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戦車は来ない

どのくらい続いたのか
それは平和だったのか
単なる腐敗か残飯か
自由はあったかもしれない
失われたものであれば
せめてそう呼ぶべきか

他愛ない真摯と享楽が
潰れた町工場が製造する
きらびやかなメッキのように
僕達の暮らしの装いを
幾重にも覆っていたから
それなりに楽しかったのだ

戦車は来ない代わりに
死に至る毒が散布され
墜落する鳥や異形の獣
倒れ逝く病人を見ても
気付く者はいない
僕達もここにいるのだと

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール