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アニメ『ばいばい、アース』の感想──ついでに原作カットによる分かりにくさを全力で補足解説する記事⑤

はじめに

 とりあえず10話は4話分くらいの内容を1話にまとめた感じです。ですが9話ほど雑なカットは少ないのでまだわかりやすい。お気づきでしょうが私の心は既に折れています。アニメおもしろい?

2期がたのしみだなー(棒)

前回までの記事



第10楽章

アドニスがドランブイに会う場面からスタート。

 そういえば飢餓同盟って何?となる人もいるでしょう。一応、1話と2話でチラッと「この世を楽しめなくなったやつら」説明が入ります。出現時に唱えているのは「NO WHERE」で作中で「無何無郷」ともいわれています。何処にも行けない、何処にも居られないという意味をこめて唱えているそうです。原作では「飢餓同盟」と書いて「タルトタタン」と読ませます。

私なりの解釈になりますが「偶然」が何かしらないまま「偶然」を求めている集団。彼らの言う「この世」は神の定めた<法>の下って意味ですので剣楽や外や内、正義や悪といったものに疑問を持ってしまった人たち。でもそれをどうにも出来ないので<都市>には居られず、かといって向かう先すら分からず、その原因たる所以の答えに飢えているみたいな感じです。

名称とその読みについて。「飢餓同盟」は安部公房先生の同名作品からで、真実を求めて閉塞感の打開を試みようとして狂人扱いされた集団。「タルトタタン」はアップルパイを焦がした失敗作から出来たお菓子から。色々と意味が掛かってて暗示させるものがあります。前者はわかりやすいけど後者は知恵の象徴の林檎が材料で、ある側面(神側)から見たら失敗だが別の側面(パラダイス・シフトとか)から見ると成功に近いみたいなね。

ちなみにアドニスに出されたウェルカムドリンクは林檎ジュース。災いの種アップルシードってドランブイは呼んでました。


 アドニスの貰った剣は錆びた弦を寄り合わせたもの。植物を枯らしたり、物を壊すための演奏に使われ、自らの演奏で自らを枯らし錆び果てさせてしまった楽器の弦です。枯れ果てた剣にアドニスの腐敗、マイナス×マイナスでプラスに転じて成長するぜみたいな……たぶんそんな感じ。

 シアン登場。そんでアドニスの<教示者>になりました。

出会い頭にアドニスをぶん殴るシアンはカットされました。アドニスが反応できない&一回転する勢いで殴りました。理由は「俺の娘に手をだしたから」。アニメだと未遂で終わってるから殴られずに済んだみたい。良かったねアドニス。ちなみに修行シーンもアニメではシアンの厳しさ減です。横腹キックも傷口を狙い浮き上がるレベルだったのにアニメでは小突く位でした……ほんと良かったねアドニス。

 ベルパート開始。なんとかアドニスの家から自分の部屋に戻りました。原作では仕切りに唾を吐いたり、帰宅後は何度も入浴を繰り返すなどかなり痛々しい状況でした。

ベネット邸を訪れた際にベネディクティンの顔が重なる演出は良かったと思います。同姓に助けを求めたいって気持ちがわかりやすい。ただ、言わせて貰うとアニメだとベネットとベルの間柄がいささか省略され過ぎていていまいちピンと来ないと思います。

ベルの訪問~ギネスとベネットの会話ですが9話の王とベルの会話くらいカットされています。しかもかなり重要な部分。おにぎりで言えば米と具くらい重要な部分が抜けてます、つまり海苔しか残ってない。ということで補足はじめまーす。

入り口から入ってこないベルを促したけど、ベルにぎこちなく断られるベネットはカット。ギネスとベネットの会話ですが両者の現状と心境を深く話して居ますが全カットされました。前回の王の会話ともリンクするないようなのですが、いかんせん王の会話もカットされているので巻き添えかもしれない。

