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従業員離職のコストを理解し、適切に算出する方法
皆さん、こんにちは。生産性高く、幸せな職場づくりは進んでいますか?ラボラティック株式会社代表の野口麗奈です。今日は、離職にかかるコストという、皆さんも常に気にしている点について、大変興味深い記事をお届けします。ぜひ、皆さんの組織運営のヒントになれば幸いです。注:記事の出典は、ラボラティックとパートナ関係にある、世界的な従業員経験プラットフォームを提供するCulture Amp社の「Understanding and calculating the cost of employee turnover」を日本の読者様向けに訳したものです。
人事部門も、経営陣も、マネージャーも、そして退職する従業員と共に働いてきた同僚も、退職を歓迎する人はいないでしょう。
たとえ退職についてポジティブな側面を見出せたとしても、離職には感情的な負担と業務的なコストが伴います。優秀な人材を惹きつける競争は常に激しいものですが、採用はその戦いの半分に過ぎません。特に「大退職時代」と呼ばれる現代において、離職率が過去最高に達している状況では、従業員を補充するにはこれまで以上に時間と費用がかかる可能性があります。
この記事では、離職を引き起こす要因について深掘りし、従業員エンゲージメントが定着率を高める鍵となる理由を解説します。その上で、Culture Amp(カルチャーアンプ)のプラットフォームがどのように従業員の離職コストを算出し、従業員の離職を防ぐための具体的なアクションに役立つかをご紹介します。
従業員が離職を選ぶ理由を探る
人はなぜ退職を選ぶのでしょうか? 理由としてよく挙げられるのが「報酬」です。しかし、Culture Ampでは、報酬制度が公正である場合、給与が従業員の定着率を大幅に向上させる効果的な手段とは考えていません。
Culture Amp社のCEOであるディディエ・エルツィンガは次のように説明しています。「従業員がただ『もっと給料をくれ』と言うだけの場合、その人を引き留めようとしても意味がありません。この時点で、彼らの判断基準が純粋に金銭的な取引に変わってしまっているため、従業員を引き留めるための戦いにすでに敗れているのです。仮にその要求に応じて給料を引き上げたとしても、半年以内に他の誰かがさらに高い給料を提示すれば、彼らは去ってしまうでしょう。」
では、従業員が会社に留まるか退職するかの決断を左右する要因には、どのようなものがあるのでしょうか?
ギャラップ社の最近の調査によれば、「大辞職」の主な原因は、多くの人が予想していた業界や役割、給与の問題ではなく、職場環境の問題であることが分かっています。調査データによると、退職率が最も高いのは「エンゲージメントが低い」もしくは「積極的に関与していない」従業員です。言い換えれば、従業員の定着率とエンゲージメントは密接に結びついているのです。
この調査結果は目新しいものではありません。早くも2004年に、コーポレート・リーダーシップ・カウンシルによる定量分析で、「エンゲージメントの高い従業員は離職率が87%低い」との結果が示されています。金融サービス大手のスタンダード・チャータードが実施した社内調査でも同様の傾向が確認されました。同社の支店では、従業員エンゲージメントが高い支店ほど、自主的な離職率が46%低いことが分かっています。
幸いなことに、科学的な根拠に基づいたエンゲージメント調査を活用すれば、従業員の不満や意欲の低下を引き起こしている影響力の大きな要因を、簡単かつ直感的に特定し、対策を講じることができます。データを収集した後は、この調査結果を基にフィードバックを分析することで、将来的に自社の従業員がどのような要因で離職につながる可能性があるのかを具体的に理解することができます。
Culture Amp社では、これまで4,000社以上の企業と協力してきた経験から、以下のポイントに注力することで、エンゲージメントを向上させ、従業員の定着率を高め、離職に伴うコストや影響を軽減できることを確認しています。
会社のリーダーシップ
よく耳にする俗説を一つ整理しましょう:「人が辞めるのは上司であって、会社ではない」。
Culture Amp社のピープル・サイエンティストがデータを徹底的に分析した結果、管理職は確かに重要な要素であるものの、全体的なリーダーシップの影響には及ばないことが明らかになりました。具体的には、上司や給与が退職の決め手となった人の割合はそれぞれ12%と11%でほぼ同じでしたが、リーダーシップが要因と答えた人はその2倍以上にあたる28%に上りました。
2021年のエンゲージメント調査ベンチマークによると、リーダーシップは世界的にエンゲージメントを高める最も重要な要因であることが明らかになりました。エンゲージメントの高い従業員の78%が、次のような声明に「そう思う」または「強くそう思う」と回答しています:「私は[会社]のリーダーを信頼しています」。
