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【同じ動作でも全然違うオットセイ】

『オットセイ?
日本語が分からないオットセイ、、、』

通じない、です。

『日本語が通じないオットセイ、ですか、、、
そうですか。
そういう評価なんですね、、、』

ショックですよね?

『うーん、ショック?
どうかなぁ、、、
まぁ、そういうペットのような扱いであれば、それはそれでイイのかもしれませんね。
だって、何にも、しませんから、家では。
全部、妻がやってくれてます。
仕事で疲れて帰ってくる妻が、家事は殆どやってますので。
家では、ダラァーとして、リビングに転がってますからね、いつも』

転がってる?

『そうですよ
床が好きなんですよ。
夏はヒンヤリしてて、気持ちイイし、冬はね、ヒンヤリしてて、また、それも気持ちイイんです』

夏と冬で変わらない、と?

『違いますよ。全然、違う。
そうだなぁ、、、
ソフトボールと野球ぐらい違う。
ボールとバットを使うし、投げて打って守って走って。
動作とか流れは一緒ですけど、やると全然違うんですよ』

名前も違いますね。

『そう。一緒にしないでほしいんですね。
夏の床と冬の床は、意味合いが全然、違う』

何だか、やっぱり、、、

『でしょ。
オットセイ、なんですよ。
それで構わない。
自分、以前、大病をしてまして。
元々、身体が子供の頃から弱かったんです』

、、、その話は、聞いてませんでした。

『そりゃ、妻は言わないでしょ。
彼女には、ほんとうに辛い思いしか、させてません。
小さい子供を二人も抱えて、、、
実際に抱えてたんですよね。
病院に駆け込んできたんです。
私は昏睡状態だから、見てないんだけど、看護婦さん、看護師さん?
まぁ、どっちでもイイですね。
後で、聞いたんです。凄い形相で二人の子供を抱えて走ってきたんですって。
それ聞いて、申し訳なくて。
注意はしてたんですけど、、、
無理しちゃったんだなぁ、柄にもなく。
だから、もう、無理はしないし、家ではドテっと、転がってます』

そうなんですね。そういうコトで、、、

『多分、いや、絶対に、彼女はそれを外では言わない。家でも言わない。
私の病気のコト、治療のコト、復帰してまた倒れたコト、言わないんですよ。
弱みを見せられないのかもしれない。
話?
話は長いですよ。話し出すとメチャクチャです。
彼女の話は長くて、よく分からない。
でも、そんな彼女の話をずっと聞いてるのが、、、聞き流してるのが、幸せなんです。
たまに、聞いてるの?って言われて、返すと、アナタは何を聞いてたの?と叱られます。
トンチンカンな答えなんでしょうね。
だって、話はちゃんと聞いてないし、彼女の仕草や話し方を、ずっと、うっとり見てるだけ、ですから』

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