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あなたは人生何回目?岩波文庫的な小説『月の満ち欠け』(佐藤正午)
岩波書店、初の直木賞受賞作品であり、「岩波文庫的」な装丁の文庫化は話題を呼びました。本屋で見かけたときは、タイトル名と表紙のイラストからして「現代の古典」的な作風?と気になっていた作品。
月は満ち欠けを繰り返す。つまり、死んではまた蘇る。本書はタイトルが示す通り、月のように生まれ変わりを繰り返す、あるひとりの女性を主軸に話が展開されます。
数奇な恋愛小説でもあり、ミステリー要素も含んでいます。
テーマは輪廻転生。想いを持つ「瑠璃」という女性は死後、別の少女として生まれ変わる。身内の人物は困惑し、到底受け入れられない。
時を重ねながら、輪廻転生は繰り返され、そしてついに…。周囲の受容と伏線の回収を、読者は登場人物と同じ目線で見届けることになります。
「生まれ変わり」を繰り返すとは、それだけ死の経験を意味します。当たり前だけど、死なないと生まれ変われない。
内容に踏み込んだ言及はしませんが、それほどまでの「想い」がなければ諦めるだろうし、それは一種の執念のように伝わってきます。
あなたは人生何回目?
以前、「松紳」という番組で島田紳助さんが輪廻転生の話題を挙げていたのを思い出しました。
マナーの悪いおっちゃんは人間が今回「初めて」で、妙にできのよいクラスメイトのあいつはきっと「4回目や!」と。
瑠璃のような人物ほど記憶のフラッシュバックが強烈でなくても、ゆるーいデジャヴなら経験した人はいると思うし、『前世を記憶する日本の子どもたち』という本も実在します。
輪廻転生がもしもあったとして、自分は人生何回目なのだろう?
本書には、女性の名前である「瑠璃」をモチーフにした諺や短歌も登場します。なんとなく輪廻転生を用いた日本流のファンタジーとしても読めると思いました。
というわけで以上です!
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