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【PREP書評】学力の経済学【中室牧子】
読書の世界をもっと楽しみたい、でも何を読めばいいのかわからない――そんなあなたのために、「PREP書評」をご提供します。
この企画では、私が読んで勉強になった本の概要やポイントをわかりやすく紹介し、皆さんの読書、noteやブログの執筆に役立ててもらうことを目指しています。
具体的には、「PREP手法(Point(主張)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(再主張)」を使って、本の魅力を分かりやすくお伝えします。
今回ご紹介するのは、中室牧子さんの『学力の経済学』です。
Point(主張)
教育は「思い込み」や「個人の成功体験」ではなく、エビデンスに基づいて行うべき
私たちの身の回りには、いろんな教育法があふれています。
「東大合格○人を出した家庭の秘密」や「子どもを甘やかすとダメになる」というような極端な情報を目にすることも多いですよね。
ただし、『学力の経済学』を読むと、そうした個人の成功体験に頼ったり、“昔からこうだから”という思い込みで子育てや教育をしていると、どうしても根拠が弱くなってしまうと痛感させられます。
だからこそ、この本では教育経済学の知見をベースに、科学的・統計的に「効果があること」と「効果が薄いこと」をきちんと見極めていく必要があると強調しているのです。
Reason(理由)
データ分析や実験の結果から、少ないコストで最大のリターンを得られる教育法がわかる
著者の中室牧子さんは「子どもの学力を上げる要素や仕組み」を、経済学的なアプローチで明らかにしています。
たとえば「親が使えるお金や、親自身の学歴が最も子どもの学力に影響を与える」という話は、よく議論の的になりますが、それだけではなく「ご褒美で釣る」ことや「褒め方を工夫する」ことなど、身近な育児・教育行動にも驚くほどさまざまなデータがあるのです。
ここを踏まえると、思い込みだけで「ご褒美は良くない」と判断してしまうのはもったいないし、「本当に少人数学級ってそんなに効果があるの?」という疑問にも明確な答えを出せるようになります。
つまり教育経済学を活用することで、同じお金や時間をかけるならば、その成果がより高くなる方法を選ぶことができるわけですね。
Example(具体例)
ハーバード大学のフライヤー教授による「ご褒美」の研究が、その代表的なエビデンス
私自身、子どもにどうやって勉強のモチベーションを持たせればいいのかと悩むことがありました。
特に「勉強すればおやつがもらえる」といった“ご褒美”で子どもを釣るのは、子どもの内発的なやる気を奪ってしまうのではないか……と懸念していたのです。
ところが、本書のなかで紹介されているフライヤー教授の研究では、テストの結果など「アウトプット」に対するご褒美ではなく、「宿題を終える」などの「インプット」に対するご褒美を与えることで、学力が上がるというデータが示されていました。
実際に私も、子どもが宿題を終えたり、何かを成し遂げたタイミングで「小さなご褒美」を渡し、テストの点数に関係なく過程をほめるようにしました。
まだ「これが正解だ!」と断言はできませんが、少なくとも子どもたちが「勉強って意外と楽しい」と感じる場面は増えたように思います。
これだけでも、一つの有効な教育の指針になりそうですよね。
同様に、「質の高い先生に教わると子どもはぐんぐん伸びる」「少人数学級には費用対効果が低い部分がある」など、意外な結論も含め、本書では多くのエビデンスが整理されています。
たとえば少人数学級を導入しようとすると大きな予算がかかるけれど、たった一枚のプリントで「学歴が将来の収入にこう影響するんだよ」と伝えた方が、よほど学力が上がる例もある、といった話は本当に面白いです。
「なるほど、子育てや教育って思ったよりもロジカルに考えられるんだな」と目からウロコが落ちる思いでした。
Point(再主張)
今こそエビデンスを味方につけて、子どもの未来をもっと豊かにしていきたい。
『学力の経済学』は、いわゆる「評論家」的な主観ではなく、データが示す結果を淡々と提供してくれるのが特徴です。
だからこそ、どうやって子どもの非認知能力(自制心ややり抜く力など)を伸ばすか、誰に教わるか、どのタイミングで教育に投資するか――こういった疑問に対し、非常に説得力をもって「使える情報」を与えてくれます。
もちろん、家庭ごとに事情や子どもの個性は違うので、すべてがピッタリ当てはまるわけではないでしょう。
しかし、あらゆる教育・子育ての意思決定に「エビデンス」という新しい視点を持ち込めば、これまで見落としていたヒントや解決策が見つかるはず。
子育て当事者だけでなく、教育に興味のある方全般に読んでみてほしい一冊です。
きゅうさんの本棚:さらに本書に興味をお持ちの方へ
この記事をお読みいただき、さらに『学力の経済学』に興味をお持ちになった方は、お近くの書店やオンラインストアでおすすめの本を手に取ってみてください。
きっと理解が一層深まることでしょう。
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