第2回 昔ながらのアフリカの暮らし
『アンナ・ハイビスカスのお話 アンナのうちはいつもにぎやか』(原題:Anna Hibiscus)
アティヌーケ作/ローレン・トビア絵/永瀬比奈訳
徳間書店 2012.07.31 ISBN 978-4198634469
アンナ・ハイビスカスはアフリカの大きな町に住んでいます。家族は、おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん、おじさんやおばさんたち、いとこたち……。たくさんいるので、何人いるのかアンナにもわかりません。
1冊のなかに短いお話が4つ、おさめられています。「アンナのかぞくは、いつもいっしょ」は、いつもいっしょの大家族からはなれて、お父さん、お母さん、アンナ、ふたごの弟たちだけで、海辺の家に行く話。「アンナとアメリカのおばさん」はアメリカにすんでいるスマイルおばさんが帰ってくる話。「アンナとぴかぴかのオレンジ」は、家の前でくだものを売っているこどもたちのまねをして、アンナが庭のオレンジを売る話。「雪が見たいアンナ」は文字通り、アンナが雪にあこがれる話。
アフリカ生まれの作家が書いた、アフリカの子どものお話。アフリカの女の子にとってあたりまえの毎日は、ほかの国の子どもたちにとって、めずらしいことがいっぱいで、楽しいです。
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アティヌーケは、ナイジェリア生まれの作家で、日本では『アンナ・ハイビスカスのお話 アンナのうちはいつもにぎやか』のほか、文章を担当した絵本『チトくんとにぎやかないちば』(アンジェラ・ブルックスバンク絵/さくまゆみこ訳/徳間書店)がしょうかいされています。母親が外国出身というのがアンナ・ハイビスカスと共通しています。
「アンナとアメリカのおばさん」には、アンナたち家族が料理をする場面が出てきます。
アメリカに住んでいるスマイルおばさんは、アンナのあこがれです。そんなおばさんが帰ってくることになりました。おばさんをかんげいしようと、みんなでごちそうづくりにはげみます。
おかあさんとおばさんたちは、汗を書きかき、ぐつぐつとにえるおなべの中をかきまぜています。
ジョイやクラリティ、コモンセンスたち、大きい女の子は、ゆでたヤムイモとキャッサバとキビを、うでがだるくなるくらい、たくさんたくさんつぶしました。
おじいさんは、アメリカでの生活の長いスマイルおばさんが、アフリカふうのやりかたをわすれてしまったのではないかと、心配でたまりません。指をつかう、むかしながらのアフリカの食べ方をわすれてしまって、ナイフとフォークしかつかわないのではないかとか、むかしながらのアフリカの服ではなく、ジーンズしかはいていないのではないかと言うのです。
でも、帰ってきたスマイルおばさんは、昔ながらのアフリカの服を着ていました。
さて、食べ方はどうでしょうか?
まず出てきたのは、ピーマンのスープです。
それから、オクラのシチューと、エバとよばれる、キャッサバでつくったおもちが出てきました。
このおもちを指でちぎって食べるのがむかしながらのアフリカの食べ方です。みんなが注目するなか、スマイルおばさんが食べはじめます。
おばさんはまず、食べていいですか、とたずねるように、れいぎ正しくおじいさんとおばあさんを見ました。
おじいさんが、おばさんにうなずいて、「おあがり、スマイル」と言うと、おばさんは、水の入った小ばちをまわしてもらって、指をあらいました。
それから、右手の指さきでエバをひと口ぶんとって、じょうずにおだんごにまるめ、オクラのシチューにひたして、口の中にいれました。
アティヌーケが生まれたナイジェリアはアフリカでいちばん人口の多い国で、アンナたちがくらしている町の名前は書かれていませんが、近くに海やラグーンがあるところから、たぶん、ナイジェリアでいちばん大きな町、ラゴスでしょう。
アンナ・ハイビスカスの物語は、内戦や難民の話ではない、アフリカのふつうの女の子のお話です。そのなかに、貧しい人とゆたかな人がいることなどもさりげなくえがかれています。イギリスではぜんぶで8冊出ていて、絵本もあります。
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オクラのシチュー
【材料】
牛肉切り落とし 200g
オクラ 30本
玉ねぎ 1個
にんにく 3片
輪切りとうがらし 適量
水 1.5リットル
食塩 ひとつまみ
固形スープの素 2個
植物性オイル(ヤシ油が理想) 適量
【準備】
1 牛肉はひとくち大に切る。
2 玉ねぎ、にんにくはみじん切りにする。
3 オクラはへたの部分を切り落とし、1~2mm厚さの輪切りにする。板ずりは不要。
【作り方】
1 厚手のなべに水を入れてわかす。ふっとうしたら、食塩を加え、肉、玉ねぎ、にんにく、とうがらしを入れて中火でしばらくにる。あくは取らない。
2 野菜がやわらかくなったら、固形スープの素とオクラを加え、またしばらくにる。
3 塩、こしょう(分量外)で味をととのえ、仕上げにオイルをたっぷりまわしかける。
4 白いごはんにかけて食べる。あれば、ゆでたヤムイモでつぶしてまるめたものをひたして食べる。
【備考】
アフリカでは、食べることは飲むことで、食べるときにはかまずに飲みこむそうです。材料を切ったあと、うすですりつぶしてからなべに入れると、よりアフリカ風になります。
本来は調味料の代わりに、干し魚やくん製の魚、干しエビなどを入れ、とろみづけに乾燥オクラの粉を入れますが、手に入りにくいので省略しました。
ヤシ油を入れると、仕上がりが真っ赤になります。どくとくなにおいがあるので、苦手な人もけっこういるとか。
【参考】
『世界の食文化 11 アフリカ』(小川了著/農山漁村文化協会)