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ドイツで、4つの「シューマン博物館」(Schumann-Haus)に行ってみた話
夏休みなので、趣味に走った投稿です。
6月に、ドイツ各地にあるシューマン博物館(作曲家シューマンが住んだ家)を巡る、世にも地味な旅にいきました。
ロベルト・シューマンはドイツの作曲家で、「トロイメライ」などピアノ曲がよく知られています。
生涯で何回か引っ越してますが、うちツヴィッカウ、ライプチヒ、デュッセルドルフ、ボン(最後に入った精神病院)の全てを見てきました。
興味のある読者は少ないと思いますが、せっかく行ったので書いておきます。
1 クララの展示が多かった! ライプチヒのシューマンハウス
まず行ったのは、ライプチヒのシューマンハウスです。
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ライプチヒは面白い街です。プロイセンでの音楽の民主化が始まった場所、なんですよね。
1700年代に、世界で初めて自主運営のオーケストラができたところです。
「音楽の民主化」を象徴するのが「ゲヴァントハウス」と言われる有名なホールとその管弦楽団。「ゲヴァントハウス」は「織物会館」の意味で、織物の倉庫を使ったんですよね。
つまり、それまで王侯貴族のものだった音楽が、この頃、初めて大衆のものになったのです。モーツァルトの頃とは異なり、ライプチヒでは誰でもチケットを買えば音楽を聴けるようになったのです。
当時指揮者のメンデルスゾーンを中心に音楽シーンが盛り上がっていて、シューマン夫妻もその中にいたわけです。
いわば、音楽の庶民化がはじまった場所なんですね。
さて、シューマンハウスは、ライプチヒの駅から10分ほど歩いたひっそりした一角にあります。
ここには、ロベルト・シューマンとクララ・シューマンが大反対された末に結婚した新婚時代に住んだ家がほぼ当時のままの姿で残っています。
階段の軋みまで元のままです。
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そんなわけで、2人の展示が多いことは想定してましたが、どっちかというとクララ・シューマンの展示の方が多くてびっくりしました。
当時も、ロベルト・シューマンより妻でピアニストのクララ・シューマンの方が有名でした。クララだけが宮殿に招待されたり、などがあったようです。
ドイツの高額紙幣になったことがあるのはクララだけなんですよね。
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部屋は五つほどあって、まず最初の部屋がクララの海外、とくにロシア旅行への旅程がいかに過酷だったかを示すものでした。当時、馬車と汽車、船を乗り継いで困難な旅をし、粗末な宿でネズミや虫に悩んだことが動画で再現されており、またクララの服や、持ち物が展示されていました。
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19世紀のクララの旅行。本当に大変そう。よほどの意思がないと行かないよね。ブラームスがクララの英国行きにえらい反対する手紙を何度も寄越していたけど、英国行きの船はもっと危険だったのかなぁ。
二つ目が当時サロンだったピアノのある部屋。ここにメンデルスゾーンやリストが来たと思うと感慨深い。
新婚時代は小さい家にしか住めなかったと聞いたけど、なかなかどうして大きい家ではないか、と思いました。でも2人の音楽家が住むには小さいんかな。
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三つ目は、主にクララ・シューマンの人生がパネルとおおきなピアノの鍵盤と共に展示されており、父親の名前の入ったピアノが置いてありました。
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四つ目と五つ目はインスタレーションみたいなことをやっていて。
六つ目の小部屋では、ロベルトとクララの書いた作品の展示。音楽が自由に聴けたり、楽譜もありました。
それからクララの手のレプリカ。いかに大きい手だったかを見て驚愕。
ピアニストは大きい手が本当に重要だよね。
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そうそう、クララ・シューマンはドイツ・マルクのお札にもなっていて。
ライプチヒは19世紀の音楽の都で、シューマン他、メンデルスゾーンやバッハ、リストなんかも活躍した場所なんですよね。
ただ、ここには手紙や日記、手書きの楽譜の類は少なく。
ちょうど午前中で見学が終わったので、ツヴィッカウのシューマンの生家にもいくことにしました。
ちなみに、シューマンハウスから歩いて行ける距離に、カフェ・バウムというシューマンが通ったカフェがまだ残っているのですが、2024年6月は改装中でした。
2 展示が豊富で決定版。ツヴィッカウのシューマンハウス
ライプチヒ中央駅から今度はSバーンと呼ばれる短距離列車で1時間ほど、終点がツヴィッカウ。
1時間に1本しか電車がない。
そこから10番のバスに乗り、バス停からさらに10分ほど歩いたところにありました!
