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Q1決算直前:Pure Storage - オールフラッシュSTaaSという差別化&成長戦略

 先週、「米国決算直前:データ ストレージ銘柄 5選」というタイトルで投稿しましたが、今回、その中の1社であるPure Storage社(PSTG)について、企業概要から提供するソリューションの差別化ポイントなどをまとめました。
 この記事を投稿した本日の米国現地時間(5/29)には、同社の2025年度第一四半期決算が発表されます。マーケットのアナリストの評価はまちまちで、レーティングを上げているところもレーティングを下げているところもあり、こればかりは、決算が出てみないとわからないのですが、生成AIやデータセンターの盛り上がりが存在する中で、今回の決算結果次第では良い機会を作ってくれそうな企業ですので、本稿ご参考頂ければと思います。




1. 企業概要

(1)Pure Storage社について

 Pure Storage社(以下、PSTG社)は、2009年に設立され、カリフォルニア州サンタクララに本社を置く企業で、フラッシュストレージをコアテクノロジーとし、データストレージおよびデータマネジメントに関わるプロダクトやサービスを提供しています。
 ハードウェアプロダクトでは、データベースやアプリケーション、仮想マシン向けのブロックストレージとしてFlashArrayシリーズを提供。また、リアルタイムログやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、データ保護とデータリカバリなどの幅広い非構造化データを対象とするFlashBladeシリーズを提供しています。
 その他にも、Kubernetesデータ管理ソリューションであるPortworxや、Kubernetes向けDatabase-as-a-ServiceプラットフォームであるPortworx Data Servicesといったクラウドネイティブなソリューションも提供しています。また、ストレージアレイを統合ストレージプールとして最適化できるSaaS型の管理ソフトウェア「Pure Fusion」や「Pure1」も同社の強みとなっています。
 そして最近では、従来のプロダクト販売のビジネスモデルから、サブスクリプション型ビジネスへの積極的な転換を行っており、その中心となるサービスとして、「Evergreen//One」や「Evergreen//Flex」、そして仮想ブロックストレージアレイ「Cloud Block Store」が提供されています。

 PSTG社のストレージプロダクトの特徴の一つとして、同社が開発した「DirectFlash」という技術を採用している点が挙げられます。この技術の概要については後述しますが、汎用のSSD(Solid-state drive)を利用したフラッシュアレイは、そのデータI/O制御を旧来のHDD(ハードディスクドライブ)と同様の仕組みに依存するのに対し、DirectFlashでは、NANDフラッシュチップと直接通信してデータをコントロールすることで、フラッシュの能力を最大限に引き出すことができます。その結果、優れたパフォーマンス、低発熱や高い電力効率、そしてより高い信頼性と長寿命を実現するとしています。

【表1】 PSTG社の企業概要

(2)PSTG社の成長戦略

 PSTG社は、シンプルさと信頼性を基盤にしたオールフラッシュアレイによるデータセンターを訴求してビジネス展開しています。
 PSTG社のソリューションは、ハイブリッド環境およびパブリッククラウド環境において、ミッションクリティカルな本番環境やデータ分析、AI・機械学習、災害復旧、バックアップ&リストアなど、あらゆるデータワークロードに対応可能で、これには、構造化データと非構造化データの両方が含まれます。

 同社の成長戦略は、以下の4つの主要な市場トレンドに基づいています。同社は、これらの戦略を通じて、データストレージ市場でのリーダーとしてのポジションを強化し、顧客の価値を最大化することを目指しています。

① サブスクリプションサービスの事業拡大
 サブスクリプションサービスの事業拡大と他社ソリューションとの差別化に注力。Evergreenアーキテクチャによって、オンプレミスのストレージシステムでもクラウドのサブスクリプションモデルの利点を活かし、より柔軟で効率的なデータストレージサービスを提供して顧客価値を高めること。

②オールフラッシュ市場の拡大
 ストレージディスクのユースケースにQLCフラッシュを利用して、伝統的なハードディスクシステムに匹敵する価格でフラッシュの信頼性と効率を提供し、ディスク市場での優位性を確立すること。

