詩誌La Vague創刊にあたり
◆新たな詩誌を作りたい
詩誌を作ってみたい。
いつからか、そう思うようになりました。
この詩誌の発起人、そして今回の記事を書いているのは「雪柳あうこ」という者です。
小説を長く書いてきました。詩を発表し始めて3~4年ほど経ちます。いくつかの賞を頂き、2021年に第一詩集を出版しました。それ以外にも、noteや同人誌などにも詩を寄せています。
詩を発表する場がないわけではない。
それでもなお、新たな詩誌を作ろうと思ったのか。
それは、ふとしたときに、「この詩はどこに出せばいいだろう」と考えることが増えたからでした。
◆多様な声と、その表現を求めて
女性というアイデンティティに深く根差した詩は、時に行き場を失うような心地がする――。
わたしが詩を書くようになって数年。詩という自由な表現形態だからこそ、いろんなことを表現できるようになりました。その一方で、行き場のない詩が自らの中に生まれるようにも感じ始めました。だからこそ、詩のかたちにしか成り得ないものを、未だ十分に拾われてこなかった声を安心して出せるような場所を作れないだろうか、と思ったのです。
「わたし(たち)」の視点から出発し、表現されることばをしなやかに受け止め、表現の多様さを追求できるような詩誌を。ここでしか言えないような話も、切実な訴えも、ちょっとした笑いも、一緒に載せて考えていけるような。
何より、書き手にとっても読み手にとっても、今を生きることを「楽」しく、ときに「楽」にするような。
そんな詩誌を作ってみたい、と思ったのです。
◆紙面とウェブ、そしてコラボレーションを
創刊にあたり、第一には、詩誌を手に取ってくれる人が増えて、そして詩誌の中で生まれることばが世に広がっていくことを願っています。まずは詩に描かれた「わたし(たち)」の想いや経験を問い、模索できるようなつながりを。
けれども、「詩誌」というかたちは、今とこれからに即しているのか。あるいは、適しているのか。
創刊にあたり、そのことも考えていました。
ひとまずは「詩誌」というかたちで、詩を集めて出発します。ですが、詩誌の創刊後は、詩はもちろん、詩を基にした多様なコラボレーションも同時に求めてみたいと思うのです。情報・通信・コミュニケーションのあり方の変化の大きい昨今であるからこそ、noteやSNSも活用し、Web媒体を通じた多様なコラボの形を模索していきたいなと。
詩を書く人はもちろん、詩を書かない人や詩を読まない人とも何かを生み出せるような、柔軟なあり方を試行錯誤してみたいと思っています。
◆「波」そして「うねり」となって
詩を書く人はご存じとは思いますが、かつて「現代詩ラ・メール」(La Merは「海」の意、1983~1993年)という名を持つ、女性たちによって創刊された詩誌がありました。
今が「海」の先にある時代なのだとしたら、現代の書き手であるわたしたちは、広がることばの海をどう拓いていけるでしょうか。
そんなことを考えながら企画を練っているうちに、今を生きることに真摯で、現代の歪みや自身の感覚を的確に描くことのできる詩人たちが集まってくれました(次回の記事以降、寄稿者を一人ずつご紹介します。お楽しみに)。
わたしたちはこの詩誌を「La Vague(ラ・ヴァーグ)」と名付けました。
ラ・ヴァーグとはフランス語で「波」、そして「うねり」の意味です。
その名の通り、時代に即して変わり続けながらも、常にしなやかなことばであり続けることを願って、この詩誌を始めたいと思うのです。
詩誌La Vagueは、この春、形となって生まれます。
最初は小さな波でしかありません。それでも、読んでくださるあなたの心に触れ、その感情のうねりの一端となることばたちでありますように。
そしていつか、あなたの想いも、この波に預けてもらえるような。そんな媒体になれることを願って、変化し続けていきたいと思います。
La Vague 雪柳あうこ