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『若い読者に贈る美しい生物学講義 感動する生命のはなし』を読んで

電通の佐藤雅彦さんが描くような、わかりやすく、そしてかわいらしい絵のタッチで解説する細胞のお話。「代謝によって細胞は入れ替わるのに人はそのままなのか」といった福岡伸一さんの動的平衡的なお話。ポパーの「反証可能性」のエッセンスを交えた科学の基本に関するお話。

とにかく知的好奇心を刺激してくれる素晴らしい一冊です。語り口もユーモアがあって読みやすい。

とくに11〜12章の人類に関するテーマがおもしろかった。サピエンス全史のようなワクワク感があります。

まず事実として驚きなのが、「人類以外に直立二足歩行をする生物はまったくいない」ということ。およそ四十億年にもわたる生物の進化の歴史の中で、人類の出現以前には、ただの一度も直立二足歩行は進化しなかった。

利点と欠点それぞれを洗ったうえで、直立二足歩行の人類がどのように自然選択されていったのか?現時点の最良の仮説の流れをかんたんにまとめます。

*一夫一妻制の社会になる

*夫は自分の子供という意識が芽生える

*夫が子育てに参加する

*直立二足歩行という突然変異が発生

*仮説=両手が空くので食料が運べる

*直立二足歩行に自然選択が作用する

それほど強い仮説ではないけれど、現状ではこれが最良ということ。ちなみに一夫一妻制の社会になったことで多夫多妻制と比較してオス同士の争いがなくなる。その結果として、犬歯が小さくなった(平和になる)とも考えられる。つまり一夫一妻制がヒトをヒトたらしめている?

直立二足歩行は決定的に「遅い」。サバンナでは生きていけない。致命的です。では自然選択の観点においてどんな利点があったのか?つまり、結果として利点が欠点を上回ったのか。こうやってロジカルに考えていく方法そのものにワクワクします。

本書に書かれていないところでも、直立二足歩行によって見通しがよくなり、ここ(here)と向こう(there)の概念が生まれ、宗教的な発想につながったとか、いろんな仮説を立てられそうです。

生物学って、幅広くておもしろい。


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