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何にいくらまで出すか?値段の線引きを見つめてみた

バナナは一房100円台で買いたい。同じく牛乳や卵も。けれど最近は、どちらも200円台で買うことが多いかな。

住む地域や選ぶ商品によって値段に差はあれど、多くの人がこんなふうに、おおよその脳内希望価格を持っているのだと思う。

食べ物の場合、その年の収穫によっても値段が変わる。最近はキャベツと米が高いと話題だ。米は高くても主食なので買っているが、キャベツは一玉300円以上だと私の心はストップをかける。ふと、品物によって「〇〇なら〇円まで出せる」と無意識にしている線引きが、とても面白いと感じた。

先日、いつも「バナナは一房100円台のもの」と決めてかかっている私の概念を覆す出来事があった。一房(3本入り)300円のバナナに心奪われたのである。いつものバナナのおよそ倍の値段なのに。

なぜ突然、倍の値段もするバナナに釘付けになったか思ったかと言えば、今まで目にした、どのバナナよりも大きかったからだ。それはまるで、道を歩いていたら、ふいに身長3メートルの方とすれ違ったような。「えっ!!こんなことって!!」と心で叫ぶくらいの大きさだった。

私は初めて目にした商品だったのだが、その商品は田辺農園のバナナで、Xやネットでも大きさや美味しさが既に話題となっていた。

「このチャンスを逃したら、近所のスーパーで出会う機会は無いかもしれない」私は心の声に従って、少しリッチに冒険してみることにした。

家に帰って家族にバナナを見せると「えぇぇっ!!でか!!」と一同大興奮。「そうでしょ、そうでしょ」と田辺農園の関係者でもないのに、まるで私が育てたかのように嬉しくなる。「でかした」と夫は言い、「バナナの美味しさは大きさに比例する」と、それっぽいことまで口にし始めた。(真偽は不明)

実際に一口食べてみれば想像以上の美味しさに、しばらく話すのも忘れてしまった。もっちり、ねっとり。加えて、甘さと酸味のバランスが抜群なのだ。

「いつもの倍の値段」と思ったけれど、大きさが大きさなので、4人で2日に分けて食べることができた。量や味、食感の満足度を考えればコスパも良いのかもしれない。

田辺農園バナナは「バナナは100円台のもの」と決めてかかっていた私に新たな視点を与えてくれたのだ。


そしてその翌週。私はドラッグストアで、適当なトイレットペーパーを探していた。私のなかでの適当なトイレットペーパーと言えば、12ロール300円から400円ほど。かつ、肌ざわりが良さそうな商品であることが条件となる。しかしそこで、私の目に予想外の商品が飛び込んできた。

『白檀の香り』12ロール1,190円

なんと、私がいつも購入する商品の3倍以上の値段ではないか。「尻セレブ」心の中で叫んだ。無意識に口も動いてしまっていたかもしれない。使い方を考えれば、鼻セレブよりさらにセレブな感じがする。

「さすがにトイレットペーパーに3倍はなぁ」と強めのブレーキがかかる。つい最近のバナナの経験がよぎる。でも……。結局、私がこの『白檀の香り』を買うことはなかった。

この日から、ふとした拍子に私の頭に『白檀の香り』が浮かぶ。まず、脳内で1ロールあたりの値段を計算した(約99.2円)。次にAmazonで口コミも調べた。口コミは想像以上で、気になり度はさらに加速した。

白檀が一体どんな植物で、香りはどうなのか?詳しく知りたくなって、アレコレ検索する。「1ロールだけバラ売りで試しに買えたら良いのに」

肌ざわりはどうなのか?
表記の【高貴なかほり】とは?
どれだけ【おしりにやさしい】のか?

気になる気になる気になる。

『白檀の香り』は4ロール入り商品も展開していて、確か500円ほどだった。私はあの日から1日5分以上『白檀の香り』のことを考えている。総時間にすれば30分以上だ。私の住んでいる町の現在の最低時給が1,023円。30分なら約512円。4ロール入りなら、もう買えている。買えているほどの時間を私は『白檀の香り』に費やしているのだ。

でもトイレットペーパー12ロールに1200円。やはり私の心の境界線は購入を引き止め、そのたびに「何事も決めてかかってはいけない」と田辺農園が諭す。

『白檀の香り』と出逢って10日経った今、まだ購入には至っていない。しかしこれ以上、私の脳を『白檀の香り』が掴んで離さなければ、ここnoteで尻レポをする日も来るのかもしれない。



↓値段との葛藤はコチラのエッセイでも

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