エラリイ・クイーン「九尾の猫」
10月になりました。月が替わったら読者メーターのまとめとともに印象に残った作品について書き記しておく。
2024年9月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2152ページ
ナイス数:62ナイス
9月は漫画8冊とその他2冊。
まぁ、こんなもんでしょ。たくさん読んでた頃と比べるといろいろ他のこともやってるから。それにnoteで他の方の記事を読んでる時間も増えてる。
さて、今回はエラリイ・クイーン「九尾の猫」について書いておきます。
エラリイ・クイーン初読み。作中にエラリイ・クイーンというミステリー作家が探偵役として登場するのね。本物のエラリイ・クイーンは従兄弟2人の共作ペンネームだそうで。
舞台は第二次世界大戦後のニューヨーク。5件の連続絞殺事件が既に起きていて、市内が恐怖に張りつめているところから話は始まる。被害者に共通点や接点はない。犯行に使用されたのがインド原産のタッサーシルクの紐で、男性被害者の紐の色は青、女性被害者はピンクということ以外、犯人の手掛かりはない。
次は自分が殺されるかもしれないという恐怖、一向に犯人を捕まえられない警察の不甲斐なさに、市民は苛立つ。
遂に警察は作家のエラリイ・クイーンにも協力を要請する。
作中のエラリイ・クイーンは父親が警視で、過去の事件(過去作品)でも真犯人をつきとめた実績がある。アガサ・クリスティのポアロはちょっとやそっとじゃ動じない落ち着きがあるが、エラリイ・クイーンは神経質で多少せっかちな性格に見受けられる。しかし頭は切れる。ここでも一見無差別に見える犯行にある法則を見出し、そこからの推理にはゾクゾクした。
まぁツッコミどころがないとはいえないが、十分楽しめました。ミステリーにありがちな、犯行の動機にがっかりさせられることもなかった。
ちなみに何故「九尾の猫」というタイトルなのかというと、話の中で新聞社が連続殺人事件の記事で犯人のイメージに猫のイラストを載せ、やがて犯人は“猫”と呼ばれるようになる。最終的に猫による犠牲者は9人に達してしまう。ということで「九尾の猫」なのです。
1949年発表の作品。戦時中に病んでしまう人、病んでしまう社会が在ることを訴えたい作者の気持ちも、作品から強く感じました。
最も気に入った台詞が「群れは無力であり、無知は恐怖を育てる」。
ついでに要らん報告ですが、佐藤友哉「転生!太宰治」を完結まで読み終えました。2巻で終わりかと思ってたのにいいところで to be continued… 仕方なく3巻も読むことに。
「転生!太宰治」について前回書いた記事がこちらです▼
で、読み始めてみたら2巻の終わりから話はスキップして時はコロナ禍。タイトルも「転生!太宰治ファイナル コロナで、グッド・バイ」(2021年発刊)
2020年の緊急事態宣言の最中、太宰が「これじゃまるで戦時中の日本に逆戻りじゃないか」と嘆くところはにわかに同意。
目に見えぬ恐怖に怯え、国の号令で自粛生活を強いられる図は、確かに戦時中に似ていたかもしれない。
ほんとにあの時はいつまでこんな世の中が続くんだろうと思って過ごしてましたが、コロナ禍もすっかり過去のことになりつつありますね。周りではまだコロナに罹る人時々いますけど。
ちなみに話の内容のほうは3巻になるともうひとつで、太宰治が現代社会を目の当たりにしたら…の面白エピソードも、2巻までで出尽くしてしまった感。でもまぁ最後まで読み切ることができてよかった。