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折々の絵はがき(55)

◆〈雪に白鷺〉小原古邨◆
昭和2年 ボストン美術館蔵

コロタイプ絵はがき〈季趣五題 ふゆこもり 雪に白鷺〉小原古邨

 曇り空からこぼれるように降る雪は、どこか白鷺たちのかけらのようにも見えます。凍てつく寒さのなか、鳥は何を思うのでしょう。澄み切った空気は、わずかに立てる羽音さえ運んできそうです。遠く離れた場所から彼らを見つめた古邨は、佇まいの美しさに見とれ、雪が降り出すとその美しさがいっそう際立ったことに、一人息を呑んだに違いありません。
 画題の「雪に白鷺」は「闇夜に烏」などと同様に「見分けがつかないこと、また目立たないことのたとえ」として用いられる慣用句です。本来なら絵にならない主題を、こうして絵にしてみせたところに古邨のユーモアを感じるとともに、描くことへのチャレンジ精神が垣間見えます。一見難しそうな主題でも、その美しさを描こうとさえすれば、絵にすることができるということを古邨の絵は教えてくれます。
 小原古邨は明治から昭和にかけて活躍した日本画家であり、花鳥画の絵師です。彼の優れた表現力と、江戸時代より培われた彫師・摺師の高度な浮世絵版画技術、それらによって生まれた作品は多くが欧米で愛されました。彼は生き物を丹念に観察し、慈しみを持って描きました。彼の絵の中の動物たちに、ありありと息吹が感じられるのはだからだと思うのです。

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