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折々の絵はがき(42)

◆美術干支年賀 B-163 東源氏雪乃庭◆

歌川国貞・歌川広重
江戸時代・1854年 北海道立近代美術館蔵

 ふふふと思わず笑いがこぼれました。とびきり大きな雪のうさぎは武家屋敷と思しき端正な日本庭園でどことなく居心地が悪そうに見えます。さあ総仕上げとばかり、うさぎの眼に赤い盃を合わせたこの瞬間、右手の女性が上げた「わあ、かわいい!」という声が聞こえた気がしました。奥と手前の女性はたすき掛けをした勇ましい姿で、手にはへらや鏝を握っていますが、もう一人は手ぶらなうえ雪に触れてすらいなさそうです。ひときわ豪華なかんざしからすると、お屋敷のお姫様なのかもしれません。

 彼女が「大きなうさぎを作って!」と言ったかどうかはわかりませんが、絵はがきからは「よーしやっちゃおう」とでもいうような若い時分のみずみずしい勢いが感じられます。三人が寒さをものともせずにくすくす笑いながらもっともっとと雪を集め、うさぎがどんどん大きさを増していった様子には、微笑ましいというよりも、ちょっとうらやましいくらいの楽しさがあふれています。真冬の屋外ですがさぞかし気分は高揚し、襦袢の下は汗さえかいているかもしれません。きっと彼女たちは雪が降るたびこの日のことを思い出すのでしょう。

 この作品は源氏物語を通俗的に翻案した小説『偐紫にせむらさき田舎源氏』「源氏絵」を下敷きに、歌川国貞と歌川広重が合作した三枚続きの浮世絵です。この場面はその右端。反対側には主人公の足利光氏が描かれていて、縁先から娘たちを愉快そうに眺めています。

 明けましておめでとうございます。まるで洗い立てのようにすがすがしい空気に満ちた新年。深々と深呼吸をして、さあ新しい一歩を踏み出しましょう。本年も変わらぬご愛顧を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

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