夜空に梯子をかけて
最上部は自宅のベランダから撮影した空、星の写真だ。星空を観るのは好きだ。決して天体に詳しいわけでも、星座を覚えるのが好きというわけでもない。なぜ好きなのか。よくわからない。しかしながら、なぜ好きになったのかというきっかけに関しては思い当たる少年時代の経験がいくつかある。
初めて流れ星を見たとき、初めて星座を認識できたとき。どちらも感動したのを覚えている。その感動は天体への興味に変わり、望遠鏡や双眼鏡で天体観測を行ったり、宇宙の図鑑を買って読んだりするようになった。
しかしそれらは所詮子供の趣味のようなもの。なぜ好きなのかというところを考えたい。私が星空に現在まで惹かれる理由は、感動では説明できない、もっと根源的なものであると感じている。おそらくそれは知的好奇心であり、宇宙という未知であり神秘的な空間に存在するロマンである。小学校の中学年頃、祖母に『宇宙への秘密の鍵』という本を買ってもらった。
著者はかのホーキング博士である。当時はそんなこと知る由もないが。とにかくこの本にのめり込んだ。私の知的好奇心のある種の出発点といっていいだろう。そこから星空を眺めるとき、その神秘的な美しさや不可思議な闇と光の拡がりにどっぷり浸かるようになった。余談だがホーキング博士については大学の相対性理論の授業で深く学んだが、その研究者としてのすごさは勿論、その研究分野の内容を小学生に分かるような物語に落とし込んでいたのかと驚いたのを覚えている。
秘密の鍵の続編は二作品目までしか読んだ記憶がないので、ホーキング博士の伝記映画である『博士と彼女のセオリー』とともにまた触れてみたい。
私の宇宙に対するロマンを芽生えさせたものはもう一つある。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』である。私の母が宮沢賢治の作品が好きだったこともあり、彼の童話作品はよく読み聞かせられていた。『よだかの星』や『なめとこ山の熊』などだ。しかし童話ではなかったからか、『銀河鉄道の夜』に関しては最初から自分自身の手で読んだ。おそらく当時の自分にとって、物語の文面から美しさを感じるという経験は初めてだっただろう。
人間の死という物語の一つのテーマについて考えることは勿論なかった。ただ幻想的な情景が頭の中で生成されては、それを一心不乱に真っ白なコピー紙に書き出していた。言うなれば大学生になってから周りでよく聞くようになった「エモい」という言葉の権化のような物語だろう。いつか、死んだ後でもいいから銀河鉄道に乗りたいな。そう本気で思う。同じく当時見た同作の映像作品にも、作品内で表現された幻想的かつ危うさすらある美しさに心を奪われたのを覚えている。こちらも死ぬまでにもう一回見たいな。
中学以降はこのように自分を貫くような作品には出会っていない。おそらく少年時代にしか体験できないことだったのだろう。なにか切なさとありがたさを感じる。しかしながら最近星空に関連しており、私が夢中になっている作品がある。『チ。―地球の運動について―』という漫画だ。
本作品はキリスト教的世界観と地動説というテーマの人間ドラマではあるのだが、真理と信仰の狭間に垣間見える宇宙(星空)の美しさ、偉大さにの描写には圧巻。物語としての完成度は勿論、豊富な歴史的描写も読み取ることができる、まさに面白くて勉強になる作品だ。是非見ていただきたい。後悔はしないだろう。
最後にちょうど良い機会だし宇宙関連(星空関係ないけど同じようなもんじゃん?)で知的かつロマンに溢れるものをふたつくらい挙げて終わろう。どちらも有名作品なので細かい説明はナシで!
読んでいただきありがとうございました。