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目に見えない幸せと宗教の本質【新人読書日記/毎日20頁を】(13)
「人生の意味の心理学」241-260頁、読了です。
意味システム・アプローチの一例として、1986年にノーベル賞を受賞した脳神経学者であるリータ・レーヴィ・モンタルチーニ(Rita Levi-Montalcini)が人生の意味について、次のように語っています。
人間の大部分がとてつもない苦難と飢餓の中を生きている一方で、一部のマイノリティが過度の快適さのみならず贅沢を楽しんでいます。この世界で幸福を見出すことができるのは、形あるものの所有を通してではない、ということを人々が悟ることが、私の望みです。
小学校の頃読んでいた『星の王子さま』にも「かんじんなことは、目に見えない」という名言があります。昔からこんな体験がよくありました。ずっと欲しかったものをやっと手に入れたのに、嬉しい気分は一瞬にして過ぎ去ってしまうのです… 持続的な幸せをもたらしてくれるものは何なのか。消費主義社会における自分が真に求めているものをずっと勘違いしていたかもしれません。
Topic5で著者は意味の入れ子モデルで、代表的な四つの宗教における各次元の人生の意味を捉えています。捉えにくい宗教をロジカルなグラフで見える化し、意味の各次元と対照しながら理解することができます。人生の意味に限らず、宗教の本質を理解する上でもとても啓発的だと思います。
・・・・受賞速報・・・・
最新受賞情報:
2023年 第9回日本南アジア学会賞
過去の受賞履歴:
2022年 第17回 樫山純三賞 学術書賞
内容:
「なんて無知で無教育な人々か」――阿鼻叫喚の病院の待合室,「完全にすれ違った」医師と患者/家族のやりとり,処方も指導も守らない人々が繰り広げる病いをめぐる「脈絡のない」会話――本書に描かれる事例を,ネパールの身体/社会文化に関する予備知識なく読んだ途端,あなたはそう思うだろう。しかしそれは違う。人々にとって痛く辛い経験は,科学の知識体系や検査数値とはまた別にある。理解し難いその態度は,身体の経験を,〈不器用な〉配慮の中で,皆とひたすら共有しようとする生活実践なのだ。生物医療が急速かつ無秩序に導入された国で,人々が,「共に生き共に死んできた」間身体的な生き方に,COVID-19下の私たちが何を学べるか。医療人類学の挑戦。
著者プロフィール:
中村 友香(なかむら ゆか)
日本学術振興会特別研究員(PD).国立民族学博物館外来研究員.
1990年生まれ.2020年,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了.博士(地域研究).第10回育志賞を受賞.主要論文に,「身体をつなぐ会話」(『文化人類学』第83巻4号,2019年),The Concept of “Side Effects” and the Use of Biomedicine in Nepal (Studies in Nepali History and Society 26(1), 2021年)など.