③ハイブリッドクラウドとデータサービスの提供
 PortworxとCloud Block Storeにより、ハイブリッドクラウド環境を顧客が効果的に運用できるよう支援して、クラウドインフラストラクチャの柔軟性とスケーラビリティを向上させること。

④AI需要への対応
 AIの採用が加速する中、PSTG社はエネルギー効率の高いデータストレージプラットフォームを提供し、AIプロセスの各ステップで比類のない効率とパフォーマンスを提供しています。これにより、AIプロジェクトのコストを削減しながら、データ処理のスピードと精度を向上させています。


2. 前期決算内容(2024年度 通期とQ4)

 2024年2月28日に発表された前回の決算、2024年度の通期およびQ4の決算ハイライトをおさらいします。

(1)市場コンセンサスとのサプライズ

 Q4及び通期の市場予想と実績は以下の通りです。画像の内容を確認しました。Q4および通期の双方期間において、実績は市場予想を上回り、市場期待を上回る決算を報告しました。

【表2】 2024年度通期及びQ4の市場コンセンサスと実績(クリックして拡大)


【表3】前回決算前後の値動き(参考)(クリックして拡大)


(2)決算ハイライト

 以下は、2024年度の通期およびQ4の決算ハイライトとなります。

【図1】 決算ハイライト(クリックして拡大) (出典:PSTG社)

① パフォーマンス

  • Evergreen//OneとPortworxのサブスクリプションサービスに対する強い需要により、Q4売上が2.8%成長

  • Evergreen//One および Evergreen//Flexの総契約総額が通期100%以上成長の4億ドルを超えた

  • 強い売上総利益率と投資戦略により、2024年度の営業利益率は16%とガイダンス予想を上回った

  • サブスクリプションサービスの年間定額収益(ARR)は25%増の約14億ドル、Q4のサブスクリプション収益は全体の42%となった

  • サブスクリプション・サービスに関連するQ4のRPO(残存履行義務)は前年同期比29%増

  • Q4の解約不能な製品注文を含むRPOは、前年同期比31%増の23億ドル

  • FlashBlade発売以来、総売上高が初の20億ドルを突破

  • 新製品//E ファミリーは、9ヶ月前にリリース以来の最速の売上成長を達成

  • フォーチュン500の金融サービス企業で千万ドル単位の案件獲得

  • Q4の運用キャッシュフローは2億4400万ドル、2024年度通期で6億7800万ドル、現金および投資で約15億ドル

  • 年間約470万株を買い戻し、株主に約1億3600万ドルを返却

② ビジネス概況

  • Q4に6社のフォーチュン500企業を含む349社の新規顧客を獲得し、フォーチュン500の60%以上の顧客にサービスを提供。

  • ディスク全てをフラッシュストレージアーキテクチャで置き換えることを目的としたEファミリープロダクトを発表

  • Q4に重要なフォーチュン500金融サービス企業や、人工知能のための最大の専門GPUクラウドプロバイダを顧客として確保

  • Evergreen/Oneは、簡単な操作性と魅力的なSaaSモデルにより安定した成長を遂げる

  • 2025年度の予想資本支出は、Evergreen/OneおよびEvergreen/Flexの総契約価値売上が約50%成長することを考慮し、約6億ドルを予定

  • 自動化とポリシーを介してデータのサイロを解消し、ITインフラストラクチャを将来に向けて信頼性を持たせることを目指す

(3)2025年2月期ガイダンス

 PSTG社は、2025年2月期には10.5%の売上成長を見込み、売上高31億ドル、営業利益は17%増の532百万ドルを予想していている旨のガイダンスを発表しています。
※ 2025年度Q1の決算発表は、5/29午後(日本時間5/30早朝)です。

【表4】2025年度(2025年2月期)ガイダンス

(4)PSTG社のビジネス概況

 PSTG社の売上のソースは、プロダクトとサブスクリプションの2つとなります。特にストレージ業界において先陣を切ってリリースされたサブスクリプションサービスの「Evergreen」ストレージサービスが市場リリースされたのは、2015年ですが、今では、年間120億ドルの売上を持ち、前回Q4決算では、ARR:年間経常収支は、13.7億ドル(前年同期比25%)にまで成長しています。
 尚、引き続いて、収益モデルをプロダクト販売からサブスクリプションモデルへの移行を推進しており、期間売上計上となるサブスクリプションモデルによって、売上高の規模自身が大きく伸びない期間をこれからもしばらく経験すると目されています。

