折々の絵はがき(66)
◆〈山頭火シリーズ「あすもたたかう歩かせる星がでている」〉池田遙邨◆
昭和62年 京都国立近代美術館蔵
すでに日はとっぷりと暮れています。どれだけの距離を歩き続けたのか、くたびれた山頭火は道端の松の幹へ誘われるように腰を下ろしたのでしょう。ようやく人心地ついてふと空を見上げると、そこには静かに星が瞬いています。「ほう…」。彼がそんな風に息を漏らしたかはわかりません。しかし、夜の青を穏やかに照らす星々の光に、一人きりだった彼の心はどれほどなぐさめられただろうと思うのです。思