蚊に「歯」は ないけれど・・・
先日、何気なく目にした新聞のコラムに、「蚊にかまれる」という表現が取り上げられていた。
以前、このコラムの筆者がこう書いたら、こんな言い方は聞いたことがない、初めて目にする表現だとの問い合わせが、読者から相次いだらしい。
ほえっ?
これを読んで、私は奇妙な声をあげてしまった。私自身、生まれてこのかた(といっても、物心ついて話し出してからだけど)ず~っと、「蚊にかまれる」を使ってきたから。
なので当然、家族も、友達も、まわりの人々も
「足、かゆっ(痒い)!うわ、3つも蚊にかまれたわ。」なんて、話していた。
生粋の関西人の私は、「蚊にかまれる」のが普通で、これが日本全国で話されていると、かた~く信じていたのだった。
もちろん、蚊に「歯」なんぞない。でも、虎やライオンに「かまれる」と同じ立ち位置で、私は蚊に「かまれ」続けていた。
新聞記事によると、2009年の全国調査では「さされる」は秋田、岐阜、長崎など広い範囲で使われ、「くわれる」は青森、新潟、愛知、沖縄で確認。「かまれる」は近畿と、四国東部。東日本では使われていなかったとのこと。
なるほどねえ・・・
もう一つ興味深いのが、「さされる」は標準語の地位にあるとは断定できない・・らしい。
これは、意外な驚きだった。以前、日本語学校で留学生達に教えていたときも、今、教えている外国ルーツの中・高校生たちにも、「蚊がさす・蚊にさされる」と、伝えている。私の中でも「さされる」が、一種の標準語という認識だ。うっかり、口が滑って「蚊にかまれました」なんて言おうものなら、彼らの頭の中では、はてなマークがぐるぐる回るに違いない。
こうして、歯がない蚊にずっと「かまれ」てきた私は、これからも未来永劫、「かまれ」続けることになる。「さされる」より、やっぱり「かまれる」ほうが、しっくりくるんだなあ・・・
・・・と、こんなことを思っていたら、知らない間に、足を蚊にかまれている。かゆい、かゆい。早くかゆみ止めを塗らなくっちゃ。
・参考 朝日新聞『天声人語』(2022年9月5日付け)
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