【図2】 PSTG社:2024年度通期の収支構造(クリックして拡大)


【表5】 過去2期の四半期別の売上・利益(2023年度・2024年度)(クリックして拡大)


【表6】 年間経常収支と前年度比成長率の推移(2022年度~2024年度)(クリックして拡大)

 年間経常収支(ARR:Annual Recurring Revenue)は、サブスクリプションサービスのパフォーマンスと成長を評価するための重要な指標で、四半期末ごとにサブスクリプション契約の年間契約金額に基づいて計算されます。2023年度のARRは11億ドルであり、2024年度には13.7億ドルに成長しています。これは、年間成長率が25%で推移しており、サブスクリプション型サービスの需要の高まりや顧客との契約金額が増加していることを示しています。但し、このように企業のパフォーマンスが堅調である一方で、成長率の低下や四半期ごとの変動も見られており、成長の持続性については一定の注意が必要かもしれません。

【表7】 繰延収益と残存履行義務(RPO)の推移

 繰延収益は、企業が顧客から前払いで受け取った代金であり、将来的にサービスや商品を提供する義務があるため、サービス提供や商品の提供が完了するまで収益として認識されません。また、残存履行義務(RPO)とは、企業が現在契約しているがまだ履行していないすべての履行義務の総額を示し、将来の売上の見込みを反映します。
 尚、【表7】を見ると、繰延収益と残存履行義務の両方が一貫して成長していることがわかります。これは、企業が持続的な成長を実現していることを示しており、特に、2024年度第4四半期の繰延収益が約16億ドルに達していることや、残存履行義務が7億ドルを超えて、将来的に履行すべき契約の増加が示されており、これによって将来の売上の安定性を期待することができます。ただし、履行義務の増加ペースが短期的に緩やかになっている傾向が見られるので、収益タイミングのリスクには注意を払う必要があるかもしれません。

3. プロダクトやサービスについて

 PSTG社のプロダクトやサービスについて、触れてみます。収益源を大きく分けると、①プロダクト販売、②クラウド型サービス、③プロフェッショナルサービスの3つが収益源となります。 ①のプロダクトについては、主にFlashArrayおよびFlashBladeソリューションが主力製品となり、②のクラウド型サービスについては、EvergreenおよびPortworxサブスクリプションサービス。そして、エンジニアリングサービスや教育サービスなどのプロフェッショナルサービスによって構成されます。

(1)ソリューション俯瞰

 PSTG社が提供するソリューションは、オンプレミス環境およびクラウド環境の双方に対応しているため、企業顧客の実装パターンもオンプレミス、クラウド、ハイブリッドとさまざまです。各プロダクトやサービスの選択肢も多岐にわたり、高性能から高容量、オンプレミスやクラウド、ライセンスモデルからサブスクリプションモデルまで、さまざまなプロダクトラインが提供されています。以下は、PSTG社が示す同社ソリューションの俯瞰図となります。

【図3】PSTG社のソリューション俯瞰図

 実際の導入ケースの例として、【図●】ではPSTGとAWSのハイブリッド環境におけるストレージソリューションの実装方法を示しており、ここでは、オンプレミスとクラウドを連携させたデータの移行やバックアップ、高可用性(HA)、災害復旧(DR)のユースケースの一例を紹介しています。ただし、これはあくまでユースケースの1例であり、PSTG社のソリューションの実装方法は顧客の要件に応じて多岐にわたることになります。
 この図が示す内容としては、PSTGのストレージが稼働しているオンプレミス環境とAWSとのデータ同期がPURITY//REPLICATEによって実現されることや、CLOUDSNAPによってデータの移行やバックアップが可能になることが示されています。データの移行やバックアップにはCLOUDSNAPが利用され、データの同期にはPURITY//REPLICATEが使用されます。さらに、パブリッククラウドはDIRECTCONNECTを通じてホステッドクラウドと接続され、オンプレミスとも接続されます。また、PSTGが提供するCloud Block StoreのActive Cluster機能によって、AWS上の複数の可用性ゾーンをミラーリングすることで、クラウド上のデータを確実に保護することができることも示しています。

