かいごの基本 使えた移乗介助技術
■入所者さんが自宅に帰る
ご家族の不幸があり、入所者さんの子供さんから自宅で最後に会わせたいので、家に連れていきたいとお話がありました。
さて皆さんだったら、どう思いますか。
どう動きますか。
今すぐに決断を求められています。
■帰るイメージ通りにする為に
私の中では、「絶対帰る」しかありませんでした。なので、先ずご家族に直接話を聞く前に、相談員、介護職員に、聞きました。
・どのくらい車椅子に座っていられる方か?
職員より、1時間くらいで横になりたいと言われる事が増えたと返答あり
・今日の活気と最近の精神状態等
大丈夫です、と返答あり。
相談員と一緒に入所者さんにご不幸の報告をされた家族のもとへ行く。そして、ご家族より自宅に連れて帰り亡くなった方に会わせたいので、帰って良いかと尋ねられました。
■帰るための提案
私から提案させていただきました。
私と相談員が一緒に入所者さんをリフト車で家まで送ると伝えました。職員からは、約1時間ぐらいなら大丈夫である事も伝え、反応を見ました。
ご家族より、送ってくださるのですかと、驚きの声があった。時間を決めて、予定通りに、自宅へ向かうことになりました。
■使えた移乗介助技術
田舎の古い家の作り。玄関は木製で玄関口を車椅子が乗り越えるのが難しい。
念の為積んでいた、簡易スローブを出して、玄関をクリアしました。
次は座敷に上がるために、上がりかまちが二段ある。
車椅子を一段目につけて、先ずは一段目に座っていただく。全介助で移乗。
次に正面から介助で二段目に座っていただきました。
無事、亡くなられた入所者さんの子供さんと会うことができました。
しばらくして、家を跡にするために、段を2回下りて車椅子に移乗をします。
低い椅子に座っている位置から、抱え、車椅子へ移乗しました。ご家族の手伝いもあり無事に自宅へ戻れました。
家族様からの感謝の声をいただきホッとしました。
何より印象が残ったのは、亡くなった子どもさんへの入所者さんの発した、
「はよ、行くわな」という全てを理解したお言葉でした。
※「はよ、行くわな」は、亡くなるには歳が早いのではないのか、という意味で言われたと思います。
普段の施設内では平坦な床の上で、介助しているが一歩外に出ると段差、坂等環境の状況は変化します。
そんな時にも、自分の介護技術と予想される環境の課題とそのための道具を準備しておくこと。
自分の持っている介護技術の基本を環境に合わせてアレンジして、お年寄りの想いに寄り添う。
これが介護職の達成感であり、やりがいです。