【エッセイ】彼女の「詩」 野宮ゆり
私にとって一度も読めず、これからも読めないだろう「詩」がある。
十年前に病で亡くなった友人の「詩」だ。
彼女は静岡の高校を卒業後に関西のデザイン学校に進み、そこで私と出会った。
彼女は造形以外の創作についてひとことも触れなかった。
ホスピスで亡くなったその日に彼女の遺体を運ぶ車を待つ間、彼女の兄との雑談のなかで詩作の過去をしらされた。
作品は静岡の実家にも残っていない様子だった。
もう決して見られない花のように
彼女の詩という言葉が今も私のなかで幻のように咲き続ける。
※野宮ゆりさんが詩「私の蛇」「貝に眠る月」を寄稿された詩誌La Vague vol.0はこちらより購入できます。
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