【図4】 PSTGソリューションとAWSによるハイブリッドなデータ保護環境の構成例

(2)ソリューション概要

① データストレージプラットフォーム
 PSTG社が提供するソリッドステートのオールフラッシュ技術による革新的なデータストレージプラットフォームは、Purity Operating Softwareをベースに、断片化されたブロックやファイル、オブジェクトストレージのワークロードを単一のストレージマネジメント環境に統一できます。また、クラウド、オンプレミス、ハイブリッドクラウドといった異なる環境において、PurityやPure1、EvergreenやPure Fusionなどのテクノロジーソリューションによって、オンデマンドのセルフサービスストレージやSLA保証に基づくデータ管理サービスを実現します。
 PSTG社のプラットフォームは、同社が開発したハードウェア、コントローラ、ソフトウェア、そして管理プレーンに統合されており、これらのテクノロジーによって、ダウンタイムのない24時間365日のデータ運用を可能とする高可用性を実現し、顧客企業はまるで全てがパブリッククラウドであるかのように、ストレージをオンデマンドで運用できる環境を提供しています。

② Purity Operating Softwareの要約
 Purity Operating Software(以下、Purity)は、ソリッドステートストレージの能力を最大限に引き出すために同社が設計したソフトウェアで、フラッシュ上のデータ配置とアクセスの最適化を行うことによって、驚異的なパフォーマンスと高い信頼性を実現します。
 Purityは、データストレージの高密度化を目指して、フラッシュ専用に設計されたアルゴリズムやデータ構造、データ削減機能を利用しており、これによってより多くのデータをより小さなスペースで効率的に保存することができます。さらに、ハードウェアとの緊密な連携によって、省電力化と省スペース化を実現し、総所有コスト(TCO)の削減や環境保全にも貢献します。特に、DirectFlashと連携することで、NANDフラッシュチップに直接アクセスするフラッシュモジュールを実現し、パフォーマンスや信頼性、効率性の面でストレージ業界をリードする強みとなっています。

※QLCフラッシュとは
 QLCフラッシュ(Quad-Level Cellフラッシュ)は、1つのメモリセルに4ビットのデータを格納するフラッシュメモリ技術です。他のフラッシュメモリ技術(例:SLC、MLC、TLC)と比較して、より多くのデータを同じ面積に格納できるため、ストレージ容量を大幅に向上させ、消費電力も抑えることができます。
 QLCフラッシュの特徴としては、1セルあたり4ビットのデータを格納できる高密度性を持ち、物理スペースを抑えつつコスト効率を高めることができます。尚、一般的にQLCフラッシュはパフォーマンス面で他の技術よりも劣る場合があるとされますが、PSTG社のソフトウェアテクノロジーを活用することで、他社を上回るパフォーマンスを実現しています。ただしQLCフラッシュは、高密度化の代償として他のタイプに比べて書き込みや消去サイクルの耐久性が低く、寿命が短い傾向があるとされています。

各フラッシュメモリの種類は以下の通りです:
- SLC(Single-Level Cell)
- MLC(Multi-Level Cell)
- TLC(Triple-Level Cell)
- QLC(Quad-Level Cell)

③ FlashArrayについて
 PSTG社のブロックストレージソリューションであるFlashArrayは、データベースやアプリケーション、仮想マシン、その他の一般的なワークロードを対象としたソリューションです。この製品は、業界初のオールフラッシュアレイとして、HDDからフラッシュへの市場移行を推進してきました。FlashArrayには、用途や目的に応じたさまざまなラインナップがあります。
 
FlashArray//XL
 最も要求の厳しいミッションクリティカルなシステム向けの性能でスケールアウトの可能なソリューション
 
FlashArray//X
 Tier 1データベースから大規模な仮想化およびクラウドネイティブアプリケーションまでをサポート
 
FlashArray//C
 Tier 2アプリケーションおよびストレージエステートを簡素化
 
FlashArray//E
 シンプルで効率的なフラッシュによるファイルおよびブロックデータのリポジトリ

【図5】FlashArrayプロダクト(出典:PSTGより)

