバリュエーションですが、バリュエーションだけで市場が崩れることはないと確信しています。市場に大きな調整が必要となるのは、企業の収益成長率や経済指標に大きな後退が見られる場合ですが、これらは引き続き予想を上回る良好な結果を出しています。
 つまり、バリュエーションは企業業績や経済データがそれを支えている限り問題ないということです。そして現状では、いずれの点でもしっかりと支えられているといえます。
 

[クリス・ハッシー]
 では、もう少し掘り下げてみましょう。現在、クライアントが特に注目している市場の分野はどのようなところですか?
 

[ジョン・フラッド]
 多くの投資家が特に注目しているのは金融セクターです。ヘッジファンドやミューチュアルファンドの間ではこれまで十分に保有されていなかった分野ですが、最近では大きな買いが入っています。当社のプライムデータによると、ファンダメンタルに基づくロング・ショート戦略を取るヘッジファンドが大規模な買いを行っており、この動きは数カ月続く可能性があると考えています。
 規制緩和関連の取引では、M&Aに関わる中小型銀行に対して引き続き活発な買いが見られています。率直に言うと、なりふり構わない買いが発生している状況です。また、いわゆるオールドスクールなエネルギー分野、特に石油関連や中小企業との結びつきが強い企業も毎日のようにテーマにあがっています。さらに、興味深いのは、米国外に目を向けると、ヨーロッパでウクライナの復興に関連したインフラ企業への注目が高まっている点です。
 現在は、市場全体を通じて非常に多様で魅力的なテーマが広がっているという状況にあります。
 

[クリス・ハッシー]
 国内銘柄に注目すると、非常に面白いテーマが見えてきますね。ただ、すべてが順調に見えるときこそ、リスクについて考えるべきではないでしょうか。市場の集中リスクや高金利といった点が懸念されますが、他に何か気になる点はありますか?
 

[ジョン・フラッド]
 金利、金利、金利です。そしてその変動のスピードが重要なポイントです。私が話をしている多くのマクロ系の投資家によると、10年債利回りが年末までに4.6%に到達するとなると、株式市場の投資家が不安を感じるレベルになると言われています。ここで鍵となるのは、金利の動きの速さです。もし4.6%が1月に到達するのであれば、それほど大きな問題ではありません。しかし、短期間で急激に金利が上昇するような動きがある場合、株式市場に大きな圧力がかかります。
 さらに、このレッド・ウェーブ(共和党の選挙勝利)を受けて、現在は関税に対する注目が高まっています。関税はインフレ圧力を高める要因となります。また、財政赤字にも焦点が当てられています。これらを組み合わせて考えると、複数回の利下げがあったとしても、金利の上昇が続くリスクがあるように感じられます。
 

[クリス・ハッシー]
 つまり、金利やインフレの影響を考える中で、インフレや関税についても言及されましたね。これがPCE(個人消費支出)インフレ率の話に戻る可能性はありますか?PCEインフレデータは、今後注視すべき最重要データ・ポイントだと言えます。
 

[ジョン・フラッド]
 非常に重要なデータ・ポイントです。個人的には、12月6日に発表される非農業部門雇用者数(NFP)が最も注目すべきデータだと考えています。なぜかというと、先月のNFPはストライキやハリケーンの影響で非常に弱い数字が出たため、皆が「これは一時的なものなのか、それとも今後も弱さが続くのか」と疑問を持っている状況です。
 もし弱さが続く兆候があれば、FRBが利下げに動ける可能性が高まります。このため、次のNFPの結果が市場予想に近いか、少し弱い程度であることが重要です。そうすれば、12月の利下げに対する期待を維持することができ、市場が求めている方向性を確認できるからです。
 

[クリス・ハッシー]
 最後にもう一つだけ質問です。ニックスがシクサーズに勝ちましたね(※2)。このまま勢いに乗っていけると思いますか?今年はニックスが最後まで行けるでしょうか?
 

(※2)
NBAバスケットボールのチーム。ニックス(Knicks)はニューヨーク・ニックス、シクサーズ(Sixers)はフィラデルフィア・76ersのことを指す。


[ジョン・フラッド]
 私は今シーズンのニックスに非常に強気です。「ノヴァ・スクワッド」がそのまま残っていて、多くのノバ出身の選手が活躍しています。ゴールドマンの予測としても、ニックスが今シーズン大きく飛躍すると思っています。
 

[クリス・ハッシー]
 ジョンさん。ご参加いただき、ありがとうございました。
 

[ジョン・フラッド]
 クリスさん、ありがとうございました。
 




2. オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからお聴きになれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Goldman Sachs The Marketsより
(Original Published date : 2024/11/15 EST)

[出演]
  Goldman Sachs Global Banking & Markets
    ジョン・フラッド(John Flood)
    Head of Americas Equities Sales Trading

  Goldman Sachs Research
    クリス・ハッシー(Chris Hussey)



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だうじょん


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