美味しすぎない「コロッケそば」
いやちょっと待て。そもそも美味しすぎるコロッケそばなど存在するのだろうか。コロッケとそばである。住む世界が異なる二人が丼ぶりの中で出逢った奇跡と言うべきか。同じ揚げ物である天ぷらが許されるのだから、俺もいけるのではないか?と魔がさしたと言うべきか。何にせよ高級そば店にはそろわないラインナップ。キングオブ美味しすぎない。それがコロッケそばなのだ。
そんな王道の味を楽しみに来たのは、仙台における「美味しすぎない」のメッカ、そばの神田だ。「神田」という東京感ある単語で誤魔化しているが、れっきとしたローカル店である。久しぶりに来てみたら、券売機がタッチパネル式になっていた。どうやら儲かっているようだ。
どう頑張っても写真映えが不可能な姿。何度でも言おう、コロッケそば(380円)だ。そばの上に乗っているのは、なんとコロッケである!!もちろん、そばとコロッケはマリアージュしない。しかし「美味しくないの?」と聞かれると「美味しいよ」と答えてしまう。そしてまたいつかオーダーするであろう。しかし他人には薦められない。思春期の中学生のように、曖昧に心が揺れ動くのだ。たった一杯のコロッケそばで。
大人たちは今日も立ち姿でそばを啜る。この店には座席があるのに立って過ごす。おそらく座ると味がバレるのだ。だから今夜も彼らはひたすら幻想に浸る。
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