「ショートショート」平均男の特殊能力『筆記用具』編④
・・・③からの続き。
筆記用具の声が聞こえるという特殊能力が芽生えたことで、今、筆記用具から話しかけられている状態になる。
話しかけられたら無視はできない。
しかし、何が話しているのだろう。
筆箱の中から声が聞こえているようなのだが、
どれが話しているんだ?
シャーペン、鉛筆、消しゴム、蛍光ペン、ボールペン、修正液、スティックのり、定規・・・。
甘い香りのする消しゴム、ロケット鉛筆・・・、あ、この辺は、小学生卒業時に捨てたんだった。
どれが話しているか、分からない。
でも、話している相手と目を合わせないと、コミュニケーション能力が欠落していると思われてしまう。
いや、筆記用具からの好感度なんか、気にしなくて良いか。
しかし嫌われてしまったら、テストの時に、しっかり働いてくれなくなるかもしれない。
平均点さえ取れなくなってしまうのはごめんだ。
嫌われないようにしよう。
そんな思いで、すべての筆記用具と満遍なく目を合わせるようにした。
目?そもそもどこが目だ?
定規の目は、やっぱり目盛りのところかな。
つけまつげでも付けて、盛られた目。目盛り。
筆記用具によって性格も違うんだろうなー。
定規はきっちりしてそうだな。
そして相手のことを、血液型占いのように4種類に線引きしてきそうだ。
蛍光ペンは目立ちたがり屋だ。
教科書に引いた蛍光ペンで、目立ち過ぎると、テスト勉強の時に、どこが本当に大事なところだったか分からなくなるからな。
シャーペンは細マッチョだな。線が細いのに、意外と身体が強い。
スティックのりは寂しがり屋だから、すぐひっついてくる。
消しゴムと修正ペンは、緊張すると頭が真っ白になりそうだから、緊張しいな性格。
そんなことはどうでもいい。
どれが話しているかを考えていたんだった。
とりあえず全体をぼんやりと見るのだ。
校長先生が、体育館で話す時は、このような状況なのだろう。
そんな状態のまま、私は「どうしたの?」とささやくように言葉を返してみた。
・・・続く。(次回、最終回です。)