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代替医療はなぜ使われるのか――その背景にある心理と文化

現代において、代替医療の利用が広がっている理由は一見複雑でありながら、その核心には人々の不安と希望が交錯していると言えるでしょう。
特に、がん患者が代替医療を選択する傾向が増加している事実は、標準医療に対する一定の不満が根底にあることを示唆しています。結論として、代替医療の普及は、標準医療に対する信頼の揺らぎや個別化された治療への渇望、そして文化的・社会的な要素が複雑に絡み合っている結果なのではないでしょうか?

まず、標準医療への不信感について考えてみましょう。
標準医療は科学的根拠に基づいており、多くの病気に対して有効な治療法を提供していますが、その一方で、患者一人ひとりに対する「個別化された治療」という観点では限界があります。
また、保険外治療となると自由診療になってしまうため費用も高くなり、その治療が必ず功を成すとは限らないのですから……
特に、がん治療においては副作用が重篤であったり、治療の進行が思わしくない場合、患者は他の選択肢を模索し始めます。こうした背景の中で代替医療が浮上してくるのです。患者は、「自分に合った」治療法を見つけたいという切実な願いを持ち、その願いが代替医療への関心を高めます。

これは最近ですと、コロナのワクチンやマスクなどに対するいわゆる反ワクチンという方々の主張があったりすることも例にあげられます。
しかし、これが過激化していきますと誤った認識が風評として広まり、正しい知識や医療行為が攻撃の対象となるのは見過ごすことはできません。
科学的な根拠、知識が風評や偏見によって潰されてはならないのです。

また、代替医療が広がる背景には、文化的な要因も大きな役割を果たしています。日本においては、漢方薬や鍼灸といった伝統的な治療法が古くから受け入れられており、これが現代における代替医療の利用を後押ししているのです。
いうならば、西洋医学への不信というものもあります。
これらの治療法は、医療行為というよりもむしろ生活習慣の一部として長い間存在してきました。このため、標準医療では治らない、あるいは満足のいかない症状に対して、患者はこうした伝統的な療法に自然と目を向けるのです。さらに、現代社会においては情報が簡単に手に入るため、インターネットなどを通じて代替医療の情報が広まり、その普及を助長しています。
これはインフルエンサーという存在も関与していたり、一部のカルト的な宗教によって被害をもたらされることを表しています。
例としてはエホバの証人のようなものは輸血を禁止して助かる命が見過ごされているケースも少なくありません。
このような新興宗教によるテロに近い行為や知らず知らず、知識の伴わない善意の行為のようなものなども含めて人の命を危険にさらしているという現状は科学や義務教育がなされてきている現在でも変わらないのです。

これらの手に入りやすい情報とエコーチェンバー現象による結果のみを目にすることが多くなった代替医療の効果というものが拡散されていく現実があるのです。

しかしながら、代替医療の多くには科学的な根拠が乏しいことも事実です。
患者は、科学的なデータに基づかない情報に対して無批判に受け入れる危険性を抱えています。例えば、がん治療において代替医療を選択した患者は、標準医療を受けた患者に比べて死亡リスクが高まるという研究結果も報告されています。それにもかかわらず、なぜ患者は代替医療に魅了されるのでしょうか。

その答えの一つには、「免疫力の向上」や「自然治癒力の活性化」といった、代替医療が訴える「自然」の概念が挙げられます。これらは、患者の心に響く力強いメッセージです。現代の技術的で機械的な医療に対するアンチテーゼとして、自然の力を信じたいという心理が働いているのです。特に、病気という不確定要素に直面した際、人は科学的根拠よりも「自分にとって心地よい」治療法に魅かれる傾向があります。

また、代替医療を選ぶもう一つの要因として、「自己決定権の尊重」が挙げられます。標準医療の中では、医師による一方的な判断が下される場合が多く、患者が主体的に治療法を選べる余地が少ないと感じることがあります。一方、代替医療では、患者が自ら治療法を選び、管理できるという感覚が強く与えられます。この自己決定の感覚は、特に重篤な病気を患う患者にとっては大きな支えとなり、精神的な安定をもたらすのです。

とはいえ、代替医療に依存することは慎重に考えなければなりません。科学的根拠が不足している療法に頼ることは、最悪の場合、命に関わる結果を招く可能性があります。特に、カルト的な集団による治療法が広がっていることにも注意が必要です。これらの集団は、患者の不安を利用し、過度な期待を抱かせ、最終的には金銭的・精神的な搾取に至る危険性があるのです。

結論として、代替医療の広がりは、標準医療への不満と文化的な要素、そして患者自身の心理的な欲求が複雑に絡み合った現象だと言えます。患者は、自らの健康に対する責任を持ち、信頼できる情報に基づいて適切な判断を下すことが求められます。そして、標準医療と代替医療の間には深い溝があるのではなく、両者が協力し合い、患者にとって最善の選択肢を提供する未来が求められているのです。


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