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パウエル議長は、FOMCの開催を来週ににすれば良かったと悔やんでいる(ジェレミー・シーゲル教授)
8月2日、株式マーケットを大きく押し下げた7月の雇用統計の発表後に行われた「株式投資の未来」の著者としても知られる現ウォートン・スクール名誉教授のジェレミー・シーゲル教授のインタビューを共有します。
今回の雇用統計データを受けて彼が示した見解のトピックスは以下の通りです。ご参考下さい。
パウエル議長は、FOMCの開催をISMと雇用統計のデータが出る今週ではなく、来週にすれば良かったと悔やんでいるに違いない。
FRBが楽観できていたハネムーンは終わった
市場は目標に向かって大きく進んでいるがFRBはほとんど動けていない
後半は波乱含みの展開
2020年のCOVID以降、最も現実的な景気減速のシグナル
(1)インタビュー
[スカーレット・フー](ブルームバーグ)
今週は非常に大きなニュースが多かった週でした。FRBの発表、大手ハイテク企業の決算、そして大きな雇用統計がありました。今週、株価は3日連続で下落しており、本日の売りが最も大きくなっています。この反応は過剰反応だと思いますか?
[ジェレミー・シーゲル](ウォートン・スクール名誉教授)
そうとは思いません。パウエル議長は今回のFOMCが今週ではなく来週だったらよかったのにと思っているでしょう。木曜と金曜に非常に悪いデータが出ました。前回、金利を引き下げるべきだったと私は思いますし、年末までに4回の利下げが必要になると思います。データの状況によっては、さらに多くの利下げも考えられます。
はっきり言って、楽観的な時期は終わりました。パウエル議長とFRBは、現実への影響なくインフレを抑えられる、待っていても問題ない、という考えをエンジョイしていました。しかし、私は待ち過ぎだと思います。
[アリックス・スチール](ブルームバーグ)
でも、視点を変えてみると、雇用が急激に失われているわけではありません。失業率も5%近くにはなっていません。だからといって、2年物国債の利回りが27ベーシスポイント動き、ハイテク株が3%も下落する必要が本当にあるのでしょうか?
[ジェレミー・シーゲル]
それは不況への懸念からきています。また、ハイテク株は非常に健全なPERに留まっています。パウエル議長は75ベーシスポイントの利上げを4〜5回も行いました。それなのに、50ベーシスポイントの利下げがあるかもしれないということに驚くべきでしょうか。
現在のFF金利は5.3%です。FRBは長期的な正常金利を2.8%と考えていますが、これは現在のほぼ半分です。私たちは目標に向かって大きく進んでいるのに対し、FRBはまだその目標に向けてほとんど動いていないと思います。ここにミスマッチがあると感じています。
[アリックス・スチール]
では、株式市場にとってそれは何を意味するのでしょうか?市場は今年少なくとも100ベーシスポイントの利下げを織り込んでいますが、それがすでに織り込まれている以上、株価を上昇させるには十分に強い経済データと企業の業績が必要です。これまでの業績を踏まえて、その可能性はどのくらいあるのでしょうか?
[ジェレミー・シーゲル]
後半は波乱の展開になると思います。まず、選挙の不確実性があります。1か月前にはトランプ氏の勝利が確実だと思われていましたが、今ではそれが確実ではなく、多くの不確実性が11月に向けて出てきました。
次に、企業の業績の不確実性もあります。今回の決算発表では否定的な内容も聞かれました。年初に大きな利益を上げましたが、私は5~8%の追加収益に満足すべきだと言いました。ところが突然、15~20%に達し、人々はそれが新たな常識になったと思っています。しかし長期的には、それは異常に高いものであったということを認識しなければなりません。今後、波乱の時期が続き、その後、2025年に向けて良いものが見えてくるかもしれません。
[アリックス・スチール]
市場のセンチメントや売り圧力に関する重要なポイントですね。特にCTAs(Commodity Trading Advisors:商品取引顧問業者)やVAファンド(Variable Annuity Funds:変額年金保険に基づく投資ファンド)のようなシステムの資金が、市場の潮流が変わると売りに出ることがあります。そして、市場一般のセンチメントも影響します。
今日は、夫が「大変だ、経済はどうなっているんだ?」とメールを送ってくるような日です。こういった日がどのくらい続くのでしょうか?
[ジェレミー・シーゲル]
今回の状況はこれまでと少し異なると感じています。以前は経済の冷え込みが良いこととされ、FRBが利下げに踏み切るのを促すと考えられていました。過去に冷え込んだデータが出た時には、株価に大きな影響はありませんでした。しかし、今回は失業保険申請件数が増加していることが注目されています。季節調整を加味すると、これはパンデミック以来の最高水準です。また、失業率が0.5%上昇するというサームルールに関する話も多くなっています。これは、不況を予測しているわけではありませんが、2020年のパンデミック以降で最も現実的な景気減速のシグナルだと感じています。
(2)オリジナル・コンテンツ
Bloomberg Televisionより
(Original Published date : 2024/08/02)
[出演]
ウォートン・スクール名誉教授
ジェレミー・シーゲル(Jeremy Siegel)
Bloomberg
スカーレット・フー(Scarlet Fu)
アリックス・スチール(Alix Steel)
以上です。
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だうじょん
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