『校長がOODA(ウーダ)ループで考えたら学校の課題がみるみる解決した』
校長学のススメ
令和3年1月の中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」は、これまでの日本型学校教育の成果と課題を明確にし、令和の時代の日本型学校教育を創っていくための道筋をつけるものとなりました。
その具体策として、小学校における35人学級や高学年の教科担任制が実現しています。また、令和3年3月に諮問された「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」を契機として、教員免許更新制も発展的に解消されました。令和4年12月19日の中教審答申を受けて、教員養成から採用・研修といった教員の在り方が改善され、学校の慢性的な人材不足への対応や学校における働き方改革が進むことが期待されます。
一方、新型コロナウイルス感染症によって、学校はセーフティネットとしての役割に気づかされるとともに、あらためてその存在意義を問われることになりました。GIGAスクール構想による端末整備は、授業改善の幅を広げただけでなく、学校に通う意義が問われるまでになっています。予測不能な社会、変化の激しい社会にあって、学校はその変化に対応することに懸命になっているのが実状です。
しかし、未来社会を生きる子どもたちにとって必要なのは、変化に対応する力を超え、変化を創り出す力です。学習指導要領の理念であるコンテンツベースからコンピテンシーベースへの転換や、子どもを主語とする教育活動の推進は、その実現をめざしています。教育の在り方が大きく変わろうとしている渦中にあって、学校自身も自己変革が必要なのです。
令和の日本型学校教育の構築には、学校や教師の都合ではなく子ども中心の教育へ、教師主体の授業から子ども中心の学びへ、といった発想の転換が求められます。また、その推進には校長の役割が重要です。
従来、それは「校長のリーダーシップ」といった言葉で括られていましたが、中教審ではさらにその中身について「アセスメント能力」や「ファシリテーション能力」など、校長に求められる能力にまで言及されています。また、校長の学校経営は、マネジメントそのものであるという見方も一般化してきました。しかし、それが何たるかという整理はなされてきていません。
経営もマネジメントも組織目標を達成するという点では同じです。しかし、経営はそのための意思決定がメインになるのに対し、マネジメントは組織に成果をもたらすための手段が含まれます。組織のトップとして意思決定をするだけが校長の役割ではなく、教育目標の実現のために、より積極的で主体的に行動することが求められます。
本書『校長がOODAループで考えたら学校の課題がみるみる解決した』で提案するOODA(ウーダ)ループは、校長が主体的に行動する学校マネジメントのひとつの手法です。従前のPDCAサイクルよりも即時性があり、変化や危機に対応しやすいという特徴があります。また、学校組織や教職員の力量形成につながるという利点もあります。
いつの時代にも求められる「学び続ける教師」の姿は、校長が先頭に立って体現すべきものです。校長はゴールではなく、校長としての自立的、現場主義的学びである「校長学」の始まりでもあります。OECDのシュライヒャー局長は、「教育の質は教師の質を超えられない」と語りました。それは「学校の質は校長の質を超えられない」とも換言できます。
OODAループによる学校マネジメントを校長学の指針と位置づけ、各学校の教育活動が充実されることに貢献できれば幸いです。
(本書「はじめに」より)
OODAループとは??
校長がOODAループで考えたら学校の課題がみるみる解決した
喜名朝博(元全国連合小学校長会長/国士舘大学教授)著
定価2,310円(税込)/四六判/192頁
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