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『なんで僕に聞くんだろう。』を読んで

アドラーは「人間の悩みはすべて、対人関係の悩みである」という言葉を残しました。じつは悩みの反対、願望といった感情も、たいていは対人関係にまつわるものと考えています。

で、本書ではまさに人間関係を原因としたさまざまな相談がテーマ。これらに対して著者は「なんで僕に聞くんだろう。」と思いながらも、まっすぐ、ていねいに、ときにユーモアを交えたり、巧みな類推・たとえを用いたりしながら回答していきます。

著者は写真家の幡野広志氏。ガンであることを公表してから人生相談のメッセージが多く寄せられるようになり、プラットフォームはTwitter→cakesへ。本書はcakes史上もっとも読まれた連載であり、その書籍化にあたります。

幡野さんは、言葉を大切にされています。あいまいで混同しそうな言葉には線を引き、輪郭をはっきりさせます。たとえば「批判」と「批難」はちがうというお話であるとか、「誤解を解いたさきにあるのが、理解だとおもいます」というお話だとか。

「言葉は武器にもなるし、言葉で盾をつくることしかない」だからこそ、言葉に真摯に向き合っている、そんな印象を受けました。何度かハッとしました。

幡野さんは、相談の答えは悩む言葉のなかに隠れているといいます。「問題解決」と「共感」それぞれだけでは足りず、二つがうまくミックスされたものが必要だと。

16歳の年相応の悩みからは何度も推敲していたことを読み取り、また他では相談に記載した年齢からその悩みの本気度を見抜きます。一文だけ寄せられた「風俗嬢に恋をしました」という相談に対する名推理のような返答には唸りました。重いテーマにもまっすぐ答えていく幡野さんの回答にはある種の気持ちよささえ感じます。

最後に心に響いた箇所を紹介します。「幡野さんみたいな文章を書きたい」と寄せられた相談に対してのアドバイス(「ウソをつかないこと」の説明です。

ウソをつかないというのは、作り話をしなさいということではありません。(略)ウソというのは、おもってもいないことを書くことです。
本音で書くというのがぼくは大切なことだとおもいます。自分が日々感じていることや、自分がたどりついた答えを、ウソをつかないで書くということをぼくは心がけています。

もっともっと読みたくなる本です。

というわけで以上です!


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