『パスタぎらい』ヤマザキマリ
イタリアに暮らし始めて35年。イタリア留学のほか、世界各地を旅したり、住んだりしている『テルマエ・ロマエ』の漫画家ヤマザキマリによる食エッセイ。彼女は貧乏時代にパスタを食べすぎたせいか、パスタが嫌いだという。
彼女が死ぬときに口に突っ込んでもらうよう息子に依頼している(そのくらいおいしい)ポルチーニ茸やイタリアのお義母さんが「今日は寿司にするから食べに来い」と言った時に出てきた寿司の様子、コンビニおにぎりについて、イタリアや日本、そしてその他の国のエピソードが集められている。こういう文化の違いも面白いけれど、ヤマザキさんが個人的に苦手なコーヒーや加熱していない酸っぱい食べ物についても書かれている。ダメな食べ物のボーダーラインや理由って人それぞれで面白い。
「なるほど」と思ったのは、日本人は言語の習得はうまくないが、食への柔軟性、取り入れ方はすごいのでは、というくだり。日本は日本食はもちろん、インドもイタリアも中華もある。さらにサイゼリヤ、バーミヤンではお手頃価格で楽しむことができる。ハムトマトチーズまみれになるイタリア、ナンプラーばっかりのタイといった海外旅行から帰ってくると、「食の多様性が私には必要」と痛感する。本書には日本のスナック菓子の充実ぶりについても触れられていたけど、ポテトチップスのじゃがいも部分だけでも、薄め/厚切り/波型カット/棒状と多岐にわたり、フレーバーも塩、コンソメ、のりしお、チリ、梅、めんたいこ、枝豆こんぶ・・・と季節限定まで登場する国は確かになさそう。(韓国とかアジアはもしかしたらあるのかな?)
体を張って日本と世界をサバイブしてきた山崎さんの話には説得力がある。他の本で触れられていたエピソードもあるのでまるっきりブランニューなお話ばかりというわけではないけれど、「前言ってた話の続き、派生だね、おっけ」みたいな感じで彼女との共有事項が増えていくのもなかなかオツなもの。イタリアに行く時はもちろん、海外旅行に行く前に読んでおくと、スナック菓子コーナーをじっくり見られたり、観察ポイントが増えそう。
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