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短歌〜鏡心の短歌/子育て生活編『息子(キミ)の涙、息子(キミ)の背中』•129首

⭐︎幼稚園生時代⭐︎

ママ ママと 呼ばれてママになる私 呼ばれなければ どんな私か


こんなにも 息子の心を 痛ませて 何苛立っているんだ 私ってヤツは


傲慢や 卑屈や迷いや 言い訳が にじみ出でたる  私の母性


子育ての 自信なんて いつ持てる 時間だけが 容赦なく過ぎ


I’m Mother その重みに とまどえど なんとかどうにか 日々をこなして


子が吐きて ポツリつぶやく ごめんねと そんな風に言わせてごめんね


早く早く せかす私に 息子言う そんなに早くはできません


川の字で 親子三人 眠れども キミが動きて NやらH


眠りから 覚めしときより キミはキミ 家族の時間が 色づき始まる


何気なく 「死んじゃうよ」と言った時 空のばぁばを ふと思うオレ


じぃじはね オレが行くとね よろこぶよ 息子の言葉は 見事な結晶


ボクシング 痛そうだね かわいそう 孫がつぶやき チャンネルは変わる


せっかくの 少年野球の お誘いを ゆっくりしたいと 断る息子


くせのある 箸の持ち方 そのまんま そうめん食(は)む食(は)む 真夏の姿


泥酔の 夫の姿 なんだこれ 同じ歩調と 思っていたのに


パパとママ せっかく結婚したのにね ケンカするなんて かなしいね


亡き母と 心の中で 話す時 幼ない子どもに 私はかえる


それなりに 毎日掃除は してるのに ほこりはたまる 心の中も


元気飴 パパにあげるよ いってらっしゃい でもブドウ味は オレのものだよ


工場にて こもる空気に とけこんで 働く彼の人 色々ごめん


久しぶり ママ友ランチの 食べ放題 こぼれ落ちゆく 子を産みし記憶


心のまま 歌詞など気にせず 歌いあげる いいぞ息子よ そのまま そのまま


突然の 雨にずぶぬれ 帰り道 キミと二人 笑いこみあげ


今日もまた ちゃんとしなきゃ 家事育児 ちゃんとできない 疲れちゃいけない


劣等感 骨身にしみいる 帰り道 家族に優しくしようと 誓う


この先の 死より貧が こわいよと 涙こぼれる 微熱の夜更け


友の子が うらやましく 思えた日 おかぁさぁんと 夜空見上げる


誰も皆 心の中では 張り合って 自分の優位を ほくそ笑みたい


我が家だけ 良ければいいさと 囲い込み  指隙間から こぼれゆくもの


泣きながら 想い吐き出す 育児相談 みんなみんな 戦っているんだ


評価から そっと離れて 向かいあう 私の中の 軸たる気持ち


初めての 一人息子の お泊まり会 家とはこんなに 静かなものか


ウチの子が 仲間はずれに されていた ざばりざばり 刻む玉ねぎ


なんでもない こわばる顔で キミは言う 私は見てたよ 友とのいさかい


唇を 噛んで上目で 何見てる 強がるキミの 切ないきらめき


両の手に やかんをたずさえ どや顔で 園にて遊ぶ 息子よ ブラボー


足踏みの 母をぽぉんと とびこえて かけゆくキミの 背中がまぶしい


オレみたく 人生丸ごと 楽しめよ 六歳の背中が 私を導く


きょうオレね うたのれんしゅうで ないちゃった 卒園を前に キミはつぶやく


もう少し 綿毛よこのまま そばにいて思い出抱いて たんぽぽは祈る


一眠り 一眠りする毎に キミは進みゆ 時間(とき)のすごろく


キミのこと どっしり構えて 信じぬき 応援しまくる 強さが欲しい


すれ違う 友の代わりは 出来ぬけど 一緒に大きな パフェを食べよう


百花繚乱 色んな個性の 子どもたち 揉め事多くも 笑顔はまん丸


我が息子 可愛くて可愛くて たまらない こんな気持ちに なれて良かった