言い換えれば、強力なリーダーシップは、従業員のエンゲージメントを高め、定着を促進する上で欠かせない要素なのです。
学習と能力開発
また、従業員が退職するかどうかを決定する際に、学習と能力開発が重要な要素であることも判明しました。先述の「人が辞めるのは上司であって、会社ではない」調査において、Culture Amp社のピープル・サイエンティストは、退職の決め手が能力開発であった人の割合は52%であり、管理職、給与、リーダーシップの要素を凌駕していることを発見しました。
これらの数値は、2021年のベンチマークを見ても同様の傾向を示しています。世界的に2番目に高い要因として挙げられたのは、「[会社]では、自分のキャリアや能力開発の目標が順調に進んでいる」との評価に基づく、進歩や成長に関連するものでした。
Culture Amp社のリード・リサーチ・ピープル・サイエンティスト、フレシア・ジャクソン氏も、業績の良い社員が退職する理由を調査した別の研究で、同様の結果を得ています。彼女は、「退職した社員は、『(会社には)自分にとって良いキャリアの機会があると思う』という質問に対して、あまり好意的ではなかった」と報告しています。さらに、(キャリアや能力開発の)成長の欠如は、3人に1人の従業員が退職時の退職理由のトップとして選択しました」。
これらはすべて理にかなっています。成長・発展のための明確な道筋や機会がないのに、従業員は長期的にとどまることを選ぶでしょうか。学習と能力開発に真摯に取り組むことで、会社は従業員の成功に投資する用意があり、その意志があることを従業員に示すことができます。
帰属意識
上記の研究において、フレシアは「入社する人々にとって帰属意識が極めて重要である」と報告しています。入社してすぐに「自分はこの組織に属していない」と感じた人は、最初の6カ月以内に退職する可能性が3倍高いことが明らかになっています。なぜこのような結果が生じるのでしょうか? 私たちの調査によると、属性の違いを考慮しても、従業員が「自分にはこの職場での居場所がある」と感じることで、エンゲージメントが高まる可能性が格段に向上します。そのため、離職率を低下させることが目標であれば、職場における帰属意識を育む文化を築くことが非常に効果的だといえるでしょう。
従業員の離職コストの計算
従業員の離職にかかるコストを理解することは、企業のビジネス面でも、従業員の福利厚生の観点でも非常に重要です。しかし、具体的な数値がなければ、離職率を改善し、従業員体験を変革するために必要な従業員エンゲージメントの取り組みに対して、経営陣の賛同を得ることは難しいでしょう。
残念ながら、離職コストの算出は簡単ではありません。計算には多くの変数を考慮する必要があるからです。例えば、営業チームと法務チームにおける平均給与と離職率を以下のように仮定してみます:
営業:平均給与9万ドル、離職率20%
法務:平均給与20万ドル、離職率4%
この場合、2つの部門を個別に分析するか、それとも全社の平均給与と離職率に統合するかを決める必要があります。前者の選択肢はより正確ですが、時間と労力を多く要します。一方、後者は理解しやすい反面、一部の部門に焦点を当てる際には、実情と乖離しているように感じられるかもしれません。
さらに、離職コストの見積もりには大きな幅が存在します。私たちの調査によると、この幅は従業員の給与の30%から200%に及びます。このばらつきは、企業が離職コストを計算する際の大きな課題となっており、その背景には以下のような関連コストの多様性があります:
求人サイトへの広告掲載
採用や人材紹介会社の手数料
採用候補者にかかる試験など
他の従業員のエンゲージメントへの影響
他の従業員の退職意向への影響
生産性の損失
組織の現在の目標達成能力や将来の目標実現能力への影響
ミスの発生可能性の増加
採用面接プロセス
新しい設備の購入
特に、離職コストは退職する従業員の種類によって大きく異なる可能性があります。例えば、勤続年数が長い幹部社員の離職は、入社1年未満の個人貢献者(一般社員)の離職よりも明らかに多くのコストを伴います。そのため、優秀な人材を確保し、離職コストを削減するためには、従業員がなぜ退職するのかを理解することが重要です。
Culture Ampでは、予測分析を活用して離職予測を作成することで、貴社の離職コストをより簡単に理解できるよう支援しています。この予測データ、業界の平均給与、離職にかかる平均コストを活用することで、個別にパーソナライズされた離職コストの見積もりを提供します。これにより、効果的な人材保持戦略の策定をサポートします。
組織文化を大切にすれば、必ず人材を定着する
もし従業員エンゲージメントが経営幹部の関心事になっていないなら、今すぐその優先順位を見直す必要があります。離職は大きなコストを伴います。エンゲージメントの高い文化は、優れた人材を引き寄せるだけでなく、最も優秀な従業員を会社に留める助けとなります。
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