一平の鯖寿司。
僕が子供の頃から、ずっと変わらない味がある。
一つは、もちろん一平寿しの代名詞でもある「元祖レタス巻」。一平寿しは、創業以来50年以上、ずっと毎朝自家製のマヨネーズを作る。お店の2Fに住んでいたので、食卓に魚のフライや揚げ物が並ぶ時には、レタス巻き用のマヨネーズが出されていた。
酢飯と醤油に合うようにチューニングされた、”レタス巻き専用”マヨネーズなので、そのまま舐めるとドレッシングのような淡い味わいで、僕はこれにウスターソースを混ぜてたっぷりとフライに付けて食するのが好みだった。
もう一つは、鯖のバッテラ寿司である。
白板昆布を甘酢に漬け込んで下準備する。その匂いを嗅ぐと幼少期の記憶が蘇って、懐かしくなる。父の仕事用の前かけや白衣に染み込んだシャリの匂い、そして小学校から帰ってきて扉を開けた時に漂ってくる仕事場の匂い。それに似ている。
一平寿しの昔からの常連さんには、この鯖バッテラ寿司のファンが多い。
〆た鯖と、甘く漬け込んで旨みの凝縮した白板昆布、その間に薄くスライスしたレモンが挟んである。シンプルだがバランスが難しく、鯖の仕入れ時期にも依る献立なので、いつもあるわけではない。
そうそう、実は子供のころからの思い出の寿しはもう一つあるんです。シンプルだが仕込みに手間がかかるそのお寿司は、いつの頃からかメニューから外れてしまったのですが、いつか復活させてみたいと思っています。
この話は、またいつかの機会に。
二代目一平
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