④ FlashBladeについて
 FlashBladeは、非構造化データのワークロードを効果的に管理・処理するためのソリューションで、リアルタイムのログ分析やHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)から、データ保護やリカバリーに至るまで、非構造化データの幅広いユースケースをサポートします。また、大規模なAIモデルの学習環境で利用されるマルチペタバイト規模の膨大なデータの管理や処理を高パフォーマンスに実現する能力も備えています。
 FlashBladeは、PurityとDirectFlashモジュールに基づくスケールアウトシステムとなっており、Software Defined Networking(SDN)を活用して高いパフォーマンスと管理性を提供します。
 
FlashBlade//S
 QLCフラッシュを採用したフレキシブル性の高いシステムで、計算分析やAI、画像処理、特殊効果、HPCやデータ保護などの要求度の厳しいワークロードに対し、スケーラブルなストレージソリューションを提供
 
FlashBlade//E
 4PBを超えるデータに対応するスケールアウトな非構造化データリポジトリを提供。ディスクベース製品に比較してTCOが同等で、運用コストの低減、消費電力を最大5分の1に削減可能 

【図6】FlashBladeプロダクト(出典:PSTGより)

⑤ Cloud-Native Storageについて
 Cloud-Native Storageソリューションは、Portworxを中心にKubernetesデータ管理ソリューションを提供しています。

Portworx
 Portworxは、Kubernetes上で動作するアプリケーションを対象として、永続ストレージ、データ保護、ディザスタリカバリ、データセキュリティ、クロスクラウド、データ移行、自動キャパシティ管理のための統合環境を提供し、これらの機能は、オンプレミス、ハイブリッドクラウド、マルチクラウド環境で利用することが可能です。
 Portworxには、Portworx Enterprise、PX-Backup、Portworx Data Servicesが含まれており、このうちPortworx Data Servicesは、Kubernetes向け初のDBaaSプラットフォームとなり、マイクロサービス化されたアプリケーションのデータ管理を簡素化します。SQLやNoSQLなどのデータベースをワンクリックで展開し、監視、バックアップ、高可用性、災害復旧、自動スケーリング、セキュリティなどの運用を自動化することができます。
 
 Portworxはクラウドネイティブでコンテナ化された環境でのデータ管理を重視する企業に適しています。

⑥ Cloud Operating Modelについて
 PSTG社のCloud Operating Modelは、Pure Fusion、Evergreenアーキテクチャ、そしてPure1によって実現されています。このモデルの中心には、ほぼ無限にスケールアウトするクラウドベースのストレージサービスを提供するPure Fusionがあります。ストレージ管理者は、SaaSの管理プレーンを通じてストレージアレイを統合し、ストレージプールをオンデマンドで最適化することが可能です。

Evergreenアーキテクチャ
 Evergreenアーキテクチャは、顧客企業が利用するクラウドベースのストレージサービスを支える技術的なアーキテクチャで、クラウドサービスを停止することなく、永続的にハードウェアやソフトウェアの交換・アップグレード・再構成を可能とし、最適化されたフラッシュのハードウェアの信頼性と長寿命を実現しながら、サービスとしての陳腐化を防止する仕組みを提供するものです。

Evergreen//One
 
オンプレミスおよびパブリッククラウドのデータストレージサービスを単一のストレージサブスクリプションサービスに統合し、真のハイブリッドクラウド環境を実現します。このサービスはSTaaS(Storage as a Service)として提供され、企業はパフォーマンスと容量のニーズに応じて利用した分だけ従量課金モデルでサービス料金を支払います。伝統的なストレージインフラストラクチャを維持しつつ、最新技術へのアップグレードを求める企業に最適なサービスです。

 Evergreen//Oneは、エンタープライズグレードのサービスとして、以下のSLA(サービス保証契約)を提供します。
 
・サービス・ティアに応じたストレージ性能の保証
・99.9999%の可用性
・データ損失ゼロの耐久性で、損失や破損からデータを保護
・使用量の25%相当のストレージ容量バッファ
・アップグレードやメンテナンスのための計画的ダウンタイム不要
・データ移行不要、フォークリフト・アップグレードも不要
・優れたエネルギー効率(TiBあたりの最大ワット数で測定可能)
・ランサムウェア攻撃からのリカバリ、アレイの翌営業日発送と技術者現地派遣(オプション)
・サプライチェーンの最適化(受注後28日以内にデプロイ)
 
