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読書感想文「成瀬は天下を取りにいく」

何にも予定がなかった今日。明日から4月だと気づいて「今のうちに定期を買っておかねば!」と出かけた帰り、ふと立ち寄った本屋さんで買いました。

あらゆる本屋さんで見かけては「いっぱい積読があるんだから」とスルー、けれど本屋大賞にノミネートされてからはより一層目に入るようになっていたこの本。

何軒かカフェをはしごして、読み切りました。おもしろかった!

1日で読み切って、しかも感想をまとめる時間まである日なんて、そんなにない。そう思って、noteを書くことにしました。


こんな人におすすめ

  1. さらっと読みたい、重たい本を読める気分じゃない

  2. 爽やかな読後感が好き

  3. 地元や学生時代を思い出してぎゅっとなりたい

1と2については、今の私のこと。この本はぴったりでした。

嫌なことがあったわけじゃないのに、何もやる気がしない。暇な時間もダラダラ過ごす。そんな自分にモヤモヤして、ビジネス本に助けを求めて読み散らかしては、どれもこれもピンとこない・・・また何かモヤモヤ・・・

というムードだった私を、明るい爽やかな気分にしてくれました(笑)
中途半端にビジネス本や自己啓発本を読むより、ずっとよかったです。

しばらく読む気になれていなかったけれど、「やっぱ小説っていいな・・・」と思わせてくれました。

でも小説って、装丁やSNSで読んだ感想に反して、めちゃくちゃ心にダメージを負わせてくる作品もあるじゃないですか。
人の感じ方なんてそれぞれなので当然なのですが。
同じ学生ものでも、ものすごく心苦しくなる話もある。たとえハッピーエンドが待っていたとしても、その過程が苦しすぎると読み進められない。
かといってファンタジーやミステリーものにも今はついていけそうにない。

そんなテンションの人にすごくおすすめです。

なんか生々しいキャラクターも

よく言われている通り、タイトルにある成瀬がぶっ飛んでいます。でも学生時代を思い返してみると、周りに合わせることなく自分のペースを貫いていた人って、1人や2人、出会ったことのある人は多いのではないでしょうか。

そんな人と自分の関わり方を思い出しながら、それに付随して学生時代のいろんな場面を思い出しながら、読み進めていました。

成瀬を取り巻く人々は基本的に「いい人」が多くて、するする読めるけれど「めっちゃいい!」ほどは思わないまま、3話目までを読んでいました。

が、4話目であるキャラクターと出会いました。
(以下、軽いネタバレを含みます!)

それが作中で「ぬっきー」と呼ばれている子なんですが・・・

成瀬と同じ膳所高校に通う女の子です。この子の抱えるあれやこれやが、やけに生々しく、苦しかったです。

家庭環境や友人関係に複雑な何かがあるわけでもない。私からすれば、膳所高校に通っているだけで、ものすごく立派な個性の持ち主なのですが。

ひたすら自分を押し殺す彼女に、ムカムカしてきてもいいぐらいなんだけど、そうはならない。
友達関係も班活動もパッとしない大義名分として、「東大を目指す」なら許されるだろう、でも東大合格のためにゴリゴリ勉強しても周りの目が気になるから、ほどほどに‥
って、彼女の思考はどこまでもかなしい。
でも、「あるよなあ」と思わされます。

何か頑張らなきゃ、キラキラしなきゃ、青春を謳歌しなきゃ。
それは全部「しなきゃ」じゃなくて「したい」の裏返しなんだろうけど、できない自分に絶望しないために、ひたすら勉強に打ち込むぬっきー。

自分に自信がない、でもプライドが高い感じもリアルだなーと思います。
自己肯定感が低そうな雰囲気を漂わせておいて、成瀬など周りの人物が予想外の行動をしてくるとイラつくんですよね。

膳所高校って、素で「東大を目指す」と言えるぐらいの進学校です。
そんな目標を掲げられる彼女も、私からすれば「すごい人」「特別な人」です。彼女と私は全然違う人だけれど、彼女のそんな思いは共感できてしまいました。

いい人すぎたりして、少し現実味の欠けるキャラクターが多い印象ですが、彼女だけ「作者自身を投影してるのかな?」と思うぐらいリアルでした。

ちなみに、続く5話が思いがけずめちゃくちゃキュンとする話で、ドキドキレベルでいえば5話が1番好きでした笑

憧れてしまう、強い地元愛

私の地元は、関西の中途半端な(失礼!)地方都市。物語の舞台である大津市と、共通するような街並みです。いや、大津よりもうちょっと田舎かも。
中学時代から「こんな場所、早く出て行きたい」と思っていたタイプで、高校から県外に出てしまいました。

そのせいか、大学生になった頃から地元愛の強い人たちに密かに憧れがあります。
「湖西線、また止まってるやん」と話す滋賀県民の友人たちを、「大変そうやな」「ほんま田舎やねんな」と他県出身の友人と共に茶化しながら(自分も地方出身のくせに笑)も、彼らの謎の連帯感のようなものを感じていました。
不便だ、田舎だと言いながら、「なんだかんだ、地元好きよな。その辺、私とはちゃうなー」と思っていました。

そのときの疎外感、地元を愛せない罪悪感を、読みながら思い出しました。

だって私は、地元のデパートが閉店すると聞いても、駆けつけないと思います。いつかあのデパートが閉店するとき、西武大津店が閉店したときのような地元民の盛り上がりもないだろうなと思うんです。
その点、西武大津店が閉店するときの様は、私が出会ってきた「滋賀県民っぽさ」「地元を愛している人っぽさ」を感じました。

私は、膳所駅の周りがどんな場所かも知っていますし、ミシガンにも乗ったことがあります。だから、物語の舞台をリアルに思い描くことができます。でも都会志向の強かった私は、大津に生まれていても「都会に出て行きたい」と思っただろうなと思います。

成瀬は「地元を愛している」なんて言ったり、そんな描写があるわけではありません。でも、彼女が大人になって振り返ってみると、かけがえのない故郷として地元を思い返すんだろうなと思います。

私は故郷を思うとき、どうしても罪悪感を感じてしまいます。だから、そんな成瀬がちょっと羨ましいです。

続編も楽しみ

読み終わった後、続編も買って帰りました。
今から読むのが楽しみです。その後が気になるキャラクターが何人かいるので、彼らがどうなったか見届けられたら嬉しい。

だらだらと思いつくままに書いてしまいました。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!

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