『医龍』に学ぶ教師論⑧
漫画『医龍』の台詞をもとに教師としてのあるべき姿を考える連載の第八弾です。
前回は、鱈淵純が発した「僕はただ、スキルアップのチャンスが欲しかっただけだよ。」という言葉をもとに教師論を考えました。
今回は、「ーーえてしてそんな子が、いい医者になるものよ。」という言葉をもとに、教師論を考えます。
漫画『医龍』の第九巻に、研修医の伊集院登が、手術が怖いとバチスタ手術を行うチームのメンバーに話すシーンがあります。
同期の鱈淵純に、患者が死ぬことが怖いなんて医者に向いていないんじゃないかと言われた伊集院は、自分は医者に向いていないかもしれないと、弱気になっていました。
そんな伊集院に対して、チーム結成者の加藤晶は、大抵の研修医は実習になると率先して切りたがるけれども、中には臆病でいつもビクビクしながら切っている研修医がいるという話をします。
その話に続けて加藤が伊集院に伝えた言葉が、次の台詞です。
「ーーえてしてそんな子が、いい医者になるものよ。」
加藤は、率先して手術をしたがる研修医よりも、臆病でいつもビクビクしている研修医の方が、将来いい医者になるものだと言うのです。
それは、率先して手術したがる医師のモチベーションが功名心に裏付けされているのに対して、臆病でいつもビクビクしている医師のモチベーションは患者を助けることに裏付けされているからではないでしょうか。
教師にとっても同じことがいえます。
いろんな実践に前向きな教師がいます。
一方で、子どもたちに有意義な学びを保障できたかを不安に思う教師もいます。
どちらも、大切な姿勢であるように思いますが、後者の気持ちを持ち合わせていなければ、前者の気持ちは生かされないように思います。
功名心からいろんな実践に励む教師の実践に意義はありません。
子どもたちに有意義な学びを保障することができたかどうかということを日々振り返り、その中で、うまくできなかったかもしれないと不安に思うからこそ、その自分の課題を克服するためにいろんな実践に前向きに取り組むことに意義があるのです。
私は、そのように考えます。
今回の記事では、『医龍』の「ーーえてしてそんな子が、いい医者になるものよ。」という台詞をもとに、教師論を考えました。
いかがだったでしょうか。
それでは、次回も、お楽しみに。