『校長先生、幸せですか?』
校長の孤独
校長先生、幸せですか?
本書を読まれている全国の校長先生にうかがいます。
校長室でひとり孤独になっていませんか?
自分は孤独だと感じていませんか?
校長とはそもそも孤独な存在なのでしょうか。たとえば校長室は、校長が「どんな学校にしようか? そのためにどんなことをしようか?」と、ひとりで戦略を練る特別で大切な場所です。そのために校長ひとりだけが学校で部屋を用意されて、その部屋をひとりで使う権限が与えられているのです。企業でも社長には社長室がありますね。それと同じです。
小学校では、子どもから「校長先生のお仕事はなんですか」と聞かれることがよくあります。校長にはいろいろな仕事がありますが、子どもに対してどう答えればよいか、困った経験のある校長先生も多いのではないでしょうか。
そんなときは、「校長先生はみんなを幸せにする仕事をしているんですよ。みんなが幸せになるためにどうすればいいかな、っていつも考えています」と答えるのはどうでしょう? そう答えれば、みんなハッピーな気持ちになりますよね。私がそう答えると、子どもたちはとてもうれしそうに帰っていきます。
ある先生からこんな相談が来ました。
「校長室のドアが閉ざされている日が、ドンドン増えています。すごく不安になります」
先生たちは、校長室の様子をいつも見ています。そして、校長先生のことを気にしています。
校長室が校長ひとりのためにあるからといって、教職員にとって敷居の高い、入りづらい場所になってはいけません。風通しのよい、心理的安全性が確保された職場をめざしているのでしたら、まずは校長室が教職員にとって気軽に入りやすい場であることが必要です。真っ先に校長室を開放してください。
「こんな学校をつくりたい」というビジョンを描き、戦略を練るのは校長ですが、それを実際に実現してくれるのは教職員のみなさんです。校長も教職員も同じ方向をむいて、実現に向かっていくことが大切です。
そう考えると、校長はけっして孤独な存在ではありません。みんな学校づくりの仲間なのです。そのようなスタンスで教職員に接することが、大切なのではないでしょうか。
校長先生、あなたが学校にいるだけで、他の人に貢献しているのですよ。
校長先生、誰か頼れる人はいますか?
教職員には、職員室にたくさんの同僚がいます。教室に行けば、子どもたちがいます。前にも横にもたくさんの人がいるのです。
校長はどうでしょうか。孤独で誰も周りにいないのでしょうか。
校長の後ろには誰もいません。でも、実は前にはたくさんの教職員がいます。「後ろに誰もいない」というのは、校長が「学校の責任者」だということでもあります。責任をとってくれる人は、自分の後ろには誰もいませんが、前には自分を助けてくれる人がたくさんいるのです。一緒に考え、一緒に悩み、一緒に行動してくれる、信じて任せられる教職員がたくさんいます。
そう考えると、やはりけっして孤独ではありません。校長は、「自分のビジョンを一緒に実現してくれる人がいるんだ」という感覚を持つことができれば楽になります。
ビジョンを考えるときは確かに孤独ではあるかもしれませんが、それをともに実現していく仲間が目の前にたくさんいるのです。校長は校長室でひとりビジョンを考えるかもしれませんが、そこから先に広げていくための「共創の場」となるのも校長室です。校長自身が自ら校長室をみんなに開放して、力を結集するための交流の場にしていくことが大切ではないでしょうか。
校長先生、幸せに働けていますか?
「校長先生、幸せですか?」
と聞かれたら、どう返されますか?
「はい、幸せですよ」と堂々と言い切れるかというと、これはなかなかむずかしいかもしれません。対応しなければならないことが次々起こり、職場の人間関係を整えることにも力を注ぎ、やらなければならないことも山積し、自分では解決できない複雑な問題も数多く、疲れてしまう毎日だと思います。やはりそれが現実です。
しかし、それでも校長先生が幸せでいることは大切なのです。幸せでないと、ちょっとしたことでイライラしたり、怒ったり、機嫌が悪くなったりします。それを見ている教職員のみなさんは、被害を受けたくないですから、校長先生に近づかなくなったり、声をかけなくなったりします。そうすると、学校経営にも支障をきたします。だから校長先生が幸せでいることを常に心がけた方がよいと思います。
それでは、校長先生はどうすれば幸せでいられるのでしょうか。
それは、「自分は幸せだなぁ」と思い込むことです。
「教職員に恵まれ、子どもに恵まれ、保護者に恵まれ、地域に恵まれ……そのおかげで今、こうやって校長としてやっていくことができるんだ」と、等身大の幸せを感じること、感じようとするということです。あまり高望みをしないことです。
「自分は、とても同僚に恵まれている」
「子どもたちが学校に来てくれて幸せだ」
「先生たちが一生懸命に仕事をしてくれて幸せだ」
「保護者が学校に協力してくれているのはすごいことだ」
「地域の人が子どもたちのことを褒めてくれて幸せだ」
「地域の人が学校を励ましてくれることが幸せだ」
などと、自分自身で感じることが大事です。
高望みばかりしていると、幸せを感じなくなってしまいます。子どもが学校に来て学び、先生が授業をしていればそれで十分なのに、「こんな成績ではダメだ。もっとよい成績をとってほしい」と思えば、幸せは減ってしまうのです。
子どもたちが、「校長先生、おはようございます」と言ってくれれば十分幸せです。○○先生が自分の話を聞いてくれれば十分幸せです。
「幸せを感じる」ことは、校長にこそ大事です。「幸せを感じる」ことが、結果的に「幸せになる」ことにつながるのではないでしょうか。
そもそも人間は不完全ですから、何でも自分ひとりの力でできるわけではありません。「みんなのおかげで、本当に恵まれた環境のなかでいられる」と思えることはとても幸せですよね。それをまたフィードバックすることで、ハッピーをお返しする、“ハッピー・リング”を築くのです。
校長がハッピーでいることによって目の前の人がそれを見てハッピーになり、ハッピーの連鎖がどんどん広がっていくと、学校全体がハッピーになっていきます。「人に幸せを送る」ということです。
ハッピーな人の近くに、みんな行きたがります。幸せも怒りも全部、その人の近くに寄っていくことによって、伝染していき、周囲もだんだんそうなっていきます。ハッピー、元気さ、明るさを伝えていくことができる人でありたいですよね。
校長はハッピー・クリエイター! ハッピー・リングをつくることができるのではないでしょうか。
校長先生、幸せですか?
学校は楽しいですか?
(本書「序章」より)
本書の購入はこちら↓
小社HPからもご購入いただけます(送料無料)↓
住田先生による出版記念イベントの動画を、YouTubeで配信中!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?