運動について思うこと
週に2〜3回はジムへ行く。本当はもっと行った方が良いのだろうが、それは時間的に厳しい。昔は運動が大嫌いだった。小学校から高校まで、体育は1か2しか取ったことがない。
体育の成績を上げるために努力しようと思ったことすらない。そんな運動嫌いの私が運動をする最初のきっかけになったのがアメリカ留学だった。
周囲の人々の多くが定期的にジムに通っており、あそこのジムが良いだの、こういうエクササイズが効果的だの、日常会話の中で当たり前のように「運動」という言葉が登場した。
一時期アメリカでパーソナルトレーニングを受けていたが、それはそれはキツかった。自分のキャパを超える重量を持たされ、たまにはスタジオを貸し切ってスプリントトレーニングもやらされた。
でもそのお陰様で運動することが習慣化し、日本へ帰国してからも、当たり前のようにジムへ入会した。そしてパーソナルトレーナーを付けた。だが、アメリカと何かが違う。指導が生ぬるいのだ。
重い重量にチャレンジしようとしても、「女の人はそんなに重いの持たなくていいから。軽い重量で大丈夫」と、チャレンジを止められる。
やり甲斐を感じなくなった私は、徐々に運動から遠のいて行った。運動を完全にやめた訳ではないけれど、その内容に常に物足りなさを感じていたので、以前ほど真剣に取り組まなくなった。
九州へ戻って来てからも、一応いくつかのジムに入会はしてみた。しかしやはり生ぬるい。パーソナルを付けたところで、ラジオ体操に毛が生えたようなレベル。数少ない大手のジムへ行っても、マシンは暇な老人たちのお喋り専用椅子として占拠されている。常駐の職員もそれに気付いているはずだが、見て見ぬ振り。
うんざりして、私は完全に運動を辞めた。そしてめちゃくちゃに太った。食生活への意識が低下し、夜ピザを覚えてしまったのだ。やめたいのにやめられない。せめて何かを変えようと、また急いでジムに入会した。流石に夜ピザの習慣からは脱したものの、大量に蓄積した脂肪は、そう簡単には落とせない。
どうすれば良いのか路頭に迷っている時、たまたま何かの雑誌で中村アンさんの記事を見た。彼女はクロスフィットという運動をやっており、その運動を始めてから、少々食べても太らなくなった的なことが書いてあった。
聞いたことのないエクササイズ。取り敢えずYouTubeで調べてみる。当時、日本でこの運動をやっている人はまだあまりおらず、出て来たのは全てアメリカの映像ばかりだった。しかも、このエクササイズの素晴らしさを語る動画というより、罰ゲーム的にやってみた的のものばかり。
検索結果の一番上に上がってきた動画をクリックしてみたが、私がアメリカでやっていた物とは比べ物にならない程エゲツない内容だった。尋常じゃないレップ数に、冷やかしで参加したYouTuberたちは全員、途中から顔面蒼白になり逃げ出していた。
少し興味はあったが、流石に体力的に私にはこなせないと思った。だが、その頃丁度クロスフィットは日本でブームになり始めだったようで、偶然観たテレビ番組でも紹介されていた。そして番組を観て思った。日本版はアメリカ程キツくないかもしれない。
近くに通えるクロスフィットはないか調べてみたところ、幸運にも存在した。しかも家から通える距離。早速体験の予約を入れ、クラスに参加。ある程度きつい事は想定していたが、体験者でも容赦無く、ど偉い回数をやらされた。
久々に死ぬほどきつかったが、痩せそうだという確信があった。一週間の体験期間が終わり、私は入会を決意した。そこからは運動スイッチがオンになり、週に5回通うようになった。
決して他の会員のように素早く動いたり、色んな種目をこなせた訳では無いが、いつも私が出来る範囲で最も負荷のかかる内容を提案してくれて、私は毎回全力を出し切った。また、運動がとても楽しかった。
入会して半年ぐらい経つと、大分痩せていた。着れなかった服もまた着られるようになり、毎日が楽しくなった。現在は仕事の関係でクロスフィットには通えなくなり、所謂筋トレ系のジムへ通っているが、運動する習慣は健在だ。
オンラインが主流になったお陰で、遠く離れた優秀なトレーナーにメニューを組んでもらい、それを一人で黙々とこなしている。10代の頃、あそこまで運動嫌いだった自分が今では信じられない。
だが、嫌いだったのには理由がある。私はそもそも、運動神経が良い方ではない。運動が得意でない人なら経験した事があると思うが、日本の体育の授業では、何かしら新しい種目に取り組む場合も、そのやり方を、順を追って細かに説明し、練習させてくれる訳では無い。
運動が得意な人は、特にその種目の練習をしなくても一発でクリア出来る。そして出来ない人は、「はい、出来ませんでしたね。残念でした〜。ゲームオーバー!」という風に、クラス全員の前で笑われて嫌な思いをするだけ。
私はこうした授業習慣は本当に良くないと思う。私がクロスフィットに通っていた頃、やった事のない種目が何度も登場した。当然、最初は全く出来ない。だけど、それを馬鹿にして笑う人は誰一人いなかった。
皆んな、その動きのコツを教えてくれたり、最終形態に行くまでの10ステップの1からを丁寧に教えてくれた。そうすると、こんな運動音痴な私でも、いつしか出来るようになっていた。
数学や英語に関しては、先生たちはわからない生徒に対し、噛み砕いて丁寧に教える。何故体育もそうしないのだろう?しかも、日本の体育は軍隊の訓練みたいな物ばかりでちっとも面白くない。
日本人は欧米人に比べ、運動する人が圧倒的に少ないと思う。それは学生時代、運動は楽しい物だと教わって来なかったからだと思う。私の日本人の友人で、運動を習慣にしている人は誰一人いない。(ヨガをやっている人はいるが)
私が定期的にジムで運動して、以前は上がらなかった重量がやっと挙げれるようになったと興奮気味に話すと、皆「偉いね、そんなきつい事やって」と言う。でも、これをアメリカ人に話すと「やったね!壁を越えるって楽しいよね」となる。
運動を習慣的に行うか行わないかは、人間の健康寿命にも関係して来ると思う。日本は長寿国なのに、寝たきりで老後を過ごす人が多い。私はそうはなりたくない。老人になっても筋トレはやめない。
日本の地方都市も昔に比べてジムは増えたけど、根本的な運動への向き合い方や楽しみ方、もっと学校で教えるべきだと真剣に思う。