松原和之の「教育考現学」

コアネット教育総合研究所所長の松原です。教育に携わる皆様、特に学校の先生方へ情報を提供…

松原和之の「教育考現学」

コアネット教育総合研究所所長の松原です。教育に携わる皆様、特に学校の先生方へ情報を提供したいと思っています。よろしくお願いします! コアネット教育総合研究所は、教育と学校経営専門のシンクタンク&コンサルティング企業です。https://core-net.net/

最近の記事

給特法はこのままでいいのか

こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。 普段の更新が滞っていたのに、ちょっと趣旨が異なる投稿をすることをお許しください。 どうしても納得できないことが起きているので、微力ながら反論します。 何かというと、給特法に関する中教審の議論内容です。給特法というのは、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」のことで、公立学校の教員の給与等を定めた法律です。 教員には、残業代を払わない代わりに、給料の月額の4%に相当する額を「教職調整額」として支給

    • 探究と総合型選抜入試とウェルビーイング

      子どもたちに「何のために勉強するの?」と聞かれたら、何と答えますか。 私は「自分が幸せになり、周りの人、そして世界中の人たちが幸せになるためだよ」と答えます。 抽象的な上に綺麗事に聞こえるかもしれません。しかし、価値観が多様化する世界の中では、これ以外に表現のしようがありません。 「いい大学に入って、いい企業に就職して、裕福な暮らしをするためだよ」 これも1つの答えかもしれません。実際、戦後の昭和時代にはそのような価値観を持つ方が多かったと思います。その時代には、「裕福な

      • 「遊ぶように学ぶ」STEAM学習

        こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。 STEAM学習について連載してきましたが、連載は今回を最終回として、一旦区切りをつけようと思います。 ということで、今回は、STEAM学習の今後の展開について述べたいと思います。 昨年度(2022年度)から高等学校で新しい学習指導要領が適用されました。全国の高校1・2年生の多くは、必修科目となった「情報Ⅰ」の授業を受けていると思います。 情報Ⅰでは、(1)情報社会の問題解決、(2)コミュニケーションと情報デザイン、(3

        • 2024年 新年のご挨拶

          こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。 新年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。 昨年は多くの方々に支えられ、様々な取り組みを実現させることができました。 note読者の皆様、学校の先生方、取引先の企業の方々、会社同僚のみんな、その他多くの支えてくれた皆様に感謝を申し上げます。 引き続き、本年もよろしくお願いいたします。 今年の私のスローガンは、「もう一歩」です。 仕事をしていると壁にぶち当たることもあります。逆風でもう先に

        給特法はこのままでいいのか

          STEAMは「創造的探究学習」

          今回は、STEAM学習と探究学習の違いについてお話をしていきましょう。 このnoteの2023年10月29日の投稿で、私は「STEAM学習は探究学習の一部だ」と述べました。STEAM学習は、探究学習と同様に、問題解決学習であり、実際の社会や生活の中から問題を発見し、教科を融合して考えていく学びです。その点では、探究学習とほぼ同じです。しかし、探究学習とは異なる点もたくさんあります。 STEAM学習では、問題の解決にあたって、論文を書いたりプレゼンテーションとしてまとめたり

          STEAMは「創造的探究学習」

          STEAM学習--アートとデザイン

          今回は、STEAM学習における「A」の重要性についてお話をしようと思います。STEAMにおける「A」は、「アート」や「デザイン」のことだという説(マエダ派)と、「リベラル・アーツ(一般教養)」だと捉える説(ヤックマン派)があることを第1回目でお話ししました。そして、私はどちらかというと前者=「Aはアートやデザインのことだ」に近い考えを持っています。 ということで、今回は「STEAM学習において、なぜアートやデザインが大切なのか」という話をしていきたいと思います。 「アートや

          STEAM学習--アートとデザイン

          STEAM学習--なぜものづくりが大事なのか

          STEAM学習の話の3回目です。 前回、STEAM学習はものづくりの学習過程が大事だという話をしました。今回は、なぜ初中等教育にものづくりが大事なのかをお話ししていきたいと思います。 1つは、創造力の必要性です。前回、日本はグローバルビジネスから取り残されているという話をしましたが、その原因はイノベーションを起こせる創造力豊かな人材が不足しているからです。そして今後は、持続可能な社会をつくるための諸課題を解決するためにもイノベーションは欠かせません。AIやIoTなど科学技

          STEAM学習--なぜものづくりが大事なのか

          STEAMの「A」は⁉

          STEAM学習の話の2回目です。 私は「STEAM教育」ではなく、「STEAM学習」という言い方をしています。 米国でも、STEAM Educationといいますから、STEAM教育というのが素直なのですが、あえてSTEAM学習(STEAM Learning)といっています。 というのも、教育という言葉が大人目線になっていて、子どもが受け身になる感じがする言葉だからです。子どもを主語にするならSTEAM学習といった方がいいと思いませんか。 子どもたちに向かって「今日はSTE

