テスラのロボタクシー発表イベントが、来週10月10日に迫っており、投資家やファンの注目を集めています。イーロン・マスク氏が自動運転技術に公に言及した2014年からすでに10年が経過していますが、その間に幾度も宣言内容や計画が変更され、これまで当初の予定通りには進んでいないのが現状となっています。
この投稿は、これまでのテスラの完全自動運転機能とロボタクシー実現に向けた軌跡を振り返りつつ、商用化に向けた技術的・法的課題、また先行する他社との比較を踏まえたCNBCが10月3日に公開したビデオ・コンテンツ「Will Tesla Robotaxis Live Up To 10 Years Of Development And Hype?」(テスラのロボタクシーは、10年の開発期間とハイプに応えることができるか?)の参考訳を共有するものです。
来週10月10日のイベントで、テスラがどのような発表を行うかは現時点で定かではありませんが、商用化に向けた大きな進展を示す「ポジティブ・サプライズ」となるのか、それともマーケティングイベントの延長のような「ネガティブ・サプライズ」となるのか。世の中の期待や事前評価は、大きく割れているようで、慎重にイベントを見守るのもひとつのアプローチかもしれません。
いずれにせよ、今回の発表は重要なマイルストーンとなると思いますので、しっかり注目したいと思います。
以下は、本投稿の主なサブテーマです。
ロボタクシー計画:2014年から現在までの経緯
ウォール街の期待と評価
自律走行技術とカメラ中心のアプローチ
ロボタクシー開発の現状と課題
規制課題と商用サービス化への障壁
競争激化するロボタクシー業界
1. テスラ ロボタクシーの約束
2015年、イーロン・マスク氏は、テスラ車が2年以内に自動運転できるようになると大胆な約束をしました。この自動運転のアイデアは、投資家や愛好者を大いに興奮させましたが、マスク氏とテスラには過去に約束を守れなかった歴史があります。
現在、テスラは新たなロボタクシー専用の車両の発表を予定しており、当初8月だったものを今は10月に延期しています。
延期されたイベントが近づく中、テスラのロボタクシー計画にはまだ多くの謎が残っています。しかし、2024年第2四半期の決算発表で、マスク氏は完全自動運転実現への自信を改めて強調しました。
消費者団体のコンシューマー・レポートは、テスラの完全自動運転(FSD)を技術的な偉業としながらも、批判もあり、まだ完全な自律運転には達していないと述べています。
テスラの電気自動車の販売が減速し、利益も減少している中、最近のマスク氏の発言はAIへの取り組みを強調し、特にロボタクシーと自動運転が同社の将来にとって重要であるとしています。
テスラの次回のロボタクシー発表イベントは投資家の関心を集めていますが、その間にも競合他社は進展を遂げています。
強気な予測として、レイモンド・ジェームスはロボタクシーのブッキングが2030年までに500億ドルに達すると予測しています。
マスク氏は、テスラのロボタクシーサービスにビッグプランを描いています。
2. テスラの自律走行のビジョン
テスラが自律走行車を目指す取り組みは、2015年に導入された高度運転支援機能(Advanced Driver Assistance Features)から始まりました。最初のバージョンである「オートパイロット」は、追加機能として販売され、現在では標準装備となっています。この機能は、アダプティブ・クルーズ・コントロールと車線維持機能のオートステアを組み合わせたものです。
その後、「エンハンスト・オートパイロット」が有料アップグレードとして登場し、ナビゲート機能や車線変更、スマート・サモンなどが追加されました。
さらに「フル・セルフ・ドライビング(FSD)」はこれらすべての機能に加え、信号や停止標識の認識と自動停止機能も搭載しています。
最近では「フル・セルフ・ドライビング・スーパーバイズド」(Full Self-Driving Supervised)という名称に変更されました。
最近、同社は自律運転の範囲を広げ、新たに専用ロボタクシーとして機能する車両を開発しています。
テスラがロボタクシーの準備ができているかどうかを判断するには、まずそのソフトウェア能力を検証する必要があります。
しかし、イーロン・マスク氏は、競合他社とは異なり、カメラを中心としたビジョン・ベースのアプローチを強く薦めています。
テスラは運転支援機能の実装には成功しているものの、いまだに課題が残っています。
3. 完全自動運転
2020年、テスラはFSDのベータ版をリリースし、アドオンを購入した顧客がこの機能を開発段階で試すことができるようにしました。
最近、CNBCは、FSDバージョン12.3.6を使用しているテスラのオーナー数名の車に同乗しました。ドライバーたちは、FSDがロボタクシーに変わるわけではないと認めつつも、最近のソフトウェア更新での改善を感じていると話しています。しかし、システムはまだ特定のタスクで課題を抱えています。
ニテシュ・メータ氏は、FSDを2年間使用していますが、最初に使い始めたときは、明らかな欠点がありました。
ビブランジット・ハルダー氏は、鉱業向けの自律走行技術の開発しており、2016年からテスラの運転支援機能を使用しているテスラ愛好者です。
マスク氏は、次のFSDバージョンで「マイルあたりの介入レベルが5~10倍向上する」と喧伝していますが、「FSD Supervised」という名称を使い始め、ドライバーが常にステアリングやブレーキを制御する必要があることを認めています。
米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)の最新データによると、テスラは、衝突から30秒以内に運転支援システムが作動した衝突事故を1,399件報告しており、そのうち31件が死亡事故とされています。NHTSAは、自動車メーカーから、高度運転支援システム(ADAS)にかかわる衝突データの収集を2021年6月から開始しましたが、テスラは他社に比べてADAS作動中の衝突事故の報告数が多いという結果になっています。
但しこのことは、テスラが競合他社よりも早い時期から、これらシステムを標準装備として提供していることが一因とされています。
4. ロボタクシーの実現
テスラがAIと自動化を優先する中、同社は手頃な価格の量産車の計画を中止し、専用のドライバーレスカーを同じプラットフォームを使って開発すると報じられています。しかし、テスラの最新車両や、それがFSDソフトウェアに基づき完全なロボタクシーとして機能するかどうかについては、詳細が明らかになっていません。
10月10日が近づく中、ロボタクシーのイベントは、カリフォルニア州バーバンクのワーナーブラザーズ・スタジオで開催されます。しかし、何が披露されるにしても、テスラは2024年第2四半期の決算報告書で、「ロボタクシーの展開は技術的な進歩と規制の承認に依存している」との免責事項を示しています。
イーロン・マスク氏は、将来的にテスラのオーナーが自動運転ネットワークに自分の車を追加して収入を得る可能性についても述べています。2019年の自動運転投資家向けイベント「Autonomy Investor Day」では、車がロボタクシーとして運行すれば、1台あたり30,000ドルの利益を得られるとの予測を示しています。
ただし、たとえOTAアップデート(オーバー・ジ・エア・アップデート)でテスラ車がロボタクシーとして運行できるようになっても、ドライバーレスのライドシェアサービスに必要な機能が不足しています。
最近、Waymoは、2020年以降に調達した47.5億ドルの資金に加え、その運営と事業の拡大のために、さらに50億ドルの資金を調達しました。
さらに、重要な規制の障壁もあります。NBCニュースによると、テスラはアリゾナ州、カリフォルニア州、ネバダ州などで、自動運転車を安全ドライバーなしでテストしたり、商業的なロボタクシーサービスを運営したりするためのライセンスや許可を申請していないと報じられました。Waymoがカリフォルニア州公共事業委員会から最初の許可を得るのに8か月かかったことを考えると、規制面でのハードルは大きな課題です。
テスラは、CNBCからのコメント要請にも応じていません。
5. ロボタクシーの競争市場
ロボタクシー競争の中で、一部の競合他社は自動運転の野心から後退しています。フォード、ウーバー、アップルは自律走行車の開発計画を中止し、ゼネラルモーターズのCruiseも困難に直面しています。CEOのメアリー・バーラ氏は、手動操作ができない車両に対する規制の不確実性を理由に挙げ、Cruiseの専用ロボタクシー「Cruise Origin」の発売を無期限に延期しています。
しかし、前進を続ける企業もあります。アマゾン傘下のZooxは、社員向けに自動運転シャトルを運行し、商用ロボタクシーサービスの準備を進めています。中国では、Pony.ai、滴滴(Didi)、BYDなどが自動運転事業を開始しています。アルファベット傘下のWaymoは2009年からテストを行い、2017年にはフェニックスで「Early Rider Program」を開始しました。2020年10月には、完全自動運転の乗車サービスを一般に提供開始し、それ以降フェニックスでの運行エリアを2倍に拡大しました。また、サンフランシスコやロサンゼルスでもサービスを開始し、オースティンでも乗客のみのテストを実施、年内には本格的な運用を予定しています。8月時点で、Waymoは週に10万回以上の有料乗車を達成しています。
Waymoは特定の地域でテストやサービスを開始し、地域のマッピングや車両の性能が向上するにつれて徐々に拡大していく戦略を取っています。しかし、マスク氏はこのアプローチに対して批判的です。
しかし、Waymoにも課題があります。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、Waymoのロボタクシーの運転行動や交通安全法違反の可能性について調査を開始しました。Waymoは、初期の無人運転サービスをサポートするため、ロボタクシーが困難なシナリオに直面した際には、リモートオペレーターに頼っています。
最近のインタビューで、テスラの元AI部門責任者であるアンドレイ・カルパシー氏は、テスラの自動運転技術のほうがWaymoよりも先を行っていると述べています。
一方、Teslaのロボタクシーがいつ実際に道路に出るのかは、今のところ詳細が明らかにされておらず、アナリストたちは推測するしかありません。
6. オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
CNBCより
(Original Published date : 2024/10/03 EST)
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だうじょん
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