 これにより、企業は常に最新の技術を利用しながら、信頼性の高いストレージサービスを受けることが可能となります。

【図7】 Evergreen//Oneで提供される6つのSLA

Evergreen//Flex
 
データストレージハードウェアを初期コストを抑えて、オーナーシップならびに従量課金制の柔軟なサブスクリプションサービスを提供。オーナーシップは、データのセキュリティと制御を企業顧客に確保するもの。
 
Cloud Block Store
 オンプレミスとパブリッククラウド間でシームレスなデータ移動を実現する仮想ブロックストレージアレイ。専用ハードウェアを必要とせずに、AWSおよびMicrosoft Azureのマルチクラウドをサポート。

 尚、クラウドサービスのサブスクリプションのプライシングについては、以下のように必要なサービスを買い物かご的にアラカルト選択すると月々のサービス合計価格の指針が示されます。

【図8】 Evergreen//Oneのサービス見積り画面


4. 差別化技術について

 PSTG社の他社のフラッシュストレージ製品との差別化テクノロジーにおいて顕著な特徴を示す「DirectFlash」と「Purity」について紹介します。

(1)DirectFlash

 DirectFlashは、PSTG社がフラッシュ・ストレージ・ソリューションのパフォーマンスと効率を最適化するために開発した主要技術です。

①    DirectFlashモジュール(DFM)
 DFMは、最適なパフォーマンスを実現するためにPSTG社がNANDフラッシュチップと直接通信できるようにカスタム設計したフラッシュモジュールです。従来の一般的なSSDアーキテクチャにおける不要なコンポーネントを取り除いており、従来のSSDと比較して遅延がが大幅に低く、パフォーマンスと効率性に優れています。

 汎用SSDを使用するフラッシュアレイは、基本的に従来のハードディスクドライブをエミュレートするアーキテクチャでフラッシュ・ドライブと通信しています。この旧来のアーキテクチャには、トラックとセクタが存在し、これらすべてのセクタを端から端まで並べることで1つの長いブロック・リストを構成しています。一般的なSSDでは、FTL(フラッシュトランスレーションレイヤー)と呼ばれる複雑なシステムを利用して、この仕組みを再現しています。
 一方、PSTG社のDirectFlashは、フラッシュメモリと直接対話するアプローチを採用し、システム・レベルのメディア管理を通じて、フラッシュの能力を最大限に引き出し、より優れたパォーマンス、電力消費効率を実現しています。

② DirectFlashソフトウェア(DFS)
 DirectFlashソフトウェアは、ストレージアレイとDirectFlashモジュール間のインタラクションを管理し、ウェアレベリング、ガベージコレクション、エラー訂正などのタスクをソフトウェアレベルで処理します。DFSはフラッシュセルをきめ細かく管理することが可能で、フラッシュメモリの効率利用と最適化を通じてフラッシュメディアの寿命を延命することが可能です。

 これらDFMとDFSを実装することによって、従来アーキテクチャのSSDコントローラやその他の中間層を排除することができ、オーバーヘッドを削減し、さらにフラッシュ・メモリの並列処理が可能となるため、読み書きの速度を大幅に向上させ、より高いパフォーマンスとリソースの有効活用を実現します。
 
 また、PSTG社は、汎用のSSD(Solid State Drive)を外部調達するのではなく、「生の」フラッシュチップを利用してDirectFlashモジュールを製造しており、SSDを利用する他のストレージアレイベンダーに比べて、低コストで必要なフラッシュを手に入れることができ、調達コストといった経済性に対してもメリットを提供しています。

(2)Purityソフトウェア

 Purityは、フラッシュアレイのために開発されオペレーションシステムという位置づけのソフトウェアで、様々な高度な処理を通じて、フラッシュアレイのパフォーマンスや利用効率を上げています。PurityはDirectFlashと密接に連携しており、これらの組み合わせにより低遅延・高パフォーマンスなフラッシュアレイシステムを実現しています。
 