 ベルが去ってから二人は安息日(ベルが王を訪ねた日)に数人の剣士が死んだという話をします。ギネスは役職が上がって知った戦いで死んだ剣士の大半は玉座の間の地下にある<根の国>に葬られているということを話す。さらにその剣士達はアドニスが殺したのではと推測。さらに城ではアドニスを弟王する噂があるとも。続けて妹王にベルが指名されるのではないかという考えをベネットに伝えました。ベルがあまりに異質なので囚えるのが妥当な考えだろうと。

それを聞いたベネットは自分の腕が上がる程に彼女の守りかたと支え方が判らなくなってきた。<旅の者>になるという前提があるのでそばにも居れない、ただアドニスならこの国に限っては彼女の助けになれると思ったから身を引いたと吐露しています。

 ここから本題に入ります。彼らは「ある計画」を立てていてそれをアドニスとベルに伝えるつもりでした。ギネスはベルとの出会いとオン・ザ・ロック亭で聞いた歌によって全てが変わってしまったと語ります。具体的に言えば神の<法>の外側の生き方に触れて知ってしまった。カタコームで墓地を焼いた際に、神が定めた範囲を越えて脚本を作って実行できてしまった。その事実が新しい生き方を示せと自分を駆り立てていて、それこそがベルにしてあげられる出来る精一杯だと。その計画の末に、都市に居ながらにして<旅の者>に近い生き方をベルに見せたいと。

補足です。カタコームの一件は神はあくまで<正義>と<悪>の戦いを剣楽として指定したのに、共闘してティツィアーノを倒すという神の命令以上のことを出来てしまったのに加え、心の拠り所たる墓所を破壊してまで自分は生き残る価値があったのか、いや生き残ったのだからそれだけの価値を示さなければならないという使命感みたいなもの。ベルに見せたいってのは自分達も<旅の者>に足りえる可能性もあるし居る場所は違えど志は一緒と伝えて、安心して旅に出て貰いたいって感じ。

そしてまさに前回王が言った(アニメではカットされたけど)「唸りに影響された者」がギネス達ですね。

 ベルが急遽参加した戦闘の場面へ。ここもかなりキャラ心情に関わる部分がカットされました。原作ではカシスの件から黄色ローブの神官に剣を貸そうとしたり、現場の剣士から二人が信頼に厚い様子が書かれています。ちなみにベルも階級にとらわれない行動と強さで下級剣士からは凄い人気者になっていたりします。

ベルは心身ともに状態が悪く劣勢になって深傷を追って戦線離脱。アニメではここで終わっていますが原作では、直後に亀に乗った二人が救援に駆けつけてましたがその隙をついてミストがギネスの指揮剣を切り砕いています。ベルがすかさず援護にはいりギネスの仕掛けた川を決壊させる水攻めでなんとか勝利しています。ここまではまぁカットでも良いかなと思いますが、その後のベネットが傷の手当てをしようと手を差しのべたのを「ごめん」とうつむいて拒否するベルのシーンは残すべきだったと思います。

 眠るベルの部屋の外での二人の会話。アニメで一番ワケわかんない会話だと思います。なんかいきなり傷の話して「あなたにしか出来ないよ」みたいに言ってるので。この会話の真意に通じる大部分が、彼らの関係性や性格などがカットされ続けた為に察することが難しくなっています。この会話の前にベルに拒否られたベネットがギネスに八つ当たりするのも当然カットされているので「助けになりたいのになれない苛立ち」も描写されていない。

原作ではわりと直接的にもう片方の目を潰せ的に伝えています。どうしてかって2期のおたのしみ(2期自体が楽しみじゃないは禁句)



 再びアドニスパート。修行の合間にシアンとドランブイの過去が挿入されます。

回想については割と判りやすくスッキリとまとまっていたと思います。どうしてこれを今まで出来なかった……。それでもかなり情報が削られているのでその部分を付け足していきます。