シューマンの生家、目ぬき通りの広場の前。
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大変大きい家です。
こちらはみる価値が十分にありました。
訪れたのが、ちょうどシューマンが生まれた6月ということもあり、シューマン祭りをやった直後だったようです(青いバナーはシューマン祭りの名残)。
シューマン夫妻における重要なものは大体こちらにあるのでは。
面白いのは、ここはロベルト・シューマンの生家なんだけど、クララについての展示もかなり充実していたこと。
一階では、特別展示でカール・ライネッケの楽譜なんかが展示されてた。
二階が主な展示室。
おそらくほぼ当時のままの家を再現しており、シューマンが生まれた部屋までありました。
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一番感激したのは、シューマンの初めの頃のペンネームでの名前の楽譜があったことです。
シューマンの手書き譜面は細かい字で美しく描かれており驚きます。殴り書きみたいなベートーヴェンの自筆譜とはだいぶ違う。
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交響曲第4番のテーマの走り書きや、「子どもの情景」一曲目の手書き譜面もありました。
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服や髪の毛、当時の新聞やシューマンが主催した雑誌の切り抜き、山登りが好きだった彼のステッキやクララのドレスなど、こっちは見どころがたくさんで、ちょっと書き切れない程です。
何よりも温かい雰囲気でして。
係の方が「クララが使っていたピアノを弾いてもいいですよ」と言ってくれたのです。しかし私はシューマンは難しすぎてあんまり弾けず(それもすごく下手・・・)、遠慮しておきました。
すると、今度はシューマンのひ孫さんがきた時の写真を見せてくれたり、特別に非公開となっている部屋を見せてくれたり、一緒に写真を撮ってくれたりと、ほんと親切でした。この係の方、ロシアのサンクトペテルブルク出身だそうで、あんまり英語が通じなかったのですが、とても親切にしてもらいました。
お土産はシューマンとクララの作ったハウスルールの本。ドイツ語でした。
3 最も新しいシューマンハウス・デュッセルドルフのシューマンハウス
ハインリヒ・ハイネ記念館と同じ通りにあります。
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こちらはシューマン夫妻が最後に住んだ家。
「シューマン協会」として使われていましたが、最近になって博物館に改装されました。
なので、完全に中身はモダンな博物館になっており、シューマン夫妻が住んだであろう頃の面影はほぼない状態でした。
ここが一番賑わっていて、団体客が来ていました。
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入ると、まずはシューマン夫妻の歩みと年表があり、「交響曲第3番ライン」のスコアと音楽が迎えてくれます。
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年表がある部屋です
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ピアノ協奏曲のスコア。本当に綺麗な譜面でこのまま演奏できそう。
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「暁の歌」の楽譜の扉。
私この曲がとても好きなのですが、デュッセルドルフ時代の作品でしたね。
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終わって外で写真を撮っていたら、「あなたはシューマンが好きですか」と話しかけられました。話してみると、ここを運営しているシューマン協会の方だそうで、名刺を交換し、少しお話ししました。音楽会などをやっているそうです。
4 行く人は少ないかも? ボンのシューマンハウス
精神を病んだシューマンが最後に入っていた療養所です。
精神病院といっても、広い庭に囲まれた非常に環境の良い療養所で、シューマンは希望してここに入り、2年を過ごしました。ちゃんと散歩もできたそうです。
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当時のシューマンの部屋がほぼ(多分)そのまま残してあり、ピアノもありました。ブラームスやヨアヒムも訪れたそうです。
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調子が良い時にはここでも作曲が行われたようなのですが、最晩年の作品はクララが夫の名誉を考え処分してしまったようです。(なので、晩年近くに書かれたヴァイオリン協奏曲なども、長らく演奏を禁止されていたそうです)。
なお、ここから歩いて30分の距離にシューマン夫妻のお墓がありまして、ついでに行ってきました。
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シューマン好きな方には、やはりツヴィッカウまで足を伸ばしてみることをお勧めします。
音声版を有料で売ってますので、物好きな方はどうぞ!
ではでは!
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