手探りで これで良いのか わからない それでもいいか キミとの毎日 


またあした こだまが響く 帰り道 どんどん続け みんなのあした


⭐︎小学校低学年時代⭐︎


新品の 走り揺れゆく ランドセル 遠く眺めて ただただ たたずむ


手をつなぎ 一緒に歩んだこの道を キミは一人で 始める足跡


ああ そうか 私はさびしかったのか 猫背で座り 瞼を閉じる


わが隙を ねらって息子が のしかかる 期間限定 あたたかな重み


オレはね  赤ちゃんじゃない 八歳だ ひざに座るキミ 三十キロ超え


かぎざきの 心を抱きて 幼な子は 謝り従う 未熟な大人に


不完全な 大人が二人 ふんばって 創るホームが キミには絶対


この子の為 その言葉の 裏にある 己のエゴを 必死に隠す


知っている どんなものより キミのこと 傷つけてるのは 私の苛立ち


八年しか 生きていない 幼な子に 親の名のもと 万能求めて


ああ息子 キミの笑顔が 羅針盤 パパもママも だから頑張る


夢見てた 家族の像に あがきつつ 胸に手をあて 一緒に生きる


夜明け前 心の鎖(くさり)を ゆるめれば 息子のイビキは 生命(いのち)の音だ


思い切り 寝入る息子は 疑わない 必ず起こしてもらえることを


ありがとう ごめんなさいを 軽やかに 告げるキミこそ 私のヒーロー


化粧して「キレイになった?」と子に問えば「ふつうとおもう」と困り顔にて


あっ 今日は 母の日なんだね じゃあ オレの 「やさしいきもち」を はい あげよう


図工時間 黄緑粘土の 楕円形 まっちゃアイスと 名付けて作品


図書室にて 借りたる本を 開かずに バックそのまま 翌週持ちゆく


見えぬけど 身近なものはの 問いかけに 透明人間と キミは答える


夏合宿 息子の不在 落ち着かず 夫と二人 見に行く夜景


こっちにも 支柱はあるのに 朝顔の つるは伸びゆく伸びたい方へ


もう少し 練習頑張れば 良かったよ プール検定 黒星終了


山歩き 自然は良いねと 言いつつも 麓(ふもと)のコンビニ 寄りて落ち着く


好きな女子(ひと) 息子の答えが いないから ナイショに変わった 八歳の秋


オレにはさぁ きょうだいが いないから 一人っ子息子は 友に語らう


もう一人 産む努力を もっともっと すべきだったのか 白き吐息


キミ望む 下の子贈れぬ 我だから 強く祈るよ 友とのつながり


けどママも あんなに怒るの よくないよ 夫婦ゲンカを とりなすキミぞ


家ん中 ママがいないと 落ち着かない 頑張ってきて あぁ良かった


学校のこと フツーとヒミツで 話さぬが  元気に出かけ 元気に帰る


大丈夫  笑う門には 福は来る きっとずっと 未来は味方だ

︎⭐︎小学校中学年時代⭐︎


担任の先生百歳ってほんとかな寝る前つぶやく 九歳のキミ


皆既月食 ゲームに夢中で 見逃した 悔し涙の お風呂の時間


宿題文 光るモチモチの木 何故見れた たまたまと答え キミやり直し


お墓まいり 小さかったキミが こんなにも ラーメンペロリ ばぁばの命日


さぁ祝おう キミと一緒に 生きた日々マーブル模様の ロウソク十本


人混みで 自然につながる 息子の手 まだまだ小さい あたたかいなぁ


うさぎはね 女子が触らせてくれないんだ 飼育当番 夏休みの日


合唱の 「ずっと」のところで泣きそうに なったとキミは あの頃のように


ああ息子 あともう少し 秀でてよぉ ぐっとこらえる 授業参観


順位など 気にせずキミが かわいいと 思っていた私 どこにいったか


ポテンシャル 期待は愛か 苦しみか とにかくごはんを さぁ食べようか


アニバーサリー 照れにじませて 悪ふざけ 二分の一なる 成人の式


友だちと 一緒にゲームしてるキミ 輝くその顔 家でも見せて


ポジティブは元気 ドンマイは次頑張れ キミの和訳は いいね!いいね!


親孝行 オレが元気な ことだよね うんまぁ息子よ そうなんだけど


だってオレ こどもだもん できないよ 息子よキミは 最強君主


どうでもいい 理不尽な扱い かわす術(すべ) 身につけていた 十歳の痛み


オレにはさぁ 得意なことが ないんだよ 絞り落ちた涙 キミは私だ


長い夜 よすが求める 震える掌(て) 言葉はさまよい ただ握り返す 


いびつでも 親子三人 三角形 生きていく圧 分け合い笑う


⭐︎小学校高学年・中学校一年生時代⭐︎


何気ない キミの言葉に えぐられる 「いいお母さんだと思われたい?」


良い子だと 思われなくても いいんだと キミの背中 ああ こうありたい


どっちにも 味方するよ 夫婦喧嘩 オレは二人の子どもだから


見張ってた 夫を息子を 私自身を ムダのないよう 勝ち誇れるよう


つたなくも 一生懸命 話し合う そうしてようやく 始まる何か


ぶれる線 にごった色合い 戻れない けど描き続ける 家族の姿絵


のびのびと 育って欲しいと 100%(パー)の 気持ちで言えぬ 学期末前


保護者会 たいしたことは してぬのに じっとりぐったり アイスが食べたい


怒鳴りあう こんな時間に なるなんて テレビからは ドラえもんの歌


ねばならぬ はりつめこなす スケジュール 楽しくいこうよ キミが正解


好き嫌い 二分すると つらくなる フツーフツーの 息子に学ぶ


この世では 命と友だち 大事だね ゲームしながら キミはつぶやく


卒業式 証書授与の 呼ばれた名 響き届いた キミの「はい」


風光る 園に向かう児(こ) 赤帽子 ほんの少し前の 私の日常


懐かしの 合唱曲を 耳にして 遠く離れてしまったと知る


あの頃の キミの声再び 聞きたくも 操作誤り データは消えて


家に居て 起きてるキミは 五時間か そのうち話すは 何分かしら


いい匂い やったねカレーだ 腹減ったキミの笑顔に 報われる時間


この家は キミにとっては 補給基地 おかえりなさい いってらっしゃい


満月夜 なんでもどうぞ 欲しいもの 久しぶりの キミとのコンビニ


炎天下 閑散とした 観光地 それでも一緒の 時間がうれしい


遠回り エレベーター前に 蝉がいた そんな日々も 去年で終わりか


ごまかして バレなきゃいいさと ズルをした キミの姿に 自分が見える


競争中 用意させてる 爪と牙 キミにはいらないものかもなのに


信じなさい 息子(カレ)の力を 息子(カレ)の明日を そうっと響いた 亡き母の声


共にいる 時間減りし 我なれど 頼ってもらえる 大人でいたい


発芽前 水と光と 栄養土 与え信じて 大丈夫 待つ


弓だから 矢だからできることがある 各々一緒に 柔らかな世界


人生は 楽しいものだと 知っている 十三のキミを すごいと思う


YouTube 見ながら息子は 笑ってる 長生きしたいな ふとそう思う

             《了》

〜あとがき〜

《鏡心の短歌=ココロそのまんまの短歌》です

亡くなった母の戒名である「鏡心」を「心を映し出す」と捉えた私は、自分の心を映し出した短歌、「鏡心の短歌」を折に触れて詠む日々を過ごしております。

今回、今はもう成人している一人息子の幼少期に、日記の様に詠んでいた句を編成し、「短歌〜鏡心の短歌/子育て生活編『息子(キミ)の涙、息子(キミ)の背中』•129首」としてまとめました。

振り返ると、なんとも、些細なことを大ごとにしていたり、かけがえのないことをさらっと受け流していたり、過度の責任や心配にとらわれて自分を追い込んでいたり、それでいてそんな自分に酔いしれていたり…そして、何より息子や周りにいい母親だと思われたかったんだなぁ…と…

そんな稚拙で恥ずかしいこの歳月を、唯々懐かしく愛しいとはまだまだ受け入れられない現状ではありますが…

その時々に詠んでいた句は、確かに、その時々の私に寄り添い、慰め、整え、癒し、支え、励ましてくれた「じぶん応援歌」でもあったのだなぁと今回改めて思いました。

そして、そんな「じぶん応援歌」が、いつかどなたかへの応援歌にもなれたら良いなぁ…とも思っています。




お気持ち、とってもうれしいです! ご縁に感謝!!です  【春霞 遠くの富士は 見えぬけど 確かにあると 信じられる朝】(←鏡心の短歌:137)