当時のシアンは最強の剣士であり弟王で神官、当時から<教示者>エノーラ。なんで<教示者>エノーラをやっていたかというとその間は自由に剣を振れるから(神官は自由に剣つかえない)。途中で殺しちゃってたのはガフの兄弟で聖灰が間に合わないくらい重傷追わせた。そんで、それは罪に問われなかったのは「シアン(教示)に過ちは許されない」から。つまり死んだならそれはそいつが力不足だし、残されたガフにとっては兄弟の死も教示の内ですみたいな考え。シアンは当然苦しんでさらに<教示者>エノーラの務めからも逃げられなくなった。このときから<法>のあれこれに疑問を持ち始めた。

ドランブイですが、未来の形を剣にすることが出来る力を持っている認識でオーケーです。神の樹にさわって驚いたのは滅びというか「神が未来を潰す」という未来を見ちゃったから。実際にギブソンを<魔>に落として彼とその剣の未来を潰しましたしね。彼女はそっから神の樹に疑いもって未来に飢えたので飢餓同盟入りしました。原作だとドランブイは全身に自分が作った剣と同じスペルを刻んだり焼き印していたりしてます。

兄王とか妹王とかありますが、単純にこの国にはペアが2セット存在するくらいの認識でオッケーです。ローハイド王とその姫、シアンとドランブイでしたが今はローハイド王以外は城に居ません。ガフとシェリーが現在の兄王と姉王候補です。

 ガフとシアンの修行が続いていますが物語の根幹に関わる会話がカットされてます(何度目だ)。ながいので列挙

・剣士が剣ばかり使うようになったのは役割演技ロールプレイングのせい
・世界はまだ未来を受け入れるには幼すぎる
・理の少女は新しい世界をもたらす
理の少女の裏には機械仕掛けの神デウス・エキス・マキナを遣わした真の神がいる

こんな感じで、理の少女についてアドニスに教えていました。

アドニスがベルの仕草や女っぽくない服装、旅に出ようとするのはシアンを倣っていると指摘したのもカット

 ドランブイとアドニスの会話もかなりカットされたけど、こちらはそんなに重要じゃないです。アドニスが母乳飲んで泣く赤ちゃんプレイとかね。あとベルの<唸る剣>ルンディングは生まれる前の鋼で未然形アンテ・フェストゥムに作っていて、<錆びた爪>ラスティネールは錆び果てた鋼で已然形ポスト・フェストゥムに作ってある(対になるように)とか。

 最後はアドニスが飢餓同盟に正式加入して1期終了です。

飢餓同盟の面子ですが、本来はみんな最後に出てきた<牙>と呼ばれる人たちのような見た目しています。アニメだと作画コストの関係なのか大半が骸骨みたいな見た目してますけど。なのでああいう化物じゃなて、色々あって身体にスペル刻んだり部位を削ったりしたひと(獣人)です。


さいごに


 ここまでくると特にないっすね。

嘘、いっぱいあります。とにかくキャラクターの心情や行動を削りすぎてなぜそうなったかが全然伝わっていなくて、とにかく全部が薄っぺらい。ベネディクティン/ベネットが一番被害を受けていて、原作読んだ人ならば山場のひとつに選ぶであろう場面がなんの感動も感慨もなくただ消化された。ギネスもただの飲んだくれみたいな感じになっちゃうしなんだかなー。原作で響いていた言葉もその過程もなくただしゃべっているだけで乾いている。全体的に何を言っているのかわかりにくい会話なのは原作もなんだけど、会話と説明カットしてるせいで余計に拍車かかっているのがもったいない。

なにより後半に繋がるであろう伏線や心理描写もまるまるカットされているので、今後はさらに説明不足感が漂う内容になると思う。たぶん1期で省いたように見えたけど構成で2期で説明される、とかもないだろうし。

来年2期だそうです。どうなるんでしょうねー


あ、でも未然形と已然形のところは面白い部分なので別枠で書きます。あと「世界を穿孔」とか。



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