見出し画像

HOKUSAI PROJECT Vol.6 【シンプルさ】


きっとこの絵を描きながら、この人は、鼻歌を歌っていたに違いない。 

私が欲しかったのは、“Sure! (もちろんだよ!)”って言葉。

うまいとか、下手とか、そんなことは、どうでもいい。

それよりも、私のお願いに、手放しで、YES!と応えてくれること。


**

「ね、少しだけ止めて!」

「急いでるから駄目。」

「ほんの少しだけ!」

「急いでるんだよ。後にしてくれ。」


真っ暗な夜の道に、蛍が舞ったのが、見えた気がしたのだ。
 
それに、真っ暗闇の中に、ほんの少しだけ佇んで、星を眺めていたかった。
 
たくさんの贈り物を貰ったけれど、いつも忙しく働いていて、ついぞ、彼自身の時間を貰うことはできなかった。

やがて二人は、違う方向に別れていった。

本当は、そんなこと、望んでいたはずじゃなかったけれど。

**

幸せになるためには、お金が必要だ。

でも、お金を稼ぐことに没頭しすぎると、周りが見えなくなる。

周りが見えなくなると、側にいたはずの人が遠くなる。

バランスって、本当に大切なのだと思う。

**


とても魚釣りが好きな漁師がいました。

漁師は好きな時間に起きて、釣りをして、子供や友達と遊んで、楽しく過ごしていました。

ある日、金持ちの男が、その漁師のそばにやってきて言いました。

男:「やあ、すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの?」

漁師:「そんなに長い時間じゃないよ。」

男:「へぇ、君は魚釣りが得意なようだね。せっかくなら、もっと働いてみたらどうだい?」

漁師:「自分と自分の家族が食べるには、これで十分だよ。」

男:「それじゃあ、余った時間で、一体何をするの?」

漁師:「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。

戻ってきたら、子どもと遊んで、女房とシエスタして。

夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…ああ、これでもう、一日終わりだね。」

男:「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、きみにアドバイスしよう。

いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。

部下を雇って、もっと売り上げがでたら、ボートも買おう。

そうしたら、仲介人に魚を売るのはやめて、自前の水産品加工工場を建てて、ビジネスを大きくする。

その頃には村を出て、ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。

きみはマンハッタンのオフィスビルから、企業の指揮をとるんだ。そうすれば老後もお金ができるよ。」

漁師:「なるほど、そうなるまでにどれくらいかかるのかね?」

男:「20年、いやおそらく25年でそこまでいくね。」

漁師:「へぇ、それからどうなるの?」

男:「そしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。

どうだい?すばらしいだろう。」


**

今回絵を描いてくれたのは、私のお友達の、そのお友達のおじいさん。

私が、彼女にヘンテコリンなお願いをするのを側で聞いていて、自分も、と率先して描いてくれたらしい。

文字の背景にあるのは、北斎の絵の一部。(どこでしょう?笑)

メッセージに、こう書かれている。

“Thank you for getting the Art in us.”
(僕たちの暮らしの中に、アートを取り入れてくれて、ありがとう)

こういうウィットに富んだ感性が、私はとても好き。

どこの国の、どんな人にも、それぞれきらりと光る、何かがある。


いいなと思ったら応援しよう!