チューイングキャンディとチューインガム「エルマーのぼうけん」
9歳の少年エルマーがどうぶつ島に囚われたりゅうを助けるためにリュックサックに詰め込む道具と、冒険の舞台となるみかん島とどうぶつ島の地図。
子供心をくすぐる要素満点の「エルマーのぼうけん」シリーズは、ニューヨーク生まれの作家ルース・スタイルス・ガネットによって1948年に出版された。日本では昨年日本語版刊行60周年を迎え、今なお世界中で愛され続けている児童文学の傑作だ。
助けたのら猫からかわいそうなりゅうの子の話を聞いたエルマー少年は、リュックに荷物を詰め、りゅうを助ける冒険に出発する。冒頭にも引用した持ち物リストは、小学生だった私が気に入っていた場面のひとつだ。
チューインガム、ぼうつきキャンディーと遠足に行くような持ち物。さらには虫めがね6つと。いやいや6つも要るか?とつっこみたくなるが、エルマーはこれらの持ち物を上手に活用してりゅうのもとへと進んでいく。その活躍ぶりは昨今流行りの謎解きのようなスッキリ感がある。
また、見開きに描かれた地図には細かい説明が書かれているので、物語と照らし合わせながら読み進めていくのも面白さのひとつだ。
私も子供の頃に何度も読み返していたのだが、この本の影響か、スーパーのお菓子コーナーでやたらとガムを欲しがる子供だったように思う。
これは完全に余談だが、当時好きだったガムと言えばロッテのトーマスとかポケモンの包み紙のやつだったよな~と思って調べてみたら、なんと生産終了していた。
しかもこれ、チューイングキャンディでチューインガムとは別物だった。板ガムと同じ形状だったせいでガムという印象が強かったけれど、確かに溶けてなくなるからガムではないんだな。
ちなみにチューインガムは樹脂ベースに甘味を加えたお菓子で、私達が普段噛んで吐き出すガムはこれのこと。一方でチューイングキャンディは砂糖を煮詰めた飴のようなお菓子ということで、作り方も材料も全部違う。名前の通りキャンディーで、ハイチュウとかかむかむレモンとか、なんかそういう感じ。
さて、大分逸れてしまったので話にを戻すが、エルマーのぼうけんには大人になって読んで改めて気付いた魅力がある。見開きの地図についても少し触れたが、この作品、挿絵が大変に可愛らしいのだ。
挿絵を描いているのは画家のルース・クリンスマン・ガネットで、名前で察する方もいるだろうが、エルマーのぼうけん著者のルース・スタイルス・ガネットの継母にあたる人物だ。
青と黄色の縞々という、なかなかに特徴的なりゅうのデザイン。子供の頃は特に意識していなかったが、この作品における絵の役割はとても大きいように思う。
昨年立川で『エルマーのぼうけん展』が開催されていたが、数々の制作資料とともに、約130点もの絵本原画が展示されており、やはりエルマーのぼうけんにおける挿絵の影響を感じるとともに、その世界観を余すところなく堪能できる展覧会となっていた。
と、既に終わったイベントの話をして大変恐縮ではあるのだが、オンラインで一部グッズの販売がまだ行われているため、気になる方は見てみてほしい。
そして行ってきました風な書きぶりをしている私も、開催期間を逃してオンラインストアに駆け込んだ側の人間であることも正直にここに記しておく。
また開催してくれないかな。
いつもより長めの話になったが、家族一丸となって作り上げられたエルマーのぼうけんは子供から大人まで楽しめる、後世にも受け継いでいきたい名作だ。
懐かしいと思った人も、読んだことないという人も、大人になった今こそ是非手に取ってみてほしい。