          STEAMの「A」は⁉

          STEAM学習とは

          本日から数回にわたってSTEAM学習の話をしていきたいと思います。以前の私のブログからの転載の部分が多いので悪しからず。 最近、日本の初中等教育においてSTEAMという言葉をよく聞くようになりました。はじめは経済産業省が言い始めたのですが、そのうち文部科学省もこの言葉を使い始めました。いまや学校教育の本流に浸食してきて、もう先生たちも無視できない存在になってきました。 また新しいことを始めるのかよー! STEAMって何だよー⁉︎ (蒸気か⁉) 英語やカタカナを使うなよー!

          探究とPBL、CBL

          前回までは、探究のスキル面に焦点をあてて話を進めてきました。 今回は、探究と似た概念の言葉で「PBL」というものがありますので、その話をしていきましょう。 PBL(Project-Based Learning=プロジェクト型学習)は、「実世界に関する解決すべき複雑な問い、仮説を、プロジェクトとして解決・検証していく学習」(溝上慎一著「アクティブラーニングとしてのPBLの探究的な学習」東信堂、2016)です。 探究学習とほぼ同様の概念ですが、「プロジェクト」という言葉に注目

          探究とPBL、CBL

          探究のお作法 「まとめ・表現」編

          今回は、いよいよ探究サイクルの最終段階「まとめ・表現」について、お話をしていきます。 探究学習はサイクルであり、課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現→振り返り→次の課題設定→・・・と続くといいました。ここまで、段階ごとにそのお作法について解説し、やっと最終段である「まとめ・表現」へと駒を進めてきました。 まとめ・表現におけるお作法その1として、「目的に応じた様々な表現方法があることを知る」を挙げておきましょう。探究結果の表現ですから、あるテーマに関して客観的な

          探究のお作法 「まとめ・表現」編

          探究のお作法 「整理・分析」編

          今回は、探究サイクルの第三段階「整理・分析」についてお話をしていきます。 疑問を持ったことから「課題の設定」をし、そのことに関する「情報の収集」をしたら、それらの情報を「整理・分析」する段階に進みます。 情報を「整理・分析」するのは中高生にとってはとても難しい作業です。課題解決に必要な情報かどうかを見極めたり、論理的・批判的に考えを進めたりすることは社会人になっても難しい仕事の一つです。 情報の整理・分析は、まず既に分かっている「事実の確認」から始まり、自ら得た情報によ

          探究のお作法 「整理・分析」編

          探究のお作法 「情報の収集」編

          今回は、探究サイクルの第二段階「情報の収集」についてお話をしていきます。 自分の疑問から始めて、課題と仮説を設定したら、次はこの仮説を検証するための情報を収集することになります。 情報を収集するということは、調査をするということです。中高生ができる調査の方法は3つあります。  1)文献調査  2)アンケート調査  3)フィールド調査 これらから「適切な調査方法を選ぶ」というのが、情報の収集のお作法その1です。適切に選択するために、それぞれの調査のメリット・デメリットをみ

          探究のお作法 「情報の収集」編

          探究のお作法 「課題の設定」編

          今回は、探究のお作法の話をします。 探究には一定の型があります。茶道や華道に、この型だけは守らなければならないという動作の決まりがあるように、探究にもお作法があるのです。しかし、茶道や華道でお作法を守ることが目標ではないのと同じで、探究においても、型を守ることは目標ではなく、その上に自ら主体的に考え、自分のオリジナリティを発揮することが目標です。 しかし、まずは基本の型を身につけることが大事ですので、その説明をしていきましょう。 探究のサイクルである「課題の設定」「情報の

          探究のお作法 「課題の設定」編

          学びの本質としての探究学習

          前回、探究学習とは、自ら課題を発見し、その課題を解決するためのプロセスを体験しながら実社会に役立つような資質・能力を身につける学習のことだといいました。 そのプロセスとは、 課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現→振り返り→次の課題設定→・・・ というサイクルです。 そうです。探究学習はサイクルになっているのです。 探究とは物事の意義や本質を見きわめようとする思考や行動ですから、終わりはありません。一つの問いに答えを出せば、必ず次の問いが生まれます。いや、探究の過

          学びの本質としての探究学習

          探究学習とコンピテンシー

          資質・能力(コンピテンシー)を育てるためには、教科の授業をコンピテンシー・ベースにしなければならないという内容で、ずっとお話をしてきましたが、ここから話の軸足を「総合」や「探究」の方へ移していきましょう。 総合的な学習の時間は、今から20年以上も前の2002年の小学校学習指導要領改訂から導入されました。目的は、「教科横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育成、学び方やものの考え方を

          探究学習とコンピテンシー