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【47エディターズ】戦後80年に向けて伝えたいこと、「男性SOS」「ローカル線」「闘病家族の思い」今を切り取るニュースがここに
共同通信では、注目ニュースの背景や、知られていなかった秘話、身の回りの素朴な疑問などを深掘りしたインターネット向けの記事「47リポーターズ」を随時配信しています。
当コーナー【47エディターズ】では、現場の記者が書いた記事の最初の読者であり、その狙いや内容を精査し、時に議論を交わして編集を重ねたデスクが、8月の47リポーターズ計7本をご紹介します。
■ 60年前、広島・長崎の被爆者は世界で惨状を語った トルーマン元米大統領やオッペンハイマー博士とも面会
今から60年前の1964年に、広島や長崎の被爆者25人が米国や旧ソ連などを訪れ、被爆体験を語った「世界平和巡礼」をご存じでしょうか?
恥ずかしながら、私は記事で初めて知りました。参加者らは原爆投下を命じたトルーマン大統領や、「原爆の父」故ロバート・オッペンハイマー博士とも面会しています。 広島支局の下道佳織記者が広島で被爆した参加者らに取材して記事をまとめました。トルーマン大統領やオッペンハイマー氏は被爆者を前にどのような対応を取ったのか、歴史的にも興味深い内容になっています。(岸本)
■ 腹痛で作業を休んだ自分は生き残り、同級生は全員亡くなった 被爆60年経て決意「伝えなくては」。親友の遺品を前に、広島で語り続ける
来年で米軍による原爆投下から80年となる広島市の原爆資料館。2023年度の入館者が200万人弱と過去最多となりました。外国人観光客も多く訪れる資料館の収蔵品の一つ一つには、惨状を伝える悲しい物語があります。広島支局の小作真世記者(現神戸支局)と玉井晃平記者が、被爆者や、思いを受け継ぐ語り部から話を聞きました。被爆地、広島の願いに触れてもらえれば幸いです。(岸本)
■ 核廃絶を訴えて70年、ノーベル平和賞候補にも名前が挙がる団体が立つ岐路 今後の活動どうなる、取材で見えてきたそれぞれの判断
広島や長崎の被爆者の当事者団体、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)。かつては各都道府県に加盟団体がありましたが、戦後79年がたち、高齢化などでこれまでのような活動が厳しくなっているところも少なくありません。共同通信大阪社会部では今年夏、各加盟団体にアンケートを行い、その結果を報道しました。長年被爆者の支えであり、その声を世界に伝えてきた被団協の現状を通して、核兵器のもたらす結果や戦争体験の継承について考えてもらえれば幸いです。(中田)
■ 軍事施設だった甲子園、貴重写真で明らかになった「空白期」の姿 「野球の聖地」の別の顔、アメリカ人写真家が神戸市文書館に寄贈
開場100年を迎えた甲子園球場では、今年も手に汗握る熱戦が数多く繰り広げられた。特に島根県の大社高の快進撃には心を打たれた。信じられないが、戦時中、球場内には軍需工場ができ、周囲は焼け野原。球音は遠ざかっていた。球児が真剣に泣き、笑えるのも、平和であるからこそ。来年は戦後80年。まずは甲子園の100年を知ることから、平和について考えてみたい。(清田)
大阪社会部の西村曜記者による写真特定の経過はこちらのnoteで。
■ 気付くまで15年「妻からDVを受けていた」。エスカレートする支配と暴力、絶望の日々 世間体で相談しづらい男性たちのSOS「ベッド脇にムカデの塊」「みそ汁に下剤」―
女性は被害者で男性は加害者と思われがちなドメスティックバイオレンス(DV)問題。表に出ることが少ない、男性が被害者となるケースについて徳島支局の別宮裕智記者が光を当てました。
当事者ですら固定観念にとらわれて、「自分がDVの被害者であることに気付かなかった」という人が多いそうです。当初提稿されたDVの詳細は唖然とするほどでしたが、その後、「記事化が怖くなった」との被害者の声で個人が特定されそうな表現をことごとく外すなどの対応をとりました。DVが残すトラウマの深さを思い知りました。
別宮記者はポッドキャストでも取材の内容を紹介しリスナーからは「初めて聞く案件で、今後の状況などぜひ取材を続けて、記事にしてほしい」との声が寄せられたそうです。別宮記者はその後、男性DV被害者の自助グループが立ち上がったニュースも取材しました。(中川)
■ 「事業者だけで公共交通維持は難しい」、赤字山積のJR四国 待ったなしのローカル線議論、新旧社長を直撃
JR四国は6月に社長が交代しました。経営難に苦しむ鉄道会社のかじ取りを担うのは、生え抜きの四之宮和幸氏。コロナ禍が収束しても乗客は元の水準に戻らず、若手社員の離職も相次いでいます。八方ふさがりの状況で地域の公共交通を守る手だてはあるのか。高松支局の広川隆秀記者が前社長の西牧世博氏と合わせて新旧の経営トップにインタビューしました。日本の人口減少はこの先ジェットコースターが下降するがごとく加速します。四国で起きていることは日本全体の未来図です。どうか他人事と思わず、多くの方に読んでもらいたい記事です。(浜谷)
■ カメラの先にはALSの女性 地域新聞の編集長が映像で伝える闘病家族の思い、原点はがんになった父との別れ
がんで亡くなった父の後を継ぎ、大阪市鶴見区の地域新聞編集長となった息子の新たな取り組みについて、大阪社会部の後藤直明記者が記事をまとめました。息子は普段から言えなかったことを手紙で父に伝えた経験を生かし、闘病中の家族同士が思いを伝え合うことをサポートする事業を始めます。家族のつながりを描く、心温まる記事なので、ぜひ読んでみてください。(戸口)
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