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「校長、クビや」

校長、クビや」。
 3年生で転校してきた子どもの言葉です。

 友だちとトラブルになり、「自分は『障害児』だ。『障害』がない友だちは自分にゆずるべきだ」と訴えに来ました。
 大空小では「障害」という言葉を使ったことがなかったため、友だちが「障害って何?」と質問してきて、私は「わからない」と答えたのです。
 すると彼は、「校長のくせに『障害』もわからないならクビだ」と怒ったのです。

 私が「わかるのなら教えて」と言うと、「オレの主治医が発達障害だと言った」と答えました。困った私が「主治医に教えてもらいに行く」と言うと、彼の表情は一変し、「主治医がどう言ったか教えてな」と私に頼んで、ケンカしていたはずの友だちと肩を組んで去っていったのです。

 彼は幼児期から「悪い子や」と排除されることが多く、学校では周りの子どもたちから常にいじめられ、母親も精神疾患を患って入院することになり、院内学級で過ごしました。
「彼に発達障害があるとは思えないが、なぜ診断をくだしたのか」と主治医に問うと、「彼に発達障害はない。これまでの環境のなかで受けた二次障害だ」と言われました。
 診断名を出したのは、母親を安心させケアを受けるためだとも聞いて納得しました。

 彼は今も私の師匠の一人です。

次回は4月1日(火)更新予定です。

初出:『教職研修』2021年8月号、10頁。一部文面を編集のうえ、掲載しています。


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