灰色と極彩色の恋煩い 江戸川乱歩「押絵と旅する男」

人間椅子のアルバムのタイトルにもなっているこの小説「押絵と旅する男」。深夜、汽車の中で見ず知らずの男から打ち明けらたのは淡く奇妙なある男の恋煩いの結末だった。

この物語は「夜」「曇天」が背景にあるためか一貫して灰色のイメージが浮かぶ中、「風船」「凌雲閣」そしてキーワードである「押絵」だけが艶やかに浮かび上がっており、そのコントラストが物語の奇妙さを確かなものにしているのだろう。
今なおあの風船のシーンは私の中に留まって不穏
とときめきの象徴になっている。出会ってよかった一話です。
92ページ、青空文庫にて。

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