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サユリ

近くのシネコンで映画「サユリ」を観て来ました。
監督:白石晃士

以下、ネタバレ感想を述べますので、注意してください。

(少し、間を空ける)

劇場の雰囲気

平日の昼間に観て来ました。
平均より少し小さめのスクリーンで、客席は8割くらい埋まっていました。
ほとんどが夏休みの高校生・大学生だったと思います。
R15指定ということで、小中学生は居ませんでした。
グループ客も少し入っていましたが、カップル客が多かったです。

映画が終わって客席が明るくなった時の雰囲気は良かったです。
多くの人が笑顔でした。

filmarks のレビューを見ても、肯定的なコメントが多い印象です。

僕の感想

そこそこ面白かったです。

先日、「オカルトの森へようこそ」を Netflix で観ました。
(その感想記事は、後日、投稿します)
直後、僕は白石晃士に関する Wikipedia を見ました。
彼の年齢が気になったからです。
ひょっとしたら僕と同世代では? と思ったのです。
1973年生まれ。
思った通り、バーチャル美少年高校生の僕と世代的に近かったです。
1980年代に多感なティーンエイジを過ごし、その当時のポップ・カルチャーの洗礼を受けた世代ですね。

「サユリ」に関して言いますと、前半のホラー・パートには1980年代のスラッシャー映画の雰囲気があります。
Jホラー・スタイルの感じも少し有りますが、それよりも往年のハリウッド・ホラーの風味を強く感じます。

ホラーからアクションにジャンルが変わった後半のノリも、1980年代っぽいですよね。

多感な少年時代の心に刻み込まれたポップ・カルチャーに向き合うのって、難しいですよね。
何十年という年月が経過していますから。

1980年代ならではの輝きとか魅力があるのは事実だとしても、その一方で、現代の方が洗練されているのも、また事実ですし。

かつて少年時代に好きだった物を現代によみがえらせるとして、どういう方法で蘇らせれば良いのか?
アレンジを加えて現代風に洗練させるべきなのか?
それとも、1980年代特有の「野暮ったさ」も含めて再現すべきなのか?

……と、こんな事を考えながら焼き鳥屋で一杯飲んで帰りました。
僕、普段は禁酒しているんですが、この日はチート・デイにしちゃった。

ボケる以前のお婆ちゃんって、元からあんな感じのキャラだったのかな?
ちょっと疑問に思いました。

霊感のある同級生の少女が魅力的でした。
近藤華。
女優が全力を出し切れる監督は、良い監督です。
映画は女優のものですから。
映画の中心は女優です。(個人の意見)

サユリは、幽霊には珍しく肉体的な暴力を振るいます。
しかし、それは被害者がそう思い込んでいるだけの事で、実際には心筋梗塞などの発作として処理されます。外傷も現実には存在しません。
つまり、肉体攻撃に見せかけた精神攻撃なんですね。
これはリング以来、日本のホラーの伝統です。
何故なぜこういう仕掛けになっているかというと、物語世界と僕らの住む現実世界を地続きにするためです。

たとえば、あるホラー映画で大勢の人間が不可解かつ残酷に死んだとしましょう。
仮に、それが現実世界の出来事だとすると、そんな大事件なら警察も政府もマスコミも国民も、日本中が大騒ぎになっているはずです。
しかしそんな大ニュースは、現実には存在しません。
僕らは無意識に、
「なぁんだ、所詮しょせんこれは別の世界の物語なのか」
と気づいて、どこかめてしまう部分がある。

それを回避するために、日本のホラーでは、
「登場人物の主観では恐ろしい惨劇が進行しているんだけど、世間の客観的な視線で見ると、すべて科学的に説明のつく、有りふれた死に過ぎない」
という仕掛けをほどこすんですね。

こういう仕掛けは、わりと日本のホラーに特有の傾向だと思います。
ハリウッド映画のラストなんかは、
「被害者の生き残りが警察に保護され、パトカーの回転灯が光る中でCNNのレポーターが惨劇のあらましを全米に向けて報道する」
っていうタイプが多い気がします。
事件が大ぴらになる事で、物語の世界線と僕らの住む現実の世界線が分離しても、それはそれで良いと思っているんですね。
もちろん、現在は世界中のあらゆるカルチャーが相互に影響しあう時代ですから、「比較的そういう傾向がある」とは言えても、「絶対にそうだ」とまでは言えませんけれど。

この「サユリ」の物語も、
「どれだけ大量に人が呪い殺されたとしても、あくまで表面上は医学的に説明のつく常識的な死因である」
という日本式の幕引きになります。
それ自体は良いのですが、サユリの家族の死体には、お婆ちゃんの拷問によって付けられた外傷が残っていると思うのですが、警察に対しては、どう取りつくろったのでしょうか?
そこが少し気になりました。

追記(2024.8.26)

いま気づいたんですが、ホラー映画が、
「被害者の主観では悲惨で残酷な死なんだけど、世間の客観的な視点では医学的に説明のつく平凡な死に過ぎない」
っていう仕掛けを作るのは、物語世界と現実世界を地続きにすると言うよりは、
「現在進行している物語の途中で、警察やマスコミが騒がないようにするため」
という目的の方が大きそうです。
その方が、主人公の孤独感と恐怖心が際立きわだちますからね。

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