Purityの主な機能や特徴を以下に記します。

◇ 高度なデータ処理
 Purityは、重複排除、圧縮、シン・プロビジョニングなどのインライン・データ削減機能を提供します、これらの機能によって、ストレージ領域の効率利用とコストを大幅に削減することができます。また、データ保護と高速データアクセスのために、スペース効率に優れたスナップショットとクローンを逐次生成します。

◇ パフォーマンスの最適化
 重要なワークロードに対して、QoSポリシー(サービス品質ポリシー)にもとづいて優先処理をするメカニズムを持ち、システム全体で一貫したパフォーマンスを保証します。

◇ データ保護とセキュリティ
 データの保存時および転送時にエンドツーエンドの暗号化を提供し、パフォーマンスに影響を与えることなくデータのセキュリティを確保します。また、非同期および同期レプリケーション機能を提供し、災害復旧や事業継続のための仕組みを提供しています。

◇ UI/UX
 Purityは、ストレージ・リソースの管理と監視を簡素化する直感的なユーザー・インターフェイスを提供しています。また、外部のITシステムやクラウドとの連携やタスクの自動化のためのAPIを提供していす。

◇ エバーグリーン・ストレージ
 ソフトウェアのアップデートやハードウェアのアップグレードを無停止で(システムを止めることなく)実行可能なため、ダウンタイムを抑えて継続的なシステムの運用を保証します。

◇ ハイブリッド・クラウド対応
 パブリック・クラウド・プラットフォームとのシームレスな統合をサポートし、ハイブリッド・クラウドを容易に実現します。また、クラウドベースでデータをバックアップするCloudSnapやオンプレミスとクラウド環境間のストレージ運用を一貫して実現するCloud Block Storeなどの機能を備えています。

◇ AIによるインテリジェントシステム
 Purityは、AI利用したシステム管理である「Pure1」と共に動作させることによって、予測分析や複数のフラッシュアレイのインテリジェントな一元管理を提供します。

(3)DirectFlashとPurityの統合

 以上の通り、DirectFlashはハードウェア層を最適化し、Purityはデータを管理・保護する高度なソフトウェア機能を提供しており、これら密接に連携する2つ技術より、低遅延・高パフォーマンスなフラッシュアレイシステムを実現しています。これらテクノロジーの組み合わせによって、従来のSSDベースのフラッシュアレイとの差別化ポイントについては以下を参照ください。

◇ 密度と効率の向上
 DFMは、競合他社と比べてストレージ密度が2~3倍向上し、消費電力がテラバイトあたり39~54%削減されます。DFMは機械的なHDDをエミュレートしないため、フラッシュ・メディアを最適に管理でき、SSDと比較してパフォーマンスやストレージ密度、有効容量、メディアの耐久性、コストが大幅に向上します。

◇ スマートなデータ配置
 Purityは、SSDがデータ配置とメディア管理を個別に判断して処理するのではなく、現在のIOアクティビティやデータ削減処理、ガベージコレクションサイクル、アレイ全体のワークロードと健全性などを把握し、単一のドライブよりも賢い配置とスケジューリングの決定を行うことができます。

◇ データ配置の最適化
 一部のデータがデッドブロックにならないように同じブロックに同じ寿命のデータを配置します。Purityは、特定のページが同じファイルやオブジェクトの一部か、同じホストから来たものかを把握し、削除時にそれらを同じブロックにまとめてブロック全体を一度に解放することができます。

◇ 優れた性能と持続性
 ガベージコレクションを行わないため、過度の書き込み処理を発生させません。書き込み回数が少ないことはドライブの寿命を延ばすことにつながります。Purityは現在のIOアクティビティを把握し、システム全体を可視化するため、データアクセスの遅延を回避し、パリティからデータを再構築することができます。

◇ よりシンプルで信頼性の高いシステム
 DFMは、ソフトウェアで作業を行うため、複雑なコントローラや大容量RAMを必要とせず、シンプルで効率的、かつ高い信頼性を持ちます。また、ドライブのコストや複雑さを増加させることなく、ドライブのサイズを拡大することができます。


以上です。


御礼
 最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
役に立ちましたら、スキ、フォロー頂けると大変喜び、モチベーションにもつながりますので、是非よろしくお願いいたします。 


だうじょん


免責事項
 本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。


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