『零落』 浅野いにお
JULY 4, 2018 Instagram掲載
あの若者のセンチメンタルを描いてた人は10年後に何を描くんだろう?
昨日読んだ『ソラニン』のあとがきに、夢破れた『ソラニン』と、夢を叶えてなお行き詰まる中年漫画家が主人公の『零落』(2017年連載)の比較があった。
読んでいてげんなりするくらい行き詰まっている。『ソラニン』も行き詰まってるけど、中年でヒット作を出した後の行き詰まりも相当厳しい。離婚届の保証人を頼むため友人の家を訪ねるなど、生々しく、そしてより複雑になっている。 『ソラニン』の男の子が熱望していた「夢を叶える」は決して「永続的な成功」ではない。例えばメジャーデビューという1つめの夢を叶えたって、次の課題がやってくる。「デビュー曲は売れるのか?」でもそんな次の課題の生々しさはわからないし、それに考えすぎても何にもできなくなってしまう。次のステージは1つめの成功を獲得した人たちにしか見えない世界。
浅野さんは色々なものを見て、感じながら、都度漫画にしてきたんだろう。『ソラニン』のあとがきにあった。
「ならば大切なものは一つだけ。それは『今』
漫画の1コマ1コマに集中して描きだす。それが1ページになり積み重なって、1話になり、さらにそれらが集まってストーリーを紡ぐ。その集大成が私の前にある。
YouTubeに浦沢直樹さんと浅野いにおさんの『漫勉』が落ちていて、番組では浅野さんの漫画の描き方が大公開されていた。(浅野さんの仕事場が『零落』主人公の仕事場だった)デジカメで撮った写真をMacに読み込んで、それにペンで描き込みをしてアナログ感を出し、また読み込み、キャラクターを併せる、そして手で線を加え…という、私だったら気が狂いそうなことをしていた。1コマを何本ものペンとMacで創り出している。本人もいっそ全部描けば楽なのに、としつつも「新しい表現をできたら楽しいじゃないですか」みたいなことを言っていた。 『零落』の主人公の言葉。
「喜びも悲しみも人としての営みも、全て漫画の中に置いてきた。自分にはもう描きたい事など何もない。」 「化け物」はその後、何を描いていくんだろう。
私は新しい漫画を読む度に何を思うんだろう。wikiを見たら同い年。
漫画106 『零落』 浅野いにお
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