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読書感想文: 分子レベルで見た触媒の働き


概要

 固体触媒が働く機構を分子レベルで解説している。分子性触媒、酵素に関しては触れていない。表面化学の観点から始まり、熱力学、反応速度論、活性サイトの具体的な構造、実際に触媒の働きを観察する方法に関して分子レベルでの解説をしている。比較的平易に解説しており、専門分野の人でなくとも高校の化学I程度の知識があれば読める。

感想

 まず本書の題材である触媒について軽く触れる。触媒は「化学反応の推進剤」である。たとえ進行しうる化学反応でもその速度は極端に遅いことがある。身近な例で言えば、植物油脂に水素を作用させるとマーガリンになるが、そのまま2つを交ぜてもマーガリンにならない。しかし触媒を共存させることでその速度を速めることができる。マーガリンの場合はニッケルが触媒となる。触媒は肥料の合成や自動車の排ガス浄化など、我々の暮らしを様々な場面で支えている。

 本書は私が固体触媒に関する基礎的な内容をしるために役に立った。私はそれまで分子性触媒の研究をしていたが、訳あって固体触媒の研究を開始すると担った。その時、私は「分からないことが分からない」状態であったため、固体触媒開発における常識などを知るために購入した。あとから振り返って思えば、私は本当に固体触媒に関して知らない状態であったことを痛感できた。それまでぼんやりと「固体触媒の表面に気質がくっついて反応する」程度の理解だったが、本書で熱力学・速度論的な知見などを学ぶ事ができた。後に、この知見を基に分子性触媒と固体触媒の違いについて調べていくのだが、それはまた別のお話。

 本書を読んでいてずっと感じたことは、(正直分野の方々には失礼だとは思うが)思っていた以上に固体触媒に関する理論は複雑だということである。それまで固体触媒は「基質の吸着エネルギーが高すぎず低すぎない触媒がいい(Sabatier理論)」しか知らなかったため、「なんかいい感じに材料組成変えていってスクリーニングしていったらいいんだな」ぐらいの理解度だった。しかし本書は、ある結晶面でも段差や穴(ステップや欠陥)という不均一さ、基質の振動によって反応の進行しやすさが異なるなど、目から鱗の知見が多かった。

 本書は触媒の仕組みについて学ぶための知見をかなり分かりやすく、なおかつ基礎的な内容から解説している。高校では「◯◯を触媒として☓☓を合成する」といった内容しか教わらなかった。しかしなぜ触媒が化学反応を早められるのかについてかなり詳細に解説している。高校の履修内容では満足できず、更に発展的な内容を以て化学反応の仕組みについて理解したい人におすすめしたい。

こんな人におすすめ

  • 化学反応に興味がある人

  • 高校化学程度なら分かる人

余談

 人間って案外原理がわからないまま触媒を使っていることに驚いた、

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