5年後に退職する新卒サラリーマン【第三章】 (6)
第一章 <激動の就活編> は、こちらから。
第二章 <戸惑いの新入社員研修編> は、こちらから。
「安斎さんは、" 本社の人” じゃけぇねぇ」
この言葉を、何度かけられたことだろう。
広島に来て、5日目。
日系大手メーカー、株式会社L&Ps(ラブアンドパンティーズ)の地方営業支店の一つ、「広島支店」。
いや、「広島支店」というのは、実は通称であり、正式名称は、株式会社ラブアンドパンティーズ販売中四国・広島本店である。
つまり、ここは販売「子会社」の一つである。私やチャラ澤は、この子会社に「出向」という扱いになっている。
「プロパー」と呼ばれる子会社所属の中四国エリア社員たちと、私たちのように「本社組」と呼ばれるグループ本体の親会社からの出向者との間には、明確な壁があった。
まるで、半沢直樹だ。
別に、この小説が、明らかに半沢直樹に影響されているわけではない。
いや、安斎さん…… 2020年の「100日後に死ぬ海外駐在員」の頃から、半沢直樹にめっちゃ影響受けてますやん。ラストシーンとかモロですやん…… というツッコミは、やめてくれ。そのツッコミは、私に効く。
とにかく……
とにかくだ。
始まったんだ。新卒1年目、広島での業務が。
「安斎君、ちょっと、倉庫からオパンティーギフトを運んできてくれる? 受付の在庫が少なくなってきたらしくて」
「はい!……あ、えっと、オパンティーギフトって、赤い方と、黒いやつと、どっちでしたっけ?」
「あんたバカぁ!? 一体どこの誰が、夏のこれから暑くなる時期に赤いオパンティーもらって嬉しいって言うのよ!? あのオパンティーギフト【RED】は、クリスマスシーズン用に決まってるでしょ!?」
「は、はい…… すみません…」
この広島で一緒に働く、「本社組」の先輩の一人、永野さんは、なかなか厳しい性格の人だった。恐らく、仕事が忙しくなるとイライラしてしまうタイプだ。
ここから先は
頂戴したチップで「餃子とビール」を購入させていただき、今後の執筆活動に役立てたいと思います。安斎に一杯おごりたい方は、ぜひチップをお願いいたします。