受講生のライフスタイルに目を向ける
皆さんはご自身が主催する講座や研修の受講生が「普段どんな生活を送っているか?」をどれだけ知っているでしょうか?
実は講座の学習カリキュラムや教材を設計するうえで、「受講生のライフスタイルを把握すること」はとても大切な要素です。
というのも、どんなに優れたカリキュラムや教材を準備したとしても、それが「受講生のライフスタイル」にフィットしていないと「機能しない」ということが起こり得るからです。
どういうことか。
以前、このようなケースがありました。
わかりやすくするために、事例の背景を少し一般化してご紹介します。
・・・
ケース|看護師向け研修テキストの作成
《研修テキスト作成の目的》
系列病院全体で看護師として共通して必要な「○○スキル」を底上げすること
《それまでにやっていた取り組み》
研修担当者が「マニュアル形式のテキスト」を作成(Wordを使用。100項目超)
完成したWordファイルは、プリントアウトして分厚いファイルにファイリング
ファイルは、看護師がいつでも手に取って閲覧できる書棚に設置
当該テキストの作成&設置を周知し、活用を促進
《課題》(コンサル時のご相談事項)
「せっかく作成したテキストがほとんど活用されていない」
・・・
こんなケースでした。
実はこの課題、「教材あるある」です。
使ってもらえない原因はどこにあるのか?
このような場合は当然「なぜ活用されないのか?」の原因を考えるところから始めます。
テキストの存在の周知が十分でないから?
必要性を感じてもらえていないから?
閲覧/活用は任意で、強制ではないから?
内容が難しすぎるから?(そもそも内容を見てもらえていないのでこれが理由ではないはず)
…といったいろんな見方ができるのですが、最終的にはこんなところに課題があることが明らかになりました。
「そもそも看護師が働く環境には、書棚から取り出した分厚いフォルダを机の上に広げて、椅子に座ってゆっくり読む…という時間と場所がない」
想像してみれば「確かにそうだ」と納得する内容です。
そのような活用をしてもらうための「時間」と「場所」が物理的にないのであれば、そのフォルダにどんなに必要で有益な情報が詰まっていたとしても、閲覧してもらいようがないのです。
どのようにリニューアルしたか?
そこで、このケースにおいてはこんなリニューアルを行いました。
Wordで作成したテキストの項目はそのままに、「スマホで閲覧できる形式」に変換した。
スマホで閲覧しやすくするために、文章量は大きく圧縮した。
つまり、看護師さんたちの「日々の働き方・過ごし方」を考慮し、その環境下・条件下で活用しやすい形式に変えた、ということです。
その結果、どう変わったかというと…
仕事中にテキストを閲覧したいシーンに遭遇したら、隙間時間を使ってスマホで検索&内容を確認
気になることは、通勤中や帰宅後にスマホを使って検索&学習
という活用スタイルが定着しました。
とてもシンプルな解決策ではありますが、意外と盲点だったりします。
というのも、私たちが「教材」や「テキスト」を考えるときの第一選択肢が、どうしても「紙」や「冊子」に寄っているから!なのかもしれません。
教材戦略ラボでは「紙」や「冊子」といった【アナログ教材の力】を有効活用することを提案しているのですが、決してすべてのケースにそれが当てはまるわけではありません。
この事例のように、「受講生の属性やライフスタイルに沿うように」または「ライフスタイルに馴染むように」という視点で検証した結果、「教材の形式をアナログ→デジタルに変換する」という対応が有効なケースもあります。
このケースからわかること
この事例においては、
「そもそも看護師が働く環境には、書棚から取り出した分厚いフォルダを机の上に広げて、椅子に座ってゆっくり読む…という時間と場所がない」
ということに気づけたことが転換点となりました。
このように、講座の学習カリキュラムや教材を設計するうえで、「受講生のライフスタイルを把握すること」はとても大切な要素です。
自分が主催する講座や研修の受講生は…
毎日どれくらい学習に時間を割ける人たちなのか?
その学習時間はいつなのか?(例:朝の仕事前、仕事時間中、仕事終わり、寝る前…etc.)
連続した学習時間なのか? それとも隙間時間なのか?
それらの時間は普段は何に使われているのか?
その学習はどんな場所で行われるのか?(例:自宅、カフェ、職場、電車の中…etc.)
その人たちが一番よく使うデジタルデバイスは何なのか?(例:PC、タブレット、スマホ…etc.)
一人で集中して学習する環境がある人なのか? ない人なのか?
このような視点で「受講生のライフスタイル」を眺めてみることで、「カリキュラム(学ばせ方・学んでもらい方)」や「教材の姿・形」の最適解が見えてくるものです。
カリキュラムや教材をゼロから設計するとき
カリキュラムや教材をリニューアルするとき
にぜひ取り入れていただきたい視点です。
参考にしてみてください!
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