そのむこうへ Over the Night Sea.0008
誕生日の朝に見る夢
まどろみで掴む感触
はっきりとその温もりが
その手に残る
あの日の温もり
双丘を弄び
二つの影が限りなく近づく
そのむこうにはどうしてもいけず
リップクリームよりも薄い膜が
二人を隔て
それはこちらとあちらを隔たる
海と同じ
生物と無生物の間を漂う輩は
人々の閉ざされた小箱を占領し
戸の建てられない口に戸を建て
それは目と耳を覆うばかり
良心と真実の呵責に耐えかねたものだけが
罵声と非難を浴び自衛する
立ち回る術を心得たモノだけが
必要な時に
必要な場所で
必要なことをする
立ち回る術に長けると
心の在り処を失い
心の在り処を剥き出せば
社会での立場が消え入りそうになる
嗚呼、たかがアミノ酸の塩基の配列が
100兆個と60兆個の個体を脅かし
ますます負に落ちる
太陽と月が入れ替わり立ち変わるまに
中間を漂う脅威は変化し
人々の免疫を脅かす
仮面を変えた
社会の同じ調べを奏でる力は
煽りと寂しさと嘘を携えて
駆け抜ける
嗚呼、誰が益を得るのか。
導かれる応えは一つ