ここ数年で読んだ児童書・YAの感想①
課題図書の感想、本当にただの感想なのにも関わらず、読んでくださったりシェアしてくださった方がいて嬉しかったです。
なので、調子に乗って、この仕事に就いてから読んだ本をいくつか、紹介も兼ねて感想を書いていこうかなと思います。
ごめんなさい、ネタバレしすぎないように気を付けていますが、含まれる本もあります。オチまでは書いていないのですが、ご注意ください。
絵本は好きなんですがぱっと思い浮かばないので、児童書やYA(ヤングアダルト、中高生向け)を中心に。
大人が読んだただの感想ですのでご容赦ください。
(児童生徒に紹介するときはもっとまじめにやるんですが、気楽な感想の場ということで)
新しい読書体験『ぐるりと』
島崎 町 著 ロクリン社
高学年くらい~大人まで楽しめると思います!
結構分厚いんですけど、それはほんの仕組みのせいなので、長いと思わず読んでほしい。
仕組みというのが、本文のページが横線で上下区切られていて、上の段が縦書き、下の段は(上下反転の)横書き。
文末に「本をひっくり返して」的な合図がきたら、実際に本自体をひっくり返すんです。(アマゾンの「イメージを見る」に読み方が書いてあるのでぜひ確認してみてほしい)
ひっくり返しても横書きになってるから、ページの進行方向が同じ。すごくないですか?
縦書きが明朝体で、現実世界での出来事。
横書きがゴシック体で、異世界での出来事。
これは作中でも同じというか、主人公が本をひっくり返すことで、現実と異世界を行き来するので、話に入り込みやすいんですよね。
内容としては、この本と、クラスメイトや家族、異世界で出会った人々が織りなすミステリーでファンタジー、冒険やバトル要素もちょっと入っていて面白いです。
電子書籍版があるかわからないですが、これは実際に本で読んでみてほしい本。
きらきらなファンタジー『ナニュークたちの星座』
雪舟 えま 文 カシワイ 絵 アリス館
本のジャンルを何と呼ぶか迷ったんですが、公式HPでは「文芸絵本」でした。そんな感じですかね。
基本的には小説というか、おはなしの文があるのですが、かなりイラストが占める割合が多くて、漫画みたいなページや、見開きイラストとかもあります。
このカシワイさんのイラストがかわいくてさわやかで、きれいなんですよ…。
お話の舞台は、子どもの目にしか見えない鉱石を掘るクローン少年たちがたくさんいる世界。
その鉱石が様々なものに使われるエネルギー源なので、今までに何万とクローン少年たちが生まれている。
主人公は37922号(22号と呼ばれている)。そろそろ年齢が上がって、石が放つ光が見えにくくなってきているので、卒業することを決め、自分より先に姿を消した23号を探すことに…。
クローンの設定なんですが、彼らにも人権があるし、鉱石掘りをやめたあとも平穏に暮らすことができる世界なので、もろもろ気にしなくても大丈夫。
イラストもあって話は重くなく、読後はなんかすごくさわやかですっきりした気持ちになれます。
この仕事に就いて1年目でこれを読んだんですが、一気に児童書・YAの力を思い知りました。実際、人気でしたし…。
書きながら、同じ雪舟さん×カシワイさんコンビの『凍土二人行黒スープ付き』が読みかけなのを思い出しました。読むか…。
悲しみを受け入れる『うまれかわりのポオ』
森 絵都 作 カシワイ 絵 金の星社
またカシワイさんですね。好きなんですよ…。これは6月に出たばかりで、最近読みました。
作家の母、9歳の子(ルイ)、ねこ(ポオ)で暮らしていたけれど、ポオが亡くなった。
ルイは悲しくて、学校を休んだりして泣き暮らす日々。
最初は一緒に悲しんでいたお母さんは、その姿を見て、ポオとルイが出てくる物語を書いて、ルイに読み聞かせます。
私も犬が家にいて、もう12歳で。亡くなったらほんとに、苦しい…。
動物に限らず、人、植物、あるいはボールペンの1本でも、大切なもの、身近にあったものを失うのはすごくつらいことで、受け入れるのには時間がかかると思います。
ましてやルイのようなまだ9歳の子で、生まれた時から一緒にいたねこならなおさら。
お母さんが作る物語は、ポオは様々なものに生まれ変わって、会いに来てくれるという話。
ルイの心の中には「それってお話じゃん」っていう気持ちもあるし、でも、「そうだといいな、はげまされたな」と思っている自分にも気が付いていていいなと思いました。
お母さんが作家という設定もいいし、ルイが「前と話の流れが一緒で…」みたいなことを言っても怒ったりせず、「だよね、同じだったから展開がわかっちゃうよね」と受け入れてくれる人なのも良かった。
この本も挿絵が結構入っていて、カシワイさんの絵がいい温度感でルイたちを表現してくれている…。挿絵や表紙の力ってすごいな。
AIが発展した先に『ばーちゃる』
次良丸 忍 作 川上 和生 装画 金の星社
続けて同じ出版社(金の星社)の新刊。これもすごいしおもしろかった。
IT関係の仕事をしている母が持ち帰ってきた機械。3Dの映像を映し出し、そこに祖母のデータを入れると、姿や喋り方がリアルになっていく。
「ばあちゃんじゃなくてばーちゃるだね」と父が言ったことから「ばーちゃる」と呼ばれるようになり、家族の一員となるが、ばーちゃるはやがて心を持つようになり…。
AIや3Dの技術が進んで、こういうのももう間もなく出てきそうだなあという時代ですね。
機械に入れるデータは、亡くなったおばあちゃんの写真や日記、カラオケの録音データなどで、孫である主人公の充希がタブレットで送るというのが面白いですね。
学習させるためにテレビ見せまくったり、ベビーカーに乗せて公園やショッピングセンターに連れて行ったり。
リアルになっていく一方で、ばーちゃる自身は「自分はこのおばあちゃんではなく、おばあちゃんを学習した機械にすぎない」ということに気が付いてしまいます。
充希と家族は、そのころには結構親しみを持ち始めていて、急にそんなことを言い出すばーちゃるを心配します。
違う存在とわかっちゃってるのに、おばあちゃんとしてい続けてもらうのってどうなんでしょうね?という問題提起にも感じます。
人権や尊厳みたいな…。
これを読んでから、自分は「機械は機械」って割り切れるだろうかと考えてしまいます。
話自体は、前向きな終わりに感じました。
まとめ
今回は4冊紹介させていただきました。
前回の課題図書は全部大好きというほどでもなく、冊数も多かったので、1つ1つの感想短めだったんですが、今回は好きな本ばかりピックアップしてるので、めちゃ長になった…。
でも、いつもは読んだだけで、感想を吐き出すのはたまにTwitterで呟いたり妹に紹介したりぐらいなので、ここに書くのはいい習慣になるかもしれないな。
次は、大大大好きな児童書シリーズ『アヤシーナタウン』の、3巻分からピックアップした回の感想を書きたいと思ってます。
もう紙にはまとめて書いてあるんですけど、打ち込むのが大変なので